第14話 熊井栗鼠という女 弐
「あはは~、ちょっとふざけ過ぎたね~。そうそう、自己紹介だよ、自己紹介。とは言っても、私のターンで話すことはもう無いかな~。じゃあ~、
「えっ!? あたし!?」
「どうぞ~。」
突如順番が回ってきた水仙は、先ほどまでの威勢から一転して、困惑した様子だ。どうやら、『見てください』と言わんばかりの派手な外見をしておきながら、注目されるのは苦手らしい。
「えっと……
「ん~? 終わり~?」
「お、終わりっ! なにも話すことない!」
「いやいやァ、好きなものとかさ~?」
「そんなの、先生も言わなかったでしょ!」
「おや、たしかに。じゃあ、せっかくだし発表しちゃうか~。私の好きなものは、第一に『男』、第二に『酒』、第三に『生き物』さ。」
こんな
まぁ……それも、俺がこれまで
そんな当たり前のことに、実感をもって気づくことができた。それだけでもここに入った意味はあったと言えよう。
「へ、へぇー……! いちいち順番も決めてるあたり、理由を訊かれ待ちしてる感じするケド……。」
「お~、水仙くんにしてはご明察だね~。」
「ひと言余計っ!」
「そう、『男』は私にとって人生の生産性を上げるのに必要不可欠さ。『パートナー』と言ったほうが良いのかな? まぁ、私の対象が男性というだけの話だよ~。」
「『
「それは少し違うよ、
「……なるほど。本当に求めているのは後ろのほうですね?」
「い~や、それも私にとっては『生産性』を上げる一因に過ぎないよ~。つまり、私が最も重視し、求めているのは、『幸せ』と言っていいね~。この世界では、『幸せ』はほぼ『金』と同義、イコール『生産性』の高さなのさ~。」
「そう言って『人生』を因数分解していくと、なんとも味気ない感じがしますね。」
「ん~? たしかに、数式みたいにXやYで表してしまえば、そうなんだけどね~。そこには『代入可能』だろう? ……
「つまり、私の第二と第三の好物はそれさ。『酒』は私のストレスを緩和し、『生き物』は私を奮い立たせる。どちらも、私の『生産性』におけるモチベーションを高めるのに
「……『生き物』というのは、その『男』も
「あ~、私の言う『生き物』は、
なるほどな、と俺は黙って聞いていた。となると、彼女の第一から第三までのランキングは、彼女自身の『生産性』とやらを高める順なのだろう。
「少し長くなったね~。じゃあそろそろ、水仙くんの好きなものとその理由を聞こうじゃないか~!」
「はぁっ!?」
「とか驚いたふりしちゃって~。ずっと黙って
「う、うぅぅ……!」
盛大なフリから繰り出される彼女の『好きなもの』は一体なんなのだろうか。非常に……そう、ヒジョーーに聞きごたえのある回答をしてくれるに違いない。涙目の水仙を見ながら、俺は心の中でほくそ
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