王弟殿下の第一妃
「はぁ……本当お前は……自分が男だらけの中にいるって自覚してくれ」
「あら、心配してくれたの? 優しい弟だわ」
「ふざけんな」
「うにゅッ!」
頬を鷲づかみにされた。
「あの状況、普通の男だったら気付くぞ。今回はたまたま襲撃を受けたっていう衝撃のほうがでかすぎて、注意が逸れただけだ」
「で、でも、飛訓はたんに言い間違えただけだって……」
「そりゃ、皇帝と寵妃を重ねました、なんて素直に言う奴がいるか」
それもそうだ。
「……それで、どこまで
「ひっ、人を下世話な奴みたいに言うなよ! 気まぐれに見たら、お前が温泉にいたんだろうがっ。すぐに雲蘭に話しかけられて、お前と護衛兵が抱き合ってる一瞬しか見てねえよ」
「抱き合ってない」と認識を訂正させるが、
「それで、その矢を射た犯人の手がかりは見つけられなかったのか?」
「んー……射た者は男で相応に鍛えてるってのは分かったわよ」
「ハッ、王宮だけでも男はウン千人いるし禁軍なんか全員鍛えてるし、それは大層な手がかりだな」
確かに、今までの状況をひっくり返せるような手がかりではない。
「あっねえ、雲蘭ってのはあなたの后妃?」
「母親が選んで最初に入宮させた女だ。だが、それがどうしたよ」
「ちょうど良いわ。弟の后妃なら兄が挨拶するのも不自然じゃないでしょう」
たちまち
「兄上様を皇嗣宮に連れてってちょうだいな」
◆
「お前、雲蘭に挨拶したいわけじゃないだろう」
皇嗣宮の中を歩きながら、
「
雲蘭に挨拶をしたいと思ったのは嘘ではない。
(皇后宮で毒を盛ったとされる侍女……飛訓が気付いて追った時には行方をくらましていたってことだけど、もし後宮内じゃなくて皇嗣宮へ逃げていたら、いくら探しても見つかるはずがないのよね)
よく考えたら後宮は花美人としても見回ってきたが、皇嗣宮は手付かずだった。
「やっぱり、後宮ほどは広くないようだな」
「そりゃそうだ。結局仮の住まいだからな。皇帝になるか、王としてどこぞの地方へ出るまでだしな」
聞けば后妃も三人しかいないらしい。その中で、母親が選んだ最初の妃ともなれば、思い入れも強いだろう。
「なあ、兄上が戻ってきたら」
「だから、言葉には気を」つけろ、と言おうとした
「俺の後宮にでも入れてやろうか」
思わず息を呑んだ。
「だから、兄弟だって言ってるだろ」
腰を折って顔を近づけてくる
「どっかの国じゃ、王家の血を分散させないように兄妹で結婚するのも当たり前なんだとか。それに比べりゃ、半分のこっちのほうが健全だろ」
「馬鹿言うな。私は元いた場所に戻るだけだ。……私は亡霊だ……本来ここで生きていて良い存在ではない」
「どういう意味だ」
それは、と
「まあ、殿下。お戻りでしたのねぇ」
「あら、どなたかご一緒に? って、陛下!」
顔を上げるよう言い、立ち上がった彼女を見る。自分とは正反対だなと
「あなたが雲蘭だね。
隣から
「まあ、お恥ずかしい。陛下も耳にしていた噂と違い、ご壮健で何よりですわ」
「少し体調を崩しただけだよ。今じゃこの通り、地方への視察もできるくらいだ」
ふふ、と雲蘭は袖で口元を隠して淑やかに笑った。
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30日の17:10から新連載を開始します。
初日は三話更新します。
中華風ファンタジーものです。が! まったくこちらと毛色が違います。
子牛と子兎がヒロインです。
【異世界後宮のお料理番~神の力を授かったので飯テロ生活はじめます~】
後宮なのに!こんなに!何もおこらなくて!いいの!?
皇帝の奥さん達が愛をめぐって競い合う場所だって思ってたのに…私めちゃくちゃ快適なのだが??
後宮の真ん中でスローライフはじまった。
自分とこの敷地に畑つくるし
もっふもふの神様達に膝の上占領されるし
上げ膳据え膳、趣味までやりたい放題、神様の力もつかえるし、侍女まで仕えてくれるし
え??私が国を救う巫女???
え〜そんなことある〜?
ないって。とりあえず、作ったフランチマントウ食べよ。ね、鬼の長官殿?
後宮で最高極上のスローライフ!
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