幻想学園 ~無人島デスゲーム編~ 

ロザリア・グリム

第1話 プロローグ~1日目

プロローグ

寝ていた私の耳に聞き慣れた曲が聞こえてくる。

そう朝のモーニングコールだ。

私はまだ眠くだるい体をなんとか起こしモーニングコールを止める。

そして私は洗面台へ顔を洗いに向かう。

私の名前は"天笠光"、私立幻想学園に通う高校三年生だ。

私は今とある無人島に来ている、と言うのも私が通う幻想学園では毎年1・2・3年による総合合宿訓練があり今年は無人島が合宿場所に選ばれたのだ(ちなみに去年は山奥だった)。

普通の高校ならばこんなことは行わないだろうが私達の高校は違う。

私達の通う高校が変わっているというより…この世界が変わっているのだ。

なぜならこの世界には・・・普通に生活していたら身につかないような特殊な才能や超常的な力を持った能力者が存在するからだ。

そして、私達が通う私立幻想学園はそんな特殊な才能や能力を持った人間が集まる高校だ、だから普通とは全く違い授業にも能力を伸ばすための特別な授業がある。この総合合宿訓練もその一つだ…

しかし訓練といっても名前だけで用は1・2・3年で毎年行う修学旅行といった感じだ。

だから勿論能力を伸ばす訓練をするが、それは1週間ある期間の内の2〜3日程で後はほとんどバカンスであり、昨日も同じ寮のメンバーで馬鹿騒ぎしたばかりだ。

この総合合宿訓練では今回はクラスで班を決めそれぞれ違う島に行っている。

島には宿があり普段は観光客が使用しているが、この時期は私たちが泊まる寮となる。

3年は3年だけ1・2年は合同の寮を使う。寮には教師数人と寮の職員がいて、教師は生徒が行き過ぎた行動をしないかを見張っている。

と言うのも中には銃や刀を持っていたり、炎を操る能力などを持っている奴がいる。もしそんな奴らが喧嘩なんか起こせば・・・最悪死人が出るからだ。

(ちなみに校内など限られた場所では銃などの武器の所持や仕様が許可されている。

どうやら国から許可が降りているらしい…)

事実私の鞄の中にもナイフやら銃やら危険なものも普通に入っている。

これも私の持っている才能ゆえに持ってきたものだ。

私の才能についてはまたおいおい説明することにしよう。

とにかく私達は今バカンスの真っ最中だ。きっと今日も明日も楽しく最高の思い出になるだろう。誰もがそう思っていた…いや…そうなるはずだった。

だけどこれが…こんな悪夢になるなんて誰も考えてなどいなかった……

光「ふあぁ〜〜」

光は洗面台の鏡の前で大きく欠伸をする。

光「昨日は夜中まで遊び過ぎたわね…全く…あいつらいい歳してはしゃぎすぎなのよ…」

といいながらもそんな光もはしゃいでいたうちの一人だった。

光「はぁ…まだ眠いけど早く支度しなきゃ、今日も遊び回るでしょうし…」

そんな一人言を言いながら顔を洗い着替えをし、髪をセットする。

光「まあ…こんなもんでいいかしらね」

光はそう言って髪のセットを終え部屋を出て朝食を取るために食堂へと向かう。

食堂は光の部屋から出て廊下の突き当たりを左でエントランスの隣にある。

光が廊下に出るとすぐに小柄で金髪のロングヘアーでおさげをした少女と黒髪のボサボサ頭の少し背の高い青年に会う。

「よう光!おはようだぜ!」

「おはよう!光!」

光「真鈴、リオンおはよう…」

彼女達は私と同じ二班の"時雨真鈴"と"黒鐘リオン"だ。

天笠光(あまがさ ひかり)

どんな武器でも扱える才能を持っている。

黒髪のセミロングで赤いリボンがトレードマーク。

幼いころ両親を事故で無くしており親戚に育ててもらった過去をもつ。

天真爛漫な性格の持ち主。

黒鐘リオン(くろがね りおん)

幻想学園一の馬鹿という可能性があるくらい頭が悪い…が感などはとても良い、考えるより先に体が動くタイプ。

性格は明るくまた運動能力は学園一でもある(なお金づちなので全く泳げない)。

またヒーローに憧れていて自分の事は主人公と呼ぶなど変わり者だが皆から好かれている。

漫画やゲームなどが好きであり銃マニアでもある。

真鈴とは幼なじみ。

能力は自分の身体能力を上昇させることができる(本人はこの能力をエンチャントと呼んでいる)。

リオンは凛音と漢字で書くらしいがカタカナの方がかっこいいという理由で自分の名前をよくカタカナで書いている。

時雨真鈴(しぐれ まりん)

リオンの幼なじみ。

リオンの面倒を見ておりよく勉強などを教えている。

銃を扱う才能がある。

普段は男勝りの性格をしているが昔読んだ漫画のキャラクターの真似をしている。が焦ったり慌てたりすると素が出てきてしまう。

また髪は黒髪だったが金髪に染め、語尾に“ぜ”をつけているのもその漫画に出てくるキャラクターの影響である。

リオン「おいおいどうしたんだよ光!元気ないぜ!」

光「あんたは朝から元気がありすぎなのよ」

リオン「朝は元気が一番だからな!はっ!はっ!はっ!」

リオンが元気いっぱいに笑って見せる。

光「はぁ…朝からやかましいわね…」

真鈴「まあまあ…それよりお前だけかぜ?グレイはどうしたんだ?」

光「まだ会ってないわ、まあもう起きて先に食堂にでもいるんじゃない?」

真鈴「確かに、グレイの奴相当早起きだからな」

グレイは光の彼氏だ、彼とは高校で出会いその後直ぐに告白され恋愛関係になっている。

光「そうね、だから私達も早く食堂に行きましょ」

リオン「そうだな!俺も腹が減ったし早く行こうぜ!」

光達は食堂へと向かう。

食堂に着くと数人の教師と見慣れたほとんどの寮のメンバーがそこにいた。

一番はじめに空色の髪をしたリオンより背格好が少し高い清楚な感じの青年がこちらに気づいた。

「あっ光、それに真鈴くん、リオンくん、おはよう」

リオン「おはよう!」

真鈴「おはようだぜ!」

光「おはよう、グレイ」

彼がグレイ・フリージア同じ寮の一班のメンバーの一人だ。

グレイ・フリージア

冷気を操る能力を持つ。

光の彼氏であり、彼女には一目惚れだったらしい。

ロシアから子供の時親の都合で日本に住むようになった。

フリージア家は海外でも有名な資産家でグレイはいわゆる坊ちゃんだ。しかし嫌な奴ではなく、むしろとても礼儀正しく愛想もよく顔もよいので、学園では人気者で氷の貴公子と呼ばれている。

「あっ!光さん達!遅いですよ〜」

続いて茶髪のロングヘアーで眼鏡をかけた赤い目をした少女が気付き声をかけてくる。

彼女は私達と同じ二班の福井穂乃果だ。

福井 穂乃果(ふくい ほのか)

赤ん坊の時に捨てられそこを福井清凪(ふくい せな)に拾われ、実の子供の様に育ててもらった。

清凪は医者であり、穂乃果は清凪の事を病院では師匠と呼んでいる。

医者の才能がありいつかは清凪の様な立派な医者を目指している。

因みにメガネは伊達メガネである(本人曰くかっこいいかららしい・・・)。

穂乃果「光さん達が遅いので先に食べ始めちゃうところでしたよ!」

リオン「わりぃわりぃ」

穂乃果「もう!」

「まあまあそう怒んないでよ、穂乃果」

「そうよ、それに今日始まったことじゃないでしょ」

穂乃果を鎮めるように二人の少女、片方は真鈴より更に背が低い一見小学生にも見える金髪の可愛らしい少女と紫のロングヘアーで光と同様頭にリボンをつけた少女が声をかける。

彼女達は同じ二班の"天咲霊華"と"エレン・ホワード"だ。

天咲霊華(あまさき れいか)

電気を操る能力を持つ。

気の強い女性で天咲神社の巫女をしている。

エレンとは小学生の時からの親友。

エレン・ホワード

アメリカから子供の時親の都合で日本に住むようになる。

小学生で虐められていた時に霊華に助けてもらいそれから親友になった。

超能力が使える。

また猫が大好きで家にソロモンという猫を飼っている。

霊華「昨日の夜あんだけ馬鹿騒ぎしたんだもの、早く起きれる訳ないわ」

穂乃果「むぅ…確かにそうですけど…」

霊華「それにあんただってさっき起きたばっかでしょ?」

どうやら穂乃果も人のことは言えないようだ。

穂乃果「そっそれは…え〜っと…」

光「あんたも人のこと言えないじゃない!」

穂乃果「とっともかく早く朝食をとりましょう!冷めちゃいますよ!」

穂乃果が話をそらす。

光「まあそうね、早く食べましょ」(話を逸らした…)

リオン「そうだな!俺もう腹ペコだぜ〜」

そうして光達が朝食の準備を終えると。

「私達もご一緒させてもらってもいいですか?」

そう言って二人の女性と一人の男性が来る。

一人はグレーの長髪のストレートで背の高いモデルのような体型と顔立ちで穂乃果と同じく赤い目をした少女と黒のショートヘアで耳に桜の絵が描かれた特徴的な耳飾りを付けた少女、長身の黒髪でカジュアルな服をびしっと着こなし、何よりも細い目が特徴的ないかにも真面目そうな青年だ。

光「ロザリア、美春、それに修斗、勿論構わないわよ」

長身の少女が"ロザリア・スカーレット"ショートヘアの少女が"夢咲美春"いかにも真面目そうな青年が"封獣修斗"だ。

ロザリアと美春は一班、修斗は二班のメンバーだ。

ロザリア・スカーレット

スカーレット家の長女であり、幻想学園の生徒会長であるレオドール・スカーレットの妹の一人、と言っても実は本当の妹ではなくレオの父とロザリアの母が結婚した時に義兄妹になった。

初めは馴染めなかったがレオ達がすぐに受け入れたのもあり今では本当の妹のように接してもらえている。

魔法を使用でき、また右手の中指に着けている母の形見の指輪は魔力を増強させるマジックアイテムである。

夢咲美春(ゆめさき みはる)

ロザリアの親友であり光達とは昔からの友人。

刀を扱う才能を持つ。

美春の父と母は病気で亡くなっていて親戚である千歳未散(ちとせ みちる)に育てられる。

夢咲妖華(ゆめさき ようか)という名の姉がおり剣の天才であったが、美春が幼いころ彼女を車から庇い亡くなった…が妹である美春がピンチになった時に美春に憑依し守ってくれる。

封獣修斗(ほうじゅう しゅうと)

子供の時親に捨てられて露頭に迷っていた所をスカーレット家の次女アリシア・スカーレットが発見し保護された。

その後はレオ達と育ったがアリシアの「私のことはお嬢様と呼びなさい」と言う一言でレオ達の従者のような存在になってしまったが修斗は特に気にしておらずむしろ光栄に思っている。

常に礼儀正しく、冷静沈着で判断力に長けている。

能力は刀などの武器に炎や雷などを纏わせる能力を持つ。

リオンは修斗の初めての友達であり今では親友である。

美春「ご一緒させてもらいますね」

修斗「失礼します」

そう言ってロザリア達が席につくと…

「おっ!みんな集まってんじゃん!俺たちも混ぜてくれよ〜」

「おっおい…田中…」

二人の組の一人は田中と呼ばれたオタクのような見た目をした青年とそれに連れられた気の弱そうなそこそこ良い顔をした青年が来る。

光「はぁ…なんであんた達も混ぜなきゃ行けないのよ…」

彼らは一班の田中と佐藤だ。

田中明王(たなか あきお) 

ハッキングなどの才能がありオタク。

彼の知らないアニメや漫画、ゲームはない。

学園のお調子者。

佐藤栄樹(さとう はるき)

どんな特技でも真似ができるという才能があり、田中の友人。

性格は真面目でいつも田中に振り回されている。

田中「おいおい俺たちだけハブくのはひでーだろ!同じ寮の仲間なんだしよ~」

光「女の子と一緒にご飯を食べたいって言う邪な考えが見え見えだわ」

田中「そっそんなことないぜ〜ただ俺たちはみんなと楽しく食事を取りたいだけだぜ!なっ!佐藤?そうだよな?」

田中の目が泳ぎ彼は急に佐藤に話を振る。

佐藤「えっ!?…あっ…え〜と」

田中「やっぱりお前もそうだよな!」

佐藤「ええ!?」

田中は佐藤を強引に仲間だということにした。

真鈴「まだ何にも答えてなかったんだぜ…」

ロザリア「まあまあ、皆さんで一緒に食べた方が楽しいですし、一緒に食べましょうよ」

田中「やっぱりそうだよな!くぅ〜!やっぱりロザリアちゃんはやさしぃ〜!」

田中が調子よくそう言った。

光「はぁ…全く…しょうがないわね」

田中「じゃっ失礼しますっと」

佐藤「しっ失礼します…」

田中と佐藤も席につく。

光「結局全員で一緒に食べるのね…」

真鈴「いや…一人足りなくないかぜ?」

穂乃果「そう言えば会長がいませんね」

穂乃果の言う会長こそ幻想学園の生徒会長"レオドール・スカーレット"のことだ

グレイ「確かにレオくんがいないね」

ロザリア「あっ!お兄様なら早く起きて外で素振りをしているから皆さんが集まったら声をかけてくれって言ってましたよ」

光「あらそうだったの、じゃあ…霊華、レオを呼びに行ってあげて」

霊華「えっ!?なっなんで私が!?」

霊華は明らかに動揺した。

なぜ霊華が動揺するのか…実は霊華はレオに恋をしているのだ。

光はそれを知っている。光はよく霊華の恋の相談に乗っていたからだ。というか実はこの場にいる誰もが大体知っているのだ。

そして霊華は知らないがレオも実は霊華に恋をしている、つまり両思いだ、だけど光はそれを霊華には伝えないようにしている。

人への想いと言うのは誰かから聞いて知るより自分で確かめる方が良い、それが光なりの考えだった。

光「別にいいでしょ、誰が呼びに行ったって」

光は霊華とレオを二人きりにするべく、霊華に行かせようとする。

霊華「だっ誰でもいいんだったら別にあんただっていいでしょ!」

霊華がごもっともな反論をするが…

光「私はほら…えっと…眠いし動きたくないし」

霊華「はあ!?なにそれ!?じゃっじゃあ真鈴は…」

真鈴「私は椅子に一回座ったら動けないんだぜ」

霊華「なっなんなのよそれ!?じゃあ…」

霊華がエレンの方を向くと

エレン「あっ私も超能力の誤作動で椅子とくっついちゃった、これは朝食を取らないと動けないな〜」

霊華「ええ!?」

全員が無理矢理な理由をつけて断る。

リオン「なんだなんだ〜みんな行きたくねぇのかしょうがねぇなぁ〜俺が…もが!?」

しかし唯一鈍感すぎて気づいていないリオンが口を滑らせてしまいそうになったところで隣にいた修斗が口を塞ぐ。

修斗「貴方は黙っててください!」

リオン「ん〜!ん〜!」

光(危ない!馬鹿が口を滑らせるところだった…!ナイス!修斗!)

光は心の中で修斗にグッドサインを送る。

光「ほら霊華あんたしか行けないのよ、早く行ってきなさい、早くしないとレオだけ仲間外れになっちゃうわよ~」

光が意地悪そうに言う。

霊華「うう〜!分かった行けばいいんでしょ!行けば!!ふん!!!」

霊華は怒りながらレオを呼びに行った。

光「よし!うまく行ったわね、もういいわよ修斗」

修斗「分かりました」

リオン「ぷはぁ!おい!なにすんだよ修斗!」

修斗「それはこちらのセリフです、貴方分からないのですか?」

リオン「なにが?」

修斗「はぁ…馬鹿がここまで行くと重症ですね…」

リオン「んだとテメェ!やんのか!?」

リオンが修斗に飛び掛かろうとする。

穂乃果「ちょっと!喧嘩はダメですよ!」

真鈴「そうだぜリオン、とりあえずお前は今は黙っとくんだぜ」

二人がリオンを止める。

リオン「ええ!なんだよそれ…意味わかんねぇ…」

リオンが不服そうに席に戻った。

エレン「これで少しぐらい距離が近づくといいんだけど…」

光「まあ…あいつ次第ね」

…………

霊華が外に出ると少し離れた場所で刀を振って素振りをしている高身長の金髪の男性を見つける。

彼がレオだ。

レオドール・スカーレット 

幻想学園の生徒会長 。

高身長容姿端麗スタイル抜群、スポーツ万能・頭脳明晰と言う絵に描いたようなイケメンであり、学園中の女性にモテている。また責任感が強くまた困っている人を見ると放って置けないなど、性格も何もかも完璧な男である。

唯一の欠点と言えば…私服が死ぬほどダサいことである。

スカーレット家の長男であり、ロザリアを含む3人の妹がいてレオは妹達をとても大切にしている。

ロザリアの他にアリシアとフレアと言う二人の妹がいる。

レオとアリシア・フレアの母親はフレアを産んだ後病に倒れ亡くなった。

その後レオの父はロザリアの母と再婚するが2組の子供を狙う人攫いに殺害されてしまう。

その後は父の親友でもありFBIの元会長であるリアンという人物に保護され、日本に移住する。

重力を操る能力を持ち、刀は二刀流で扱う。

またレオ達兄妹には誰にも話せない秘密がありそれは限られた人間しか知らない。

金髪で瞳はロザリアと同じ赤色。

天咲霊華に恋をしているがその思いは伝えられないままでいる。

霊華「れっ…レオ」

霊華がもじもじとしながら声をかける。

レオ「ん?霊華?どうしたんだ?」

霊華「あっえっえっと…」

霊華はついレオを意識してしまい顔が真っ赤になってどもってしまう。

レオ「もしかして呼びにきてくれたのか?」

レオの方が目的を察してくれる。

霊華「えっあっ…うっうん!そうよ!」

レオ「そうか、わざわざすまないなすぐに行くからみんなに伝えといてくれ」

霊華「わっ分かったわ」

そう言うと霊華はすぐにその場を去っていってしまった。

…………

少しして霊華が戻ってくる。

光「どうだった?」

光がニヤニヤしながら霊華にそう聞いた。

霊華「べっ別にどうってことないわよ!すぐに来るから待っててくれって言ってたわ」

光「そう…」

エレン(あちゃ〜あれじゃ多分進展ないな〜)

光(まあ…そううまくいかないわよね…まあ大丈夫まだ手はあるわ)

少し経ってレオが来る。

レオ「すまない、待たせたな、それじゃあ朝食にしよう」

光「そうねそれじゃあ」

「いただきます」

光達はたわいのない会話をしながら朝食を済ました。

その後皆で今日の計画を話す。

今日は総合合宿が始まって6日目つまり遊べる最終日だ、各自でしたいことをする。

レオ「それじゃあ、俺とロザリア、それと美春にエレンと霊華、田中と佐藤が海で遊ぶ、他のものが森の探索でいいんだな?」

光「ええ、それでいいわ」

リオン「楽しみだな〜森の探索!熊とか出てくるかな?」

この無人島は中心に向かって巨大な森が形成されているのだ、森には様々な動植物が存在している。

修斗「出てくるわけがないでしょう…この無人島に熊なんていませんよ」

リオン「ええ〜!いねぇのかよ!」

真鈴「いたらどうするつもりだったんだぜ?」

リオン「倒して熊鍋にする!」

皆「ええ…」

グレイ「さっ流石にそれは無理だよリオンくん、そもそも許可なく動物は狩っちゃだめだし…」

リオン「そうなのか?ちぇっ!残念だな〜」

真鈴(よかった…)

真鈴は内心ホッとする。

レオ「それじゃあ各自細心の注意を払って楽しむように!解散!」

こうして各自で目的な場所に向かう。

レオ達はすぐ近くの海、光達は島の中心へと続く森へ向かった。そして…

光「頼んだわよ…エレン」

エレン「もちろん…任せて!」

ここからの計画はエレンが進めていくようだった・・・

…………

光達は森を探索していた。

森にはさまざまな木々や植物が生えていた、中には見たことのないようなものも混じっている。

光「なんか変わった植物ばっかり生えてるわね…」

修斗「確かにそうですね…いくつか図鑑に載っていないようなものもありますね…」

グレイ「新種ということかい?」

修斗「いえ…ただ図鑑にも載らないような貴重な種であるとは思います」

真鈴「な〜んだ新種だったら一儲けできると思ったんだけどな〜」

真鈴が残念そうにする。

光「あんた…そんなこと考えてたのね…全く…」

光はあきれたといった様子だ。

修斗「やめた方がいいですよ、真鈴さん、ここは無人島ですが土地は国が管理しています。ほとんどの植物の採取、持ち運びは禁止されています、食事目的は例外ですがそれも担当教師の許可が必要です」

光「来る前に説明受けたでしょ…」

真鈴「そうだったかぜ?」

真鈴はどうやら説明をちゃんと聞いてはいなかったようだ。

光「全く…どこの馬鹿に似たのやら…」

一方その頃その"馬鹿"は。

リオン「おーい!!なんかいるなら出てこーい!!」

大声でさき程から虚空に叫び続けていた、勿論だがなにも出てくるはずがない。

そんな様子を見かねた修斗がリオンに声をかける。

修斗「リオンさん…いくらやってもなにも出てきませんよ…」

リオン「まだわかんねぇだろ!」

修斗「もしなにか動物がいたとしても貴方の声に驚いて逃げでしまいますよ…何故そんなことも分からないのですか?というかそもそも貴方警察を目指しているんですよね?」

リオン「そうだけど?」

修斗「ならもし事件の犯人を探している時もそうするつもりなのですか?もしそんなことをすれば直ぐに犯人に逃げられてしまいますよ」

リオン「確かに犯人に気づかれて逃げられちまうな!」

修斗「それと同じですよ…全く…」

修斗は呆れ果てたようにそう言った。

修斗「真鈴さんも大変ですね…」

リオン「なんで真鈴が大変なんだ?」

修斗「貴方のような馬鹿に勉強を教えないと行けないからですよ」

リオン「真鈴は大変なんて言ってねえぞ!」

修斗「貴方に気を遣っているからですよ」

リオン「えっ?そうなのか?」

リオンが真鈴に聞くと。

真鈴「えっ!?いやっ!べっべつに…大変ってわけじゃないんだぜ!むっむしろそれぐらいの方が教えがいがあるっていうか…」

真鈴は明らかに動揺しながら答えるがリオンはそれに全く気づかない。

リオン「ほらな!」

修斗(どう見ても気を遣っているんですが…馬鹿だとここまでわからないんですね)

修斗「はぁ…つくづく苦労が思い知らされます、ここまで馬鹿だと気付くことも気づけませんね」

リオン「んだと!」

真鈴「あー!あー!もうこの話は終わり!ほら!リオン!あっちになんかいたんだぜ!もしかしたら熊かもしれんないんだぜ!」

真鈴がリオンと修斗の間に割って入り強引に話を終わらせる。

リオン「まじ!?よっしゃあ!とっ捕まえて熊鍋にしてやるぜ!行くぞ!真鈴!」

リオンはそう言って真鈴が指さした方向に走って行ってしまう。

真鈴「ちょっ!リオン!待つんだぜ!」

真鈴は慌ててリオンの後を追いかける。

グレイ「ちょっと待って!離れると迷うかもしれないよ!と言うかさっきも話したけどこの島に熊はいないよ!真鈴くん!リオンくん!」

穂乃果「ちょっちょっと!皆さん待ってください〜!」

グレイと穂乃果も急いでリオンと真鈴を追う。

修斗「いつになったら彼、真鈴さんの気持ちに気づくんですかね…」

実は…真鈴はリオンのことが好きなのだ。

修斗にとってリオンは親友であり真鈴も友人であるため、できればリオンには真鈴の気持ちに気づいて幸せになって欲しいのだが全くもってうまく行きそうにはなかった。

光「さあ?あいつが刑事にでもなってもう少し感が良くなったらじゃない?」

修斗「彼が刑事になるって…後何年かかるんでしょうか…私はああじゃなくてよかったです」

光「そう?あんたもおんなじだと思うけど」

修斗「は?私が彼と同じ?どう言う意味ですか?」

修斗は光の言ったことの意味が分からず不服そうにする。

光「自分で考えなさい、あんたはあいつと違って頭がいいんでしょ?ほらさっさと行かないとあいつら見失っちゃうわよ」

修斗「待ってください!光さん!」

修斗は光にさっきの言葉の意味を聞こうとするが光は修斗の声を無視して行ってしまう。

修斗(どう言う意味なのでしょうか…私が彼と同じ?そんなバカな…)

修斗の中には大きな疑問が残ったが、このままでは置いていかれてしまうので一旦その疑問は忘れ光達を追いかけて行く…

遠くにリオンがさっきとまるで同じことをまたしているのが修斗の目にはよく見えた……

その頃一方海に行ったレオ達はと言うと……

水着に着替えた後浜辺でレオは多くの女子に囲まれていた。

彼女達は皆レオに好意を寄せている者達だ。

皆レオに注目されたい一心でレオの元に集まり少しでも一緒にいようとする。

無人島に来てから大体の女子はこの調子だ。

「水着姿の会長も素敵ー!!」

「会長今から泳ぐんですか?私もご一緒してよろしいですか?」

「ちょっとなに抜け駆けしようとしてるの!会長と泳ぐのわ私よ!」

「なに言ってるの!私に決まってるでしょ!」

「なに〜!!」

集まった女子同士でいがみ合いが始まりそうになるが。

レオ「おっおい!みんな!落ち着いてくれ!」

レオがそれを止める、大体はレオの鶴の一声で女子達は大人しくなる。

美春「相変わらずすごいですね…」

ロザリア「あはは…お兄様は学園内で大人気ですから」

美春達は少し離れた場所でその様子を見ていた。

美春は黒と白のボーダー柄のクロスデザインの水着を着ている、これは少しでも自分の胸を大きく見せるためにこの水着にしたのだがあまり変わっていない。

ロザリアは白のワンピースタイプの水着を着ている、ロザリアは見られるのが恥ずかしいので肌の露出が少ないこの水着にしたが、どちらにせよスタイルが良すぎたので男子たちに注目された。

エレンはフリルデザインの可愛らしい水着を着ていて側から見れば小学生ほどの少女にしか見えない。

霊華は紫のリボンデザインの水着を着ているこれは光と水着を買いに行って買ったものだ。光は露出の激しいビキニをスタイルもいいしレオに気に入られると言って霊華買わせようとしたが、霊華は猛反対し結局それほど露出も多くないこの水着にした。

レオはハーフスパッツタイプの体にフィットする泳ぎやすい水着を着ている。

田中と佐藤はルーズタイプの普通の海パンを着ていた。

田中「クッソー!羨ましい!なんでだ!なんで会長は学校中の女子達に囲まれて俺は囲まれないんだ!会長と俺はなにが違うって言うんだーー!!」

田中が悔しそうにギャーギャー喚く。

田中「教えてくれ!一体なにが違うんだ!!」

田中は美春にそう質問した。

美春「全部…ですかね?」

美春が遠慮なく事実を言う。

田中「うひゃー!美春ちゃんきびしぃー!でもそう言う美春ちゃんもいいね〜かわいいよ〜」

美春「ロザリア、口を縫い合わせる魔法ってありますか?」

美春は冷ややかな視線を田中に向けながら言う。

田中「ちょ!じょっ冗談!冗談だよ!おい佐藤俺達は向こうで泳いでようぜ!」

佐藤「えっ!?あっ!?ちょっと!?」

田中は佐藤を連れて退散する。

エレン(ああ…困ったな…こんな状況じゃあ)

霊華「ふんっ」

霊華はレオの様子を見てそっぽを向いてしまう。

エレン(だよねー、こうなるよねー、しょうがないここは!)

エレンは超能力を使いレオの脳に直接話しかける、いわばテレパシーだ。

エレン(会長!みんな待ってるよ!)

レオ(えっエレン!?そうか…すまないすぐに行く!)

レオ「すっすまないみんな、今日は班のみんなと海で遊ぶと決めているんだ!だから皆の気持ちはありがたいが、今回は応えられそうにない!すまない!」

「えー!!」

女子達は少し不満そうにするが…

「会長の邪魔をするわけにも行かないしなー…」

「仕方ないよね…」

「でももしかしたら近くで遊んでれば来てくれるかも!」

「確かに!」「それだ!」

すぐにまた盛り上がり始めてしまった。

レオ「えっえっと…」

レオ(取り敢えず行くか…)

レオは勝手にまた盛り上がり始めている女子達から離れ美春達と合流する。

レオ「すまない遅れてしまって」

美春「大丈夫ですよ、もう慣れてますから」

霊華「相変わらずいい後身分ね」

霊華は機嫌が悪そうだ。

レオ「ははっ…」

レオが苦笑いをする。

エレン(取り敢えずなんとかなった…かな?まあいいや作戦はこっからなんだから!)

エレンは昨日練った作戦を実行に移すことにする。

ロザリア「それでなにをして遊びましょうか?」

美春「泳ぐのもいいけど他のこともしたいですね…何かありますか?」

レオ「釣りや魚の銛突きなんかもできるぞ、なんならサーフィンもできるが…」

エレン(よし!ここで私が!)

エレン「あー!なら私銛突きがしたいなー!一回テレビで見てやってみたかったんだよねー!」

美春「あっそれなら私も見たことがあります!確か魚を獲ったら"獲れましたー"て叫ぶやつですよね、一回やってみたかったんです!」

ロザリア「あっ!いいですね私も一回やってみたいです!」

ロザリアと美春が賛同する

レオ「ほう?そんなものがあるのか?」

美春「テレビで見たことがないんですか?確かよいこって言う芸人の浜崎て人がやってるですが」

レオ「すまん…そう言うのには疎くてな」

美春「ならレオもやってみましょう!絶対楽しいですから!」

美春がレオに推し進める。

レオ「そっそうか?俺はべつに構わないが…霊華は?」

霊華「べつにいいけど…」

レオ「よし…ん?ところで田中と佐藤はどこに行ったんだ?」

美春「ああ、あいつらなら…」

美春が田中と佐藤が泳ぎに行ったところを見ると…

田中「ギャーー!!タコが!!なんも見えない!!いだ!噛むな!!」

田中がタコに襲われていた。

美春「・・・なんでタコに・・・」

佐藤「田中!待ってて」

佐藤がタコを引き離そうと引っ張るが田中の頭にへばりついて取れそうにない。

田中「ちょっ!!いだだだだ!!佐藤!もうちょっと優しく!!」

佐藤「そんなこと言われたって!?」

レオ「・・・助けた方がいいのだろうか?」

美春「なんだか楽しそうですし…放っといていいんじゃないですか?」

ロザリア「流石に可哀想ですよ、私が助けてきます」

ここでもロザリアの優しさが光った

ロザリアが田中達に駆け寄り。

ロザリア「タコさん、その人は貴方に酷いことをしようとはしてません、だから離してあげてくれませんか?」

ロザリアがタコに優しく話しかけるとタコは田中を襲うのをやめたが…

ロザリア「いい子ですね…て…わっ!ちょっと!」

タコはロザリアにくっついてしまいしかも触手を水着の中に入り込ませて行く

ロザリア「やっ!だっだめ!イタズラしちゃ!」

佐藤「わわっ!ちょっと待ってて今助けるから!」

佐藤がタコを引き剥がそうとするが田中の時よりも強い力でくっついていて剥がれそうにない。

佐藤「なんでこのタコさっきより力が強いんだ!?」

ロザリア「やっ///あっ///だめぇ///入ってきちゃぁ///んん///」

タコは触手をさらに入り込ませて行き水着がはだけそうになってしまう。

佐藤「田中!!手伝って!!…田中?」

田中「いや…このままにしよう」キリ!

佐藤「なに言ってるんだよ!!」

田中「このままでいいそれがきっと一番の正解なんだ!俺は誓って下心なんてない!!」

佐藤「丸出しだよ!!」

ロザリア「あっ///やっ///そこは///」

タコがさらに触手を伸ばそうとした瞬間タコはこの世のものとは思えない凄まじい殺気を感じた…そこには。

美春「お前…タコの分際でロザリアになにしてるですか?3枚に下ろされたくなかったらさっさとロザリアから離れて海に帰ってください」

尋常じゃないくらいの殺気を放った美春がいた。

それを見たタコは命の危険を察したのかすぐにロザリアから離れ海に帰って行った。

佐藤「大丈夫かい?」

ロザリア「あっはい大丈夫です、あはは…イタズラが好きな子だったみたいで」

ロザリアはそう言いながら乱れた水着を整える。

美春「全く!イタズラが好きにも限度があります!タコの分際でロザリアのあんなところを触るなんて!許せないです!!」

(羨ましいです!!私だって触ったこともないのにそれなのにあいつは…!!!ずるい!!ずるいです!!)

美春「私だって触ってみたいです!」

欲望がつい美春の口から溢れてしまう。

ロザリア「えっ?」

美春「あっいや…今のは…」

ロザリア「///」

ロザリアは顔が真っ赤になってしまう。

美春「あっえっと…田中!!ちょっと話があるから来てください!!」

田中「えっ!?俺!?」

美春「あなたさっきロザリアがタコに襲われた時助けなかったですよね?それについてきっちり話し合いましょう」

美春が恐ろしい笑みを浮かべながら言う。

田中「ひぃ!佐藤!助けて!」

田中は佐藤に助けを求めるが…

佐藤「ごめん田中、それは無理」

あっさりと切り捨てられた。

田中「そんなー!!!」

美春「さあ行きますよ」

田中「嫌だーーー!!!!!」

田中は絶叫しながら美春に引きずられて行く。

遠目で見ていたレオ達は。

レオ「………………えっと…俺達だけで準備するか…」

エレン「そうだね…」

霊華「そうしましょ…」

彼らは放って置いて3人で準備をすることにした。

レオ達は銛やシュノーケルなどの必要なものを準備する。

レオ「さて…道具は揃えたが…みんな居るか?」

レオは全員が集まっていることを確認する。

田中は酷く怯えた顔をしていたがレオは気にしないことにした。

レオ「よし、それで…この中でやり方を知っている奴はいるか?俺は3日前にやったからなんとなく分かるが…」

霊華「私は知らないわ」

エレン「う〜ん…私もあんまり…」

ロザリア「私もです…見たことはあるんですが…」

美春「私もです」

どうやら彼女たちはほとんど経験はないようだ。

レオ「そうか…お前達はどうだ?」

レオが佐藤達に聞く。

佐藤「僕は一応分かるよ、前手本を見せてもらったし、田中は…」

田中「知らない…何も…知らない…ぶつぶつ…」

佐藤「えっと…多分分からないと思う」

レオ「そっ…そうか…」(一体何をされたんだ?)

霊華「で?ほとんどやり方を知らないみたいだけどどうするの?」

レオ「そうだな…」

レオが考えていると…

エレン「二組に分かれるのはどう?」

エレンが案を出す。

レオ「二組にか?」

エレン「うん!経験者の会長と佐藤の二人に分かれて、それぞれグループを作れば教えてもらえるしちょうどいいと思うんだよね。」

ロザリア「それいいですね!」

レオ「ふむ…悪くはないが…教えられる程俺は上手くないぞ」

エレン「それはまあ…みんな初心者だから楽しめればいいよ!」

佐藤「そうだね、楽しい思い出が作れればそれでいいかもね」

美春「そうですね!」

皆が賛成する。

レオ「そうか…霊華もそれでいいか?」

霊華「別に…いいけど…」

レオ「ならそれで決まりだな!それでグループのメンバーなんだが…」

ロザリア「私は佐藤さんに教えてもらおうと思います」

ロザリアはレオがいい終わる前に言う。

レオ「そっそうか…他のみんなは…」

美春「私はロザリアと一緒のところにいきます」

美春がまたもレオがいい終わる前に決める。

そしてロザリアの近くに行く前にそっと田中に向かって…

美春「分かっていますよね?」

そっと耳打ちする。

田中「はい!俺も佐藤に教えてもらいます!いえ!頂きます!」

田中が早口でそう言う。

美春「よし」

エレン「じゃあ私は会長に教えてもらお〜と、霊華もそれでいいよね?」

霊華「えっ!ちょっ!なっなんで勝手に決めてるの!///私は…」

エレン「でも流石に佐藤もこれ以上の人数を見るのは大変だと思うよ?ね?」

エレンが佐藤を見る。

佐藤「えっ!あっうん確かにちょっと厳しいかも…」

エレン「ね!それとも会長じゃ嫌なの?」

霊華「そう言う訳じゃないけど…!」

エレン「じゃっ別にいいよね!これでけって〜い!」

霊華「っ〜///」

霊華は顔を真っ赤にして何も言わなくなってしまう。

レオ「なっなんだが最初から決まっていた様に感じるんだが…」

エレン「そっそんなことないよ!さっ!早く行こ!」

エレンは走って先に行ってしまう。

レオ「あっ!おい!待て海に入る前にちゃんと準備体操をするんだ!全く…霊華行くぞ!」

霊華「あっ!うっうん!」

レオと霊華もエレンの後を追う。

ロザリア「ちょっと強引でしたでしょうか?」

美春「あれぐらいしないと霊華がレオを選ばないですし、ほら田中、もう演技しなくていいですよ」

田中「あっまじ?いや〜まさかこれが会長と霊華ちゃんを一緒にさせる作戦だとは思わなかったよ、てかっ!なんで俺だけ教えてくれなかったの!?教えてくれたらちゃんと協力したのに〜」

美春「あなたに教えるとあいつ同様ろくなことにならないからですよ」

美春がさす"あいつ"とはおそらくリオンのことだろう…実際リオンも同様に教えられていない。

田中「まあでも、流石俺って感じだったな〜即席だったのに名演技だったしょ!将来役者でも目指しちゃおっかな〜」

美春「寝言は寝て言ってください」

美春が冷ややかに言い放つ。

田中「やっぱりきびしぃ〜!でもでも、やっぱりそう言うとこも好き…」

ヒュッ!

田中「ひえっ!」

美春が田中の首元に無言で銛を突き立てる。

田中「ちょっ!冗談!冗談だから!」

美春「全く…」

美春が銛を下す。

田中「はぁ〜でもあれいいの?バレたらやばいんじゃ…」

美春「その時は連隊責任です、きっとバレたら死ぬまで電撃で痛めつけられますね」

田中「うっそ〜…」

田中の顔が青ざめる。

ロザリア「流石にそこまではしないと思いますけど…でも確かに怒るかもしれませんね…もしかしたらお兄様とも上手くいかなくなってしまうかも…」

美春「だからこそ強引にでも一緒にする必要があるんです!」

田中「なるほど〜だけどあれエレンちゃんいるけどいいの?あれじゃ二人きりじゃないような…」

美春「そこはエレンに任せましょう、どうするかは知らないけどきっとエレンだったら上手くやってくれます」

美春(正直根拠はありませんけど!)

佐藤「そうだね、取り敢えず僕たちは彼女に頼まれたことをしようか」

美春「それじゃあ会長達の周りに邪魔が入らないように頑張ってみんなで見張りましょう!」

皆「おおー!」

…………

その頃レオ達は準備体操を終えて海に入る準備を終えていた。

エレン(よし!取り敢えずここまでは計画通り!後はなんとか二人きりにするだけ!)

エレン「いたたたた…」

エレンがお腹を押さえる。

レオ「どうしたんだエレン!?」

霊華「エレン!?」

レオと霊華が駆け寄る。

レオ「大丈夫か!?」

エレン「ちょっとお腹が痛くて…」

エレン(ふふっこうして腹痛のフリをすれば寮に戻るふりをして上手く会長達を二人きりにできる!我ながら完璧な作戦)

レオ「何か食べたものが悪かったのか?いや、ウイルスや寄生虫の可能性も…」

エレン「大丈夫だよ…ちょっと寮に戻って休めば良くなるから…」

レオ「大丈夫な訳ないだろ!もし寄生虫や食中毒の類だったら本当に大変だ!歩けるか?手を貸してやる!」

レオがエレンに手を貸そうとする。

エレン(まっまずい!思ったより心配されてる!なっなんとか2人きりにしないと!)

エレンの演技が名演技だったのかはたまたレオが心配性なのかは分からないが必要以上に心配されてしまう。

エレン「うっううん!大丈夫!1人で歩けるから!私のことは気にしないで2人で楽しんでて!」

霊華「本当に大丈夫なの?もしものことがあったら…」

エレン「ほっほんっっっとに大丈夫だから!ちょっと休めば良くなるから!2人は先に遊んでて!ね!ね!私は1人で寮に行って休んでるから!それじゃ!」

そうエレンは早口に捲し立て寮に行ってしまう。

霊華「なんか元気そうに見えるんだけど……」

レオ「大丈夫だろうか…?」

霊華「心配しすぎよ、本人がああ言ってるんだし」

レオ「そうか…まあ…そうだな、とりあえずは俺たち2人で遊ぶか…」

とりあえず二人は納得することにした。

霊華「そうね…2人で…ん?」

レオ「どうした?」

霊華(レオと…私だけ…私達だけ……そっそれって!れっレオと…二人っきり!?」

霊華「っ///」

霊華はその事実に気づきまた顔が真っ赤になる。

レオ「霊華…その…顔が赤いが大丈夫か?」

霊華「えっ!?は!?大丈夫に決まってるでしょ!!さっ…さっさといくわよ!!」

霊華はそう言って海の方に足早に行ってしまう。

レオ「あっ!おい霊華!待ってくれ!」

レオが追いかける。

霊華(どっどうしよう!?レオと二人っきりなんてそんなの無理!恥ずかしくて死んじゃう!うう〜っ!もう!エレンのバカーー!!!)

レオ(一体どうしたんだ?)

霊華の心からのエレンへの叫びと、霊華の気持ちには全く気づかないレオであった。

その頃一方エレンは寮に向かうふりをして遠くからレオ達を見ていた。

エレン(よしっ!ちょっと焦ったけどこれで完璧!あとはどう進展するかだけどそこは流石私、しっかりと考えてある!)

エレンは自信満々のようだ。

エレン(霊華は銛突き初心者、ならば上手く銛を使える筈がない!そうなれば必然的に会長に頼る、そして会長が霊華に教えようとしその時!不意に会長の手が霊華の手に触れてしまう!!そうそれがきっかけとなって二人の関係は進展する!うん!間違いない!だって私が見る少女漫画でもそういう展開あったもん!あれは消しゴムだけど…まあ同じだよね!強引だったけどしょうがないよね!私も親友の恋路は応援したいし!)

エレンは自分を正当化する、しかし…そんな少女漫画のようなことが本当に起きるのだろうか…ここでエレンはある疑問を浮かべる。

エレン(あれ?でもこれって…霊華が会長に頼らなかったらこうはならないんじゃ………)

エレン「……………」

しばらく沈黙した後ようやく気づく。

エレン「ああーー!!」

エレン(どっどうしよう!?そのこと考えてなかったーー!!)

そう!この作戦がガバガバだと言うことに!

エレン(それじゃ意味ないじゃん!なんでもっと早く気づかなかったの!!もう!私のばか!ばか!お馬鹿さん!)

他にも問題は山積だが当の脳内少女漫画の彼女は気づいていないようだった。

エレン(うっう〜ん…どうしよう……流石にもうどうにもできないし…神頼みしかないか…まあ二人っきりにはなれたし、悪い方には向かないでしょ!とりあえず誰かに見つかったらまずいし、一旦寮に戻ってしばらくしたら戻ってこよう)

エレンはこうして寮に戻った。

エレン(大丈夫…だよね?)

一抹の不安を抱えながら・・・

…………

その頃一方霊華はエレンが思ったように全くうまく行っていなかった。

そもそも魚が獲れない以前に銛の使い方さえよく分かっていなかった。

霊華「全然獲れない…て言うかこれどうやったら上手く使えるのよ!」

霊華がそう言っているとレオが近づいてくる。

レオはどうやら何匹か魚を獲ったようだった。

レオ「霊華、そっちはどうだ?俺は小さいが何匹かは獲れたが…」

霊華「全然だめ、て言うかこれ全然上手く使えないし…」

レオ「やはり難しいか……よし!ならもう少しコツを教えてやる」

霊華「えっでも…」

レオ「遠慮しなくていい、君も獲れた方が楽しいだろ?俺もそこまで上手くはないが多少は教えられる筈だ、心配しないでくれ」

霊華「べっ別に心配してるわけじゃないけど…分かった、そこまで言うなら…」

レオ「よし、ならまず銛を構えてみてくれ」

霊華「構えるって…こう?」

霊華が銛を構える。

レオ「ああ…その時なんだが」

そう言ってレオが指導するために近づいて霊華が持っている銛を掴む。必然的に二人の距離が近くなる。

霊華(えっ!?えっ!?レオ!?ちっ近い!!)

レオの顔が霊華に近づく

霊華「///」

霊華の顔が一気に紅潮し、心臓の鼓動が早くなる。

レオ「ここをこう持って…」

霊華(あっ…あああ…///)

レオが何か言っているが霊華の耳には何も入ってこない。

霊華の鼓動は更に早くなり今にも飛び出してしまいそうだ、緊張で体はこわばって何も動かなくなる。

今まさに霊華とレオはエレンが予期した理想の展開だ。そしてついにその瞬間が訪れる!

それはレオが教えるために手を動かした際、霊華の手に近づきそして、不意に霊華の手に触れてしまう!

霊華「!?」

レオ「あっ!霊華すま‥」

霊華「いっ‥」

レオ「へっ?」

霊華「いやーーー!!!」

バリバリバリバリ!!!

レオ「あ"あ"あ"あ"ーー!!!」

霊華は衝撃のあまりについ能力を使ってしまい凄まじい電撃を放ってしまう。

無論近くにいたレオはそれをモロに喰らう。

霊華の電撃はそこからある程度離れていた美春達にさえ見えた。

ロザリア「あの〜あれって…確か…」

佐藤「うん…会長達がいた方…だよね?」

美春「はぁ…なんでこうなっちゃうんでしょうか…」

…………

エレン「なんで…こうなっちゃうの…」

エレンが戻ってきて見たのは霊華の電撃を喰らい髪が大爆発した状態で砂浜に倒れているレオと近くで申し訳なさそうにしている霊華だった。

霊華「うう…ごめん…レオ」

レオ「いっいや…悪いのは…俺のほうだ…気に…しないで…くれ」

レオは今だに体がしびれているのかうまく喋れないようだ。

霊華「でも…」

レオ「ん?」

レオと霊華が戻ってきたエレンに気づく。

レオ「あっ…ああ…エレン……戻って…来てたん…だな」

エレン「うん…それで…その…何があったの?」

霊華「それが…」

霊華が事の顛末をエレンに説明する。

エレン「なるほどそれで…」

霊華「うん…」

エレン(はぁ…理想通りの展開だったけど…寧ろ裏目に出ちゃったか)

霊華「うう…ごめんなさい…」

レオ「いや…本当に…大丈夫…だ……」

レオはそう言っているがとても大丈夫には見えない。

とりあえずレオを寮に運ぼうと考えた時。

「何やってんだ〜お前ら?」

声が聞こえ振り返ると二人の青年がこちらに向かってきていた。

一人は黒髪の不良ぽい青年と、もう一人はグレイ程の背の茶髪の優しそうな顔をした美青年だった。

エレン「あっ!副会長!それと…えっと…」

「湊だ」

黒髪の青年が答える。

どうやら一人は三年の神宮寺湊(じんぐうじ みなと)と同じく三年の生徒会副会長である八神薫(やがみ かおる)だ

神宮寺湊

神宮寺家の息子、神宮寺家は代々政治家のエリート家系だが湊はいわゆる不良少年であり、親に反対しては家出し、友人である薫の家に転がり込んでいる。

喧嘩っ早くトラブルは起こすが人当たりが悪いわけではない、また雨の日に捨て猫が濡れないよう傘を置いっていったなどの噂もあり、根は悪いやつではない…らしい。

顔も良いため女子の人気も高い。

銃を扱うのが得意らしい。

八神薫

薫の親は、母は有名な作家であり父は弁護士、祖父は大手株式会社の社長と言った恵まれた家系の子供である。

将来は父と同じ弁護士を目指している。

ある事件がきっかけで自らの能力に気づき、周囲に避けられるようになったため引越し、幻想学園に転校する。

優しく誠実な性格で、生徒会の副会長をしておりレオからも信頼されている。

父、母、祖父共に寛容であり、転がり込んでくる湊のことも理解している。

湊の良き理解者であり、友人でもある。

湊「随分と楽しそうじゃねぇかお前ら?それにしても…ぷぷっ…あっはっはっは!」

湊は髪が爆発しているレオの方をみて大笑いし始める。

湊「会長…くふふ…それ…イメチェンか?全然似合ってねぇ!あっはっはっ!」

薫「湊」

湊「あはは…いやわりぃわりぃ、つい面白くてな」

薫「はぁ…とりあえず会長を寮まで運ぼう、君たちもそれでいいね?」

エレン「うん」

霊華「…」コク

霊華も頷く

薫「よし…ほら湊、会長を運ぶのを手伝って」

湊「分かったよ」

レオ「すまないな…二人とも…」

こうしてレオは湊と薫に担がれ寮に運ばれていった。

……………

光「どうしてそうなるのよ……」

光は寮に帰ってきた後妙に寮内が騒がしかったためエレンから何があったかを聞き唖然としていた。

エレン「ごめん…やっぱ私がそばにいるべきだった」

エレンが申し訳なさそうにする。

光「あんたが悪いわけじゃないわよ、それで?レオはどうなったの?」

エレン「今は医務室で寝てるよ、幸い軽傷で問題はないって」

光「まっあいつは頑丈だからね、そんなに気にしてもないだろうし、他の奴が巻き込まれなかっただけでも良かったわ。それで…レオに怪我をさせた張本人さんは?」

霊華の姿は見当たらなかった。

エレン「霊華は部屋に閉じこもっちゃって…相当落ち込んじゃってるみたい…」

光「まあそうなるわよね…しばらく放っておきましょ」

エレン「大丈夫かな?」

光「大丈夫よ…多分…それよりもこれからどうするかよ」

エレン「なにか策はあるの?」

光「大丈夫!とっておきがまだ残ってるわ!」

光が自信満々に言う。

エレン「本当に?今回みたいにならない?」

光「大丈夫よ…保証はないけど…とりあえず!夜まで待つわよ!」

エレン「分かった!」

しばらくして夜になり、光は最後にみんなで遊ぼうと言って皆を部屋に呼び出した。

光「全員集まったわね!」

光は全員が集まったのを確認する。レオも霊華もちゃんといるようだ。

修斗「兄上様、もうお体は大丈夫なのですか?」

レオ「ああもう大丈夫だ」

レオが親指を立てる。

霊華「レオ…その…本当にごめんなさい…」

レオ「ははっ!気にしないでくれ、俺は丈夫だからな」

霊華「そっそう……ならよかった」

レオはそう言っているがやはり霊華は負い目を感じているようだ…まあそんなことは気にせず…

リオン「なあなあ!光!今日はなにするんだよ?」

リオンは早く遊びたいと言った様子のようだ。

光「ふっふ~んそれはね…これよ!」

リオン「おおー…棒?」

光は何本かの棒を取り出す。

光「ただの棒じゃないわよ」

よく見ると棒には数字や文字が書かれている。

真鈴「もしかして…」

光「そう!今日やるのはズバリ!王様ゲームよ!!!」

皆「王様ゲーム!?」

リオン「…てなんだ?」

光「あんた…王様ゲームも知らないの?真鈴、教えてやって」

真鈴「リオン、王様ゲームで言うのは…」

リオン「ふむふむ…」

真鈴がリオンに王様ゲームの説明をする。

リオン「なる程!なんかよく分からねぇけど面白そうだな!」

光(なにが逆に分からないのよ!)

光が心の中でツッコむ。

光「はぁ…まあやってみれば分かるわ、とりあえずはじめましょう、あんたらもそれでいいわよね?」

他の者たちも頷く。

光「よし!それじゃあやるわよ!」

こうして王様ゲームが始まった。

この王様ゲームこそ光が考えた作戦だった、霊華とレオの隣に座っているロザリアとエレンはその協力者だ、後は光が王様になるだけだ。

リオン「よっしゃー!俺が王様だ!」

一番なって欲しくない奴がなった。

リオン「よし!3番!」

リオンは3番を指名する。

田中「3番…え!?俺!?」

どうやら3番は田中だったようだ。

リオン「田中!お前か!じゃあ今からお前は怪人ムカデ男爵だ!そして俺はお前を倒しにきたゲンソウレッドだ!行くぞ!覚悟しろ!ムカデ男爵!」

そう言ってリオンは田中に飛びかかる。

因みにゲンソウレッドとは現在放送されている特撮アニメ“夢幻戦隊ゲンソウジャー”のリーダーである。ムカデ男爵もそれに出てくる怪人の一人だ。

田中「いや!待って!無理!!助けて!!」

美春「王様の命令は絶対ですから」

田中「助けてーー!!!ぎゃあぁぁぁ!!!」

そのままヒーローごっこを始めてしまった。

修斗「全く…いい年してごっこ遊びとは…」

真鈴「リオンらしいんだぜ…」

光「とりあえずあいつらは放っておいて続きをやりましょ」

光(良かった!レオや霊華じゃなくて)

そんなこともありながら遂にその時が訪れる。

光「さて…次の王様は…」

皆が棒を取って見るそして、光のものには王様と書かれていた。

光(来た!)

光「私が王様ね!それじゃあ…」

光は瞬時にロザリアとエレンに目配りする。

ロザリアとエレンは頷きそしてロザリアは2、エレンは5を手で表した

光はそれを見てレオが2番、霊華が5番だと理解する。

光「2番と5番」

レオ「2番と…」

霊華「5番…」

レオと霊華が自分の番号を見る。

光「二人はポッキーゲームをしなさい!」

霊華「ええー!ちょっちょっと!?」

光「なに?文句があるの?王様の命令は絶対よ」

霊華「ぐぬぬ…」

レオ「まあ仕方がない…ルールはルールだからな」

レオが霊華を諭す。

光「そうそう、ルールなんだから仕方ないでしょ?たまたま!あんた達になったんだから」

光はあくまでも偶然ということを強調する。

霊華「わっ分かったわよ!やればいいんでしょ!やれば!」

光「そう来なくっちゃ!」

ロザリア「ポッキーゲームですか」

美春「光も考えましたね」

美春(私もロザリアとポッキーゲームしたいです!)

美春は光に関心しつつやはり邪な考えをしていた。

リオン「おお!なんかよく分からねえけど面白そうだな!やれやれ!」

いつの間にかリオンは戻ってきていた。因みに田中は伸びて倒れていた。

真鈴「お前…よくなにも知らないことを面白そうだと思えるんだぜ…」

そして光はポッキーを取り出し霊華とレオがそれを咥える。

光(よし!名付けてポッキーゲーム大作戦!二人はポッキーゲームによって唇が不本意にも重なってしまう!これをきっかけに二人の距離は近くなって関係も前に進むってわけよ!)

エレン(流石光!名前がそのまんますぎるけど完璧な作戦だね!)

二人の脳内はやはりお花畑であった。

ロザリア(これ上手くいくんでしょうか?)

光「それじゃあポッキーゲーム…スタート!」

光が合図をしポッキーゲームが始まる。

霊華とレオの距離が段々と近づいてくる。

霊華(やっやばい!れっレオの顔がどんどん近く…///)

霊華の鼓動がどんどんと早くなる。

二人の光景を周囲の者も固唾を飲んで見守る。

そして残り数センチ!

霊華(あっああ…あああ…///)

光(行け!)

レオの唇と霊華の唇の間がほとんどなくなる!

光(来た!?)

皆「おお!?」

そして二人の唇が重なりかけたその瞬間!

霊華「やっぱ無理!」

霊華は顔を逸らしてポッキーを折ってしまう

皆「ああ……」

光(後少しだったのに…)

皆が落胆する。

レオ「折れてしまったな…ああ…その…とりあえずこれで終わりでいいのか?」

光「えっ…ああ…とりあえずそれでいいわ」

レオ「分かった」

霊華「///」

霊華は顔を赤らめてなにも言わなくなってしまう。

光(まだよ!まだチャンスはある!次こそは!)

しかしそう上手くはいかずなかなか光に王様は回ってこない更に、霊華は盗み見されたのに気づいたのか棒を手で隠してしまい、エレンも確認できなくなってしまうそして

穂乃果「遅くなってきましたね…」

グレイ「そうだね…明日は朝早くから準備をしないとだし、名残惜しいけど解散にしようか…」

光「そうね…そうしましょう…」

時間が来てしまい解散となってしまう…

リオン「もう終わりかー、もっと遊びたかったなー」

修斗「ダメですよ、明日は寝坊できませんから今日はもう寝るべきです」

リオン「しょうがねえな…じゃ部屋に戻るか!楽しかったぜ!」

そう言ってリオンは部屋に戻り、他の者も続いて部屋に戻っていく。

霊華「………」

霊華も何も言わずに行ってしまった。

エレン「上手くいかなかったね…」

光「そうね…」

エレン「霊華…大丈夫かな…」

光「後で様子を見に行って見るわ」

エレン「お願いね」

………

楽しい時間は終わりしばらく経ち皆が寝静まった後、霊華は一人浜辺で泣いていた。

霊華「ぐすっ…ひっく……」

霊華はこの1週間でレオに思いを伝えることはできなかった、それどころかレオに怪我までさせてしまった、自分の不甲斐なさから涙が止まらなかった…

「こんなところにいたのね」

後ろから声が聞こえてくる、よく知っている声、光の声だ。

光「全く…こんなところでなにやってんのよ?」

霊華「だって…ぐすっ…」

光「いつもの強気なあんたはどうしたのよ?」

霊華「強く…ないもん……」

霊華にはいつもの覇気のようなものは全くなかった。

光「はぁ…隣、いいわよね?」

霊華は小さく頷く。

光は霊華の隣に座る。

霊華「私…レオに酷いことしちゃった……きっと嫌いになったに決まってる…」

光「大丈夫よ、あいつはそんなことであんたを嫌いになるような奴じゃないわ」

霊華「なんで…そう言えるの…」

光「それは……あいつとは古い付き合いだからね、あいつがそんなこと気にするような人間じゃないて知ってるし」

霊華「……でも……」

光「ん?」

霊華「結局私…告白…できなかった…いっぱいチャンスはあったのに…やっぱり私…レオに相応しくないんじゃ…」

光「あんたバカね」

霊華「え?」

光「相応しいもなにもないわよ、人を好きになることに相応しいとかそんなの関係あるの?誰が誰を好きになるかなんて人の勝手でしょ?それで言ったら、あの世界一の馬鹿が好きな真鈴は相応しいの?それに修斗も。私だって…正直グレイに相応しいとはあんまり思えないわ、でも私達がそんなこと気にしてるように見える?」

霊華「ううん…」

霊華が横に首を振る。

光「でしょ?だからあんたもそんなこと気にしなくていいの、誰かを好きになるのに相応しいかなんて関係ないんだから」

霊華「でも…結局告白できなかった…もう…」

光「大丈夫よ、チャンスならまだあるわ、この1週間、あいつに告白した奴はいなかったわ、だからまだチャンスはある!それこそ卒業式だって残ってるもの」

霊華「…!」

光「チャンスはあるわ、あんたの思いを素直にぶつければきっとレオも振り向いてくれる、きっと上手くいくわ!だから最後の最後にまで諦めちゃ駄目よ」

霊華「光…うう…うわーん!!」

霊華は光に飛びつき溜まっていたものを吐き出すかのように泣き出してしまう。

光「全く…ほら…よしよし」

光は霊華の頭を優しく撫でる、霊華が落ち着くまでそうし続けたのであった。

光「落ち着いた?」

霊華「ぐすっ…うん」

霊華が頷く。

光「良かった、なら寮に戻りましょ、明日は早いから寝坊しちゃうわよ?」

霊華「分かった」

二人は立ち上がる。

霊華「…ねえ!」

光「ん?」

霊華「その……」

光「お礼ならいいわ」

霊華「!でも!」

光「あんたの告白が成功したら、その時に全部込みでお礼として返してもらうから」

霊華「!…ふふ…分かった」

光「期待して待ってるわよ?」

霊華「ええ、期待しててね」

光「それじゃ、行きましょ」

霊華「うん」

二人は寮に向かって歩いていく

霊華(光…ありがとう…本当に…)

霊華は心の中でお礼を言う。

こうして幻想学園の総合合宿訓練は終わった、明日は島を出てまた普通の日常に戻る…はずだった…………

無機質な広い部屋、中には様々な機材や巨大なモニターが設置されている。モニターには一人の人物が映し出されており、一人の人物がモニターの前でその人物の指示を待っている

???「これより、新世界計画"Noah's project"を開始する、各位配置につくように」

まだこの時は誰も知らなかった、この島にいるもの達全員が大きな陰謀に巻き込まれていくことを………

1日目

光「んっ…朝?」

光は目を覚まして時計を確認する。

時計は9時を回っていた。

光「うそ!?もうこんな時間!?」

集合時間はとっくに過ぎていた、普通はこんな時間にもなれば先生が流石に起こしにくるはずなのだが、光はそんなことを考えている暇はなく飛び起きて着替えを済ませ、エントランスに向かう。

そこにはもうすでに皆がいた、ただなにか様子がおかしい。

グレイ「光、起きたんだね」

光「ごめんなさい!寝坊したわっ…てあれ?先生達は?」

グレイ「それが…」

レオ「いないんだ、誰一人」

光「は?」

レオの言ったことが理解できず光は困惑する。

レオ「先生どころか寮の従業員も俺達以外、誰一人…いないんだ」

光「なによ…それ…外は確認したの?」

真鈴「扉が開かないんだぜ」

寮の外に通じる正面玄関は自動ドアだ、しかし・・・

リオン「うおぉぉぉ!!!くそぉぉぉ!!!開けろぉぉぉ!!!」

リオンが力づくで開けようとしていたがびくともしていなかった

光「嘘でしょ、どうなってるのよ!?」

レオ「分からん、こんなことなにも聞いていない、一体何が何だか…」

修斗「扉を破壊しますか?」

レオ「…いや…だが…どうするべきか…」

レオが考えあぐねていたその時放送が鳴った・・・

皆「!?」

「聞こえているか」

放送から男の声が聞こえてくる

レオ「誰だ!?」

「私が誰か気になっているだろう、そうだな…私の名はゼロだ」

光「ゼロ?」

ゼロ「突然だか、お前達にはこの島でデスゲームを行ってもらう」

レオ「デスゲームだと!?」

田中「なんだよこれ!?だっ誰かの悪戯か?」

全員が突然のことに混乱するが、ゼロはお構いなしに話しを続ける。

ゼロ「ルールは単純だ、お前達にはこの島で2ヶ月間生き残って貰う。それだけだ。その間は協力しあっても殺し合ってもなにをしても構わない」

田中「それだけか?なんだよ!だったら簡単…」

ゼロ「しかしそう単純なものだとは思わない方がいい。まず一つ目にこの島に大量の怪物を解き放った。この怪物達はお前達を見つけ次第襲いかかるだろう。更に1週間ごとに強力な怪物が現れる。倒すも逃げるも君達の自由だ…逃げられればの話だがな」

田中「全然簡単じゃない…」

ゼロ「二つ目に水と食糧は殆ど処分した。残っているのは少量の水と缶詰だけだろう。その食糧を分け合っても奪い合っても構わん。そして3つ目…」

田中「まだあんのかよ!」

ゼロ「これが最後だ、外部との連絡手段は全て遮断した。助けを呼べるとは思わない方がいい。それと忠告だが自力でのこの島からの脱出は考えない方がいい。何せ海では何が起きるか分からないからな」

リオン「なんだよそれ…」

ゼロ「もう一つ、教師達のことだが…彼らには全員死んでもらった、このゲームの邪魔になるのでね」

皆「!?」

レオ「なん…だと…」

ゼロ「これで説明は終了だ…おっと、一つ忘れていた、今回は試しに試作品の怪物を一体放った、精々殺されないように努力するのだな。それでは諸君、健闘を祈る」

放送が終わる。それと同時にドアも開くようになった。

霊華「なんなのよ…これ…」

田中「さっ流石に…悪戯…だよな?いっ悪戯にしちゃ…タチが悪い…けど……」

田中が震えた声でそう言った。

修斗「…どうしますか?兄上様?」

修斗はこんな状況でもいたって冷静のようだ。

レオ「とりあえず奴が言っていたことが本当か確認しよう」

レオは椅子から立ち上がり皆に呼びかける。

レオ「皆落ち着いて聞いてくれ!とりあえず奴が言っていたことが本当か調べよう!」

エレン「そっそうだね!そうしよう!」

佐藤「うん!」

皆でキッチンなどを調べるがゼロの言ったように殆どの水や食料がなくなっていた。あったのは数本のペットボトルと缶詰だ、それと自分達が持ってきた軽食などは残っていた。

グレイ「本当になくなってるね…」

レオ「ああ…」

エレン「会長!」

エレンが駆け寄ってくる。

レオ「どうだった?」

エレン「だめ…水道もトイレも水が出なくなってる。コンロとかは使えるみたいだったけど…」

レオ「そうか…」

グレイ「温泉の方は?」

この寮には部屋ごとのユニットバスとは別に温泉もついているのだ。

エレン「一応出てたけど」

リオン「ならその水飲もうぜ!」

リオンがそう提案するが…

修斗「馬鹿なんですか貴方は?ここの温泉には様々な成分が溶けています。入る分には大丈夫ですが飲んだら何が起きるかわかりません」

この無人島は温泉が湧き出ていて、この寮はそれを引っ張って来ているのだ。

グレイ「それに、ゼロが毒を混ぜた可能性もある、危険だよ」

リオン「じゃあどうすんだよ?」

修斗「それは…」

レオ「今はそのことを考えるのは後だ、それよりも修斗、衛星電話の方は?」

レオが言う衛星電はもしもの時のためと言ってリアンに持たされていたものだ。

田中「おいおいなんだよ!そんなもんあるんだったら早く言えよ!これだったら携帯が繋がらなくてもなんとかなるな!」

修斗「それが…繋がりませんでした」

田中「は?」

レオ「そうか…」

田中「いやいや!衛星電話が繋がらないなんてありえないだろ!」

修斗「なら試してみますか?」

田中「おう!えっと…佐藤!これどうやって使うんだ?」

佐藤「使い方もわからないで借りたの?」

田中「うっうるせえ!さっさと教えてくれよ!」

佐藤「分かったよ」

佐藤から使い方を教えてもらい使ってみるが…

田中「マジで繋がらねえ…これ壊れてんだろ!」

結局つながることはなかった。

修斗「どこも壊れていませんよ、壊れているのは貴方の頭です」

田中「なんだと!?」

穂乃果「こんなことあり得るんでしょうか…?」

レオ「実際に起きているんだからなんとも言えん…」

しばらくの沈黙の後・・・

光が口を開いた。

光「ねえ、とりあえず外に出てみない?せっかく出れるようになったみたいだし…」

レオ「そうだな…それに奴が言っていた怪物とやらも気になる」

グレイ「そうだね一度出てみよう」

寮にいるもの達全員が外に出る。もちろん武器を持った状態で。

レオ「まずは寮の周りを探索しよう、修斗、ついてきてくれ」

修斗「分かりました」

レオと修斗が二人で周りを確認していく。

ロザリア「私達も行きましょう」

美春「そうですね」

他の者達も数人のグループになって周囲を確認する。

レオ「修斗…この状況、どう思う?」

修斗「悪戯ではありませんね、衛星電話が繋がらなかったのも、なんらかの妨害電波が出ていると考えられます」

レオ「やはりか…どうやらあのゼロという男、本気でデスゲームをしたいようだな…」

修斗「そのようですね…しかし目的が分かりません…一体ゼロはなんのためにデスゲームを行なったのでしょうか…単に楽しむだけなのでしょうか?」

レオ「さあな…イカれた奴が考えることは分からん…待て」

レオが立ち止まる。

修斗「どうしましたか?」

レオ「なにか匂わないか?」

修斗「そう言えば確かに…これは…!」

修斗もそれに気づく。

レオ「ああ…血の匂いだ…あの方向からだ…」

レオが刺した方向は茂みで覆われていて、その先に何があるかは茂みをかき分けなければわからなかった。しかしこの血なまぐさいにおいは確実にこの先から来ていた。

修斗「行ってみますか?」

レオ「ああ」

レオはもしものために刀に手をかける、修斗もレオと同様に刀に手をかけた。

近づけば近づくほど匂いは強くなっていった…

レオ「ここだ」

レオは茂みのすぐ近くに立つ。

レオ「いくぞ…修斗…」

修斗「ええ…」

レオと修斗は意を決して茂みをかき分けるそしてその中には…

修斗「!?」

レオ「うっ!こっこれは!?」

ロザリア「お兄様達どうしたんですか!?」

近くにいたロザリア達が駆け寄ってくる。

レオ「!お前達は見るな!」

レオは来ないよう忠告するが…その忠告は少し遅かった…

ロザリア達の目にも映ってしまった。

そこには…自分達のよく知っている…今までお世話になっていた教師達の…死体があった。全員が無残な姿で…殺されていた。

ロザリア「あっ…ああ…いっいやーーー!!!」

ロザリアが悲鳴を上げる。

美春「うっうそ…こんな…うっ!」

美春もあまりの悲惨な光景に嘔吐してしまう。

光「ちょっちょっとなにがあったの!?これは!?」

他の皆も悲鳴に気付き集まってくる。

リオン「まじ…かよ…」

田中「ドッキリだよな?そっそうだって言ってくれよ!」

ロザリア「ああ…いや…いやぁ!」

ロザリアは恐怖のあまりその場にうずくまってしまう。

レオ「ロザリア!大丈夫か!」

ロザリア「ああ…ああ………」

ロザリアはレオの声さえ聞こえていないようだった。

レオ「くそ!とりあえず寮に戻るぞ!これ以上ここにいては駄目だ!穂乃果!美春を頼む!修斗!ロザリアを運ぶのを手伝ってくれ!」

穂乃果「はい!」

修斗「分かりました!」

穂乃果は美春の介抱をし、レオと修斗は二人で動けなくなったロザリアを運んだ。

他の者達も寮に一度戻る。

霊華「本当にこんなことが起きるだなんて…」

田中「これから俺たちどうなっちまうんだよ!」

佐藤「落ち着いてよ田中」

田中「これが落ち着いていられるかよ!人が死んだんだぞ!もう終わりなんだよ!俺たちも殺されちまうんだよ!」

田中の意見は最もだ、人が…それもよりによって自分達がよく知る教師達が死んだのだ。冷静でいられる訳がなかった。

霊華「うるさい!泣き言をギャーギャーそんな大声で言わないで!」

しかしそんな田中の態度にイライラしたのか霊華が声を荒げる。

田中「なんだと!これが泣き言を言わないでいれるかよ!お前はいいよな!きっと会長に守ってもらえるんだから安心だよな!」

佐藤「田中!」

霊華「なんですって!?」

光「ちょっとあんた達!」

霊華が田中につかみかかろうとするが。

「お前達喧嘩はやめろ!!」

声が聞こえ振り向くと。いつの間にか戻ってきていたレオがいた。

レオは二人の間に割って入る。

レオ「俺たちで争い合ってどうするんだ!」

田中「だけど!」

霊華「でも!」

二人が何か言おうとするが…

レオ「今俺たちは互いに協力し合わなければならないんだ!そうしないと生き残れない!それなのに今こんな些細な喧嘩で仲間割れなんか起こしてどうする!それこそゼロの思うツボだ!」

二人「………」

レオ「俺たちはなんとしてでも生き残らないとならないんだ、分かるだろ?安心しろ何があっても俺たちなら大丈夫だ!みんなで協力し合えばどんなことも乗り越えられる!な?」

レオが二人を諭す。

霊華「………その…悪かったわね」

田中「いや…俺もごめん…」

レオ「それじゃあこれで仲直りだ、さあ席に座ってくれ今から皆で今後のことを話そう」

霊華「分かった」

田中「おう」

二人が席に戻る。

グレイ「流石だね会長」

一部始終を見ていたグレイがレオに話しかける。

レオ「皆をまとめるのも、生徒会長としての俺の仕事だからな」

グレイ「ふふ、そうだね」

レオ「さてそれじゃあ俺たちも席に座ろう」

グレイ「うん」

こうしてロザリアと美春、看病をしている穂乃果とエレンを除いたメンバーで話し合うことになった。

レオ「まず最初に水の確保についてだ」

真鈴「結局どうするんだぜ?テレビで見るみたいな海水から水を作る方法でも試すのかぜ?」

レオ「それも考えたがあまりにも効率が悪い、そこで川を探そうと思う。」

リオン「川?」

レオ「ああ川があれば飲み水は何とかなるはずだ、最悪湧き水でもいい」

光「でもその間の水はどうするの?ここにある水じゃ数日持たないわよ」

レオ「それも考えてある、グレイ」

グレイ「うん、そのことなんだけど川が見つかるまでは僕の力で作り出した氷を水にして使っていこうと思うんだ。」

田中「それ…飲めんのか?」

田中が怪訝そうな顔をしながら質問する。

グレイ「僕の能力は冷気を発生させて大気中とかにある水の分子を凝固させることで氷を作り出すんだ、だから溶けてしまえばただの水と変わらない」

田中「それなら安心だな!」

グレイ(逆になんだと思ってたんだろう…)

レオ「みんなこの案で構わないか?」

その場にいる全員が頷く。

レオ「よしそれじゃあ次に…うん?」

レオが何かに気づく。

霊華「どうしたの?」

レオ「いや…あそこ、何か見えないか?」

レオが指さしたのは正面の入り口の奥、砂浜の方に何かが見える、それはこちらに近づいてきていた。

リオン「なんだあれ?人か?」

光「ほかの寮のやつかしら?」

最初はその場にいる全員が人だと思ったしかし。

田中「なあ・・・あれ本当に人・・なのか?なんか手?みたいなのが複数あるように見えるんだが・・俺の目が悪いだけか?」

田中はよく目を凝らしてみるがやはり手が複数本あるように見える・・・

レオ「いや・・・確かにそう見えるな」

それが近づくほど人ではない何かに見えてくる・・・

真鈴「こう言う時はこれが役に立つんだぜ!」

そう言って真鈴は持っていたカバンから双眼鏡を取り出し、近づいてくる何かを見ようとする。

真鈴「さてさて・・あれは一体・・・!?」

それを見たとたん、真鈴の顔はみるみる青ざめていく…

光「どうしたの!?何が見えたのよ!?真鈴!」

真鈴「かっ・・怪物!!!」

皆「!?」

光「怪物てなによ!?一体どんな奴なのよ!」

真鈴「体が半透明で…それに触手みたいなのが何本も生えてて!とにかく普通の生き物じゃないんだ!」

レオ「ゼロが言っていた怪物は本当だったのか…!」

光「どうするの!?」

レオ「あの怪物はこっちに近づいて来てる!戦うしかない!」

田中「怪物とマジで戦うのかよ!?だっ大丈夫なのか?」

レオ「やるしかないんだ!田中と佐藤は穂乃果達にこのことを伝えてここに残ってくれ!他のみんなであの怪物と戦う!いいな?」

その場にいる全員が頷く。

レオ「よし!それと田中、佐藤!」

田中「どっどうしたんだよ?」

レオ「俺たちに何かあったら・・・穂乃果達を連れて逃げてくれ、分かったな?」

佐藤「・・・分かった」

田中「おっおう!だけど死ぬんじゃねえぞ!」

レオ「分かってる、それじゃあ行くぞ!」

こうしてレオ・修斗・霊華・光・真鈴・リオン・グレイの7人で怪物の元に向かう。

リオン「へへっ!怪物退治か!なんか漫画みてえだな!」

リオンはこんな状況でも能天気のようだ。

修斗「油断しないでください、これはアニメや漫画の世界ではなく現実です」

リオン「分かってるって!」

修斗「本当に分かっているんでしょうか?」

光「大丈夫よ、あいつはタフだからそう簡単にやられたりしないわ」

修斗「そうですね」

レオ「・・・見えてきたな」

レオ達は怪物と僅か数メートルのところまで近づいていた。

霊華「こいつが………」

目の前にいる怪物は真鈴が言ったように半透明で頭はなく胴体と足、そして数本の触手が生えていた、半透明の胴体の中には内臓のようなものなどが見えており、とてもではないが地球上の生物には見えなかった…

怪物は目がないにも関わらずレオ達が見えているのか、触手をうねらせ始める

レオ「くるみたいだな!全員構えろ!」

レオと修斗は刀を鞘から抜き放ち、リオンは拳、真鈴と光は持ってきた拳銃を構える。

グレイは冷気を、霊華は電気を纏う。

レオ「いくぞ!」

皆「おお!!」

レオの掛け声と同時に全員が動く。

レオと修斗が先陣を切り怪物に突っ込んでいく。

怪物は触手をレオと修斗に向かって放つ。

レオ「ふっ!!」

修斗「遅い!!」

レオと修斗は向かってきた触手を刀で切り落とす。

怪物は更に触手を伸ばすが。

グレイ「アイシクルショット!」

霊華「雷撃槍!」

グレイの手から氷柱が放たれ、霊華は電気を槍状にして投げつけた。

二人の攻撃は怪物の触手をさらに二本弾き飛ばした。

リオン「もらった!エンチャント!」

リオンは能力によって身体能力を上昇させ残った触手を掻い潜り怪物に一瞬で近づく。

レオ「!待て!リオン!」

しかしレオは嫌な予感がしてリオンを静止させようとしたが遅かった。

リオン「喰らえ!おらぁ!!」

リオンはそのままの勢いで渾身のパンチを怪物に叩き込む!しかし。

リオン「あっあれ?」

リオンのパンチは怪物には全く効いていなかった…それどころかリオンの腕は怪物の体から抜けなくなっていた。

リオン「ふぐぐぐぐっ!くそっ!放せ!」

リオンがいくら力を込めても怪物の体から腕は抜けずむしろ取り込まれていきそうになる。

光「あのバカ!?」

グレイ「リオンくん!!」

どうにかしようにもリオンが怪物と密着している状態では攻撃してしまえばリオンにも攻撃が当たりかねない、その場にいる誰もが怪物に攻撃することができなかった。

レオ「リオン!!」

リオン「やっやべっ」

更にリオンは怪物に取り込まれそうになるが。

修斗「全く…」

修斗は怪物に近づき刀に力を込める。

修斗「三ノ太刀」

修斗の刀が水を纏う。

修斗「流水!」

修斗が放った水の斬撃は怪物がリオンの腕を飲み込んでいる箇所を正確に切り裂き、力が弱まったことでリオンは怪物から腕を引き抜けるようになる。

腕を引き抜いたリオンは飛びのいて怪物と距離をとる。

修斗も同様に一度距離をとった。

リオン「危なかった〜助かったぜ!修斗!」

修斗「だから言いましたよね、油断するなって」

リオン「わりぃわりぃ」

光「今がチャンスね!真鈴!」

真鈴「そうみたいだぜ!これでもくらえ!!」

光と真鈴が拳銃を撃ち、何発もの弾丸が怪物に命中する……

しかし怪物にはこれも全く効いていない様子だった、怪物の中に入った弾丸は溶けて跡形もなくなった。

真鈴「溶けて無くなっちまったんだぜ」

もしリオンがあのまま怪物に取り込まれていたら先程の弾丸のように溶かされていただろう、その光景を想像するだけで背筋に冷たいものが走る。

光「弾丸が全く効かないなんて…」

レオ「どうやら奴は物理攻撃が全く効かないみたいだな」

修斗「そのようですね、それにあれを見てください」

怪物の方を見ると切れた触手などが再生していた。

修斗「どうやら再生するみたいですね」

レオ「厄介だな…どうすれば奴を…」

真鈴「それなら…こいつが効くんじゃないかぜ!」

真鈴は鞄の中からあるものを取り出した。

レオ「なんだそれは?」

真鈴「まあまあ見ておくんだぜ!ほら!受け取れ!」

真鈴はそう言ってそれを怪物に投げつける

怪物は体内に取り込み溶かそうとするが

次の瞬間怪物の体内に入ったものが爆発し、爆炎をあげる、怪物は爆発によってバラバラに吹き飛んだ。

レオ「っ…!焼夷手榴弾か…なぜあんなものを持っているんだ?」

真鈴「まあ…もしものためって奴だぜ!」

一体どんな状況に陥ることを想像していたのだろうか…レオはそんなことは考えないようにした…

光「……流石に死んだわよね?」

光がバラバラになった怪物を見ながら言う。

ガシッ

霊華が怪物の破片を蹴る。

光「ちょっと霊華!」

霊華「大丈夫みたいね、もう動かないわ」

光「あんたってこう言うとこは度胸あるわよね…」

霊華「うっうるさい!///」

グレイ「それにしてもこんな怪物が出てくるなんて…」

リオン「こんなのがウヨウヨいんのかよ」

修斗「どうやらすでにこの島はかなり危険のようですね」

レオ「そのようだな………!?アリシア、フレア!」

レオは唐突に妹達の名前を言うと走り出してしまう。

リオン「おい!レオ!待てよ!うおっ!!」

リオンがレオを追いかけようとした瞬間目の前に触手が飛んでくる。

リオンは咄嗟に後ろに飛び退き回避する。

リオン「くそ!おいおいまじかよ!?」

触手が飛んできた方向を見ると先程倒した怪物と同じ怪物が複数体いた。

どうやらさっきの爆発音で集まって来たようだ。

光「あんなにいるの!?真鈴さっきのやつは!?」

真鈴「あれはとっておきだから一個しか持ってきてないんだぜ!」

光「じゃあどうするの!?それにレオが!」

気づけばレオはかなり遠くまで行ってしまっていた。

修斗「今は奴らを倒すことが優先です!兄上様なら大丈夫です!今私達がこの怪物達を倒さなければ寮にいる姉上様達に危害が及ぶ可能性があります!」

修斗が言うのならばきっと大丈夫なのであろう、それにどちらにせよ目の前の怪物から逃げられる状況ではなかった。

光「でもどうやって倒すの?」

修斗「奴には物理攻撃は効きませんが私やグレイさん、霊華さんの攻撃なら効くかもしれません!お二人とも、いけますよね?」

霊華「ええ!」

グレイ「任せて!」

二人とも準備は万全のようだ。

修斗「分かりました、私達三人で前に出ます!リオンさん、真鈴さん、光さんは私達を援護してください!」

光「分かった!リオン!あんたもこれを持っておきなさい!」

光がリオンに予備の拳銃を渡す。

リオン「サンキュー!任せとけ!」

真鈴「へへっ!腕がなるぜ!」

三人が武器を構える。

修斗「それでは皆さん…行きますよ!!!」

その頃一方レオは。

レオ(アリシア!フレア!頼む!無事でいてくれ!)

妹達のいる寮へと向かっていた。

・・・・・・

時間は少し遡りゼロの放送の直後

青色のミディアムヘアーで十字架のネックレスを付けた赤い目を持つ小柄の少女アリシア・スカーレットとその妹であり赤髪のショートヘアでリボンを付けた姉と同じく小柄な少女、フレアドール・スカーレットも他の者達と同様この放送を聴いていた。

二人はアリシアがニ年、フレアが一年と違う学年だが一・二年は合同で寮を使うため同じ寮で過ごしていた。

アリシア「一体…なんなのよこれ…?」

フレア「お姉様…怖い…」

フレアがアリシアの服の裾を掴む。

アリシア「大丈夫よフレア、直ぐにお兄様達がなんとかしてくれるわ」

アリシアはそう優しくいいながらフレアの頭を撫でる。

フレア「そうだよね、お兄様達がなんとかしてくれるよね」

フレアの恐怖は少し和らいだようだ。

アリシア「ええ」

アリシア(でも…本当にどうにかなるのかしら…もしもあの放送が本当だったらお兄様達でも…)

「なあ、扉が開くようになったんだし外に出てみようぜ」

一人の黒のツーブロックの髪型をした男子が声を上げる。

アリシア「和也、本気なの?」

彼の名は斎藤和也(さいとう かずや)アリシアの同級生だ。

銃の扱いに長けていて、腕は学年一の射撃の腕を持つ真鈴と肩を並べるほどであり、クラスの中心的な人物でもある。

不良のような見た目をしているが特段不良という訳ではない。

和也「ああ、だってこのままここにいても仕方がないだろ、あの放送が本当かどうか確かめないと」

アリシア「もし本当だったら怪物がいるのよ?危険すぎるわ」

「そっそうだよアリシアちゃんの言うとおりだよ」

アリシアの近くにいたメガネをかけた黒髪のおかっぱの少し気の弱そうな少女がアリシアに同調する。

彼女は明日見遥(あすみ はるか)

アリシアとは中学時代からの友人である。図書委員で普段は引っ込み思案な性格であり、よく本を読んでいる。

一度見たものを瞬時に記憶できる能力を持っている。

6つ離れた兄がいて、兄は警察官をしている。

同級生の和也に密かに思いを寄せている。

和也「なんだよ遥も…もしかしてお前らビビってんのか?」

遥「そっそうじゃなくて…」

和也「大体…怪物なんているわけないだろ、もしいたとしても俺にはコイツがあるからな!コイツがあれば怪物なんて余裕だぜ!」

和也は一丁のサブマシンガンを取り出し余裕そうに言った。

アリシア「銃でどうにかなるとは限らないでしょ?」

和也「はっ!銃が効かねえやつなんているわけないだろ!ビビってんならお前らはここで隠れてな!」

和也はそう言うとグレーの長髪で鋭い目つきをした青年と金髪のいかにもギャルのような見た目の二人に話しかける。

和也「隼人!夏樹!お前らもいくぞ!」

それは和也の友人の風斬隼人(かざきり はやと)と五十嵐夏樹(いがらし なつき)

二人とも和也とは小学校からの仲だ、隼人は剣道部の副主将を任せられるほどの剣の達人で、その太刀筋はまるで風のようだと言われている。

クールな性格であまり喋らず顔がよいため女子からの人気も高い。

夏樹は典型的なギャルといった感じの女性で、よく男と遊んでいる姿などが目撃されている。

彼女の言葉は他人を誘惑する力がある。

隼人「はぁ…なんで俺が…」

夏樹「まだメイク終わってないんですけど~」

二人はこんな状況なのに全く危機感がないようだ。

和也「いいからいくぞ!」

そう言って和也は外に出ていってしまう。

隼人「分かったよ全く…」

夏樹「めんどくさ〜」

二人は渋々和也の後をついていく。

遥「待ってよ!和也くん!」

遥も和也達の後を追って外に行く。

他の一二年の生徒達は和也達のように外に出る者もいれば寮の中から出ないと言う者もいた。

フレア「どうするの?お姉様?」

アリシア「何が起きるか分からないわ、とりあえず私は部屋に武器を取りに行ってくるわ、フレア、貴方ももしものために戦う準備をしておきなさい」

フレア「分かった!」

アリシアとフレアは自室に戻り、置いてある槍を手に取る。

アリシアは槍術に長けていて槍の腕なら自信があった

アリシア(これが効く相手ならいいのだけど…)

そんなことを考えた矢先・・・

ドゴーン!!!

アリシア「!?」

揺れと共に轟音が響く。

アリシアは突然の揺れに転びそうになるが持ち前のバランス力で何とか転ばずに済んだ。

アリシア(外から!?何かあったの!?)

アリシア「ッ!!!」

アリシアは急いで自室から出る。

フレア「お姉様!」

アリシア「フレア!」

部屋から出て直ぐにフレアと会う、廊下にはフレア以外も先ほどの音や振動に驚いて出て来た者達が何人かいるようだ。

フレア「お姉様、何があったの!?急に大きい音が聞こえてきて…」

アリシア「分からないわ!外で何かあったのかもしれない!確認してくるからフレア!貴方は部屋にいなさい!」

アリシアはフレアに部屋にいさせようとするが…

フレア「やだ!私もお姉様と一緒に行く!」

フレアは首を横に振って一緒に行くと言う。

アリシア「フレア…」

フレア「お願い!足手纏いにはならないから!」

フレアはアリシアに懇願する。

アリシア「……はぁ…分かったわ、でも危ないと思ったら直ぐ逃げること、いいわね!」

フレア「分かった!」

アリシアとフレアは二人で外に出る。

そこには何かを驚いた表情で見つめる和也達、そしてその視線の先には。

アリシア「なによ…これ……」

巨大なカプセルのようなものがあった。

アリシア「何があったの!?」

アリシアが和也達に近寄る。

和也「分かんねえよ!!急にコイツが空から降って来たんだ!」

アリシア「急に?本当なの?」

遥「うん、急に空から落ちて来たの…」

遥もどうやらこのカプセルが落ちてくるところを見たようだ。

幸いカプセルは誰かの上に落ちたわけではないようで怪我人はいなかった。

アリシア「とりあえず怪我人はいないみたいでよかったわ」

遥「うん、そうだね」

アリシア「それにしても…なんなのこれは…」

カプセルのようなものの中はよく見えず何が入っているのかは分からない。

和也「クソ!驚かせやがって」

ガシッ!

和也がカプセルを蹴る。

アリシア「ちょっと和也!」

和也「はっ!どうせ開くわけ………」

そう言って和也が振り返った時。

プシュー……

和也「えっ?」

夏樹「うそ…」

アリシア「あい…た…?」

カプセルが開いた。

カプセルの中から一番最初に出て来たものは……

巨大な鉄の鉤爪だった。

その場にいるもの全員が凍りつく。

そしてその腕は開きかけていたカプセルの蓋を破壊し、その腕の持ち主は姿を表した

それは3メートル近くある人型の怪物だった。

その巨体にはそこら中に縫い合わされたような跡があり、眼の部分も縫い合わされていた。また全身に腫瘍のようなものも見えている。そして何より目を引いたのは胸部に露出した巨大な脈打つ心臓のようなものと、右腕に装着された巨大な鉄の鉤爪だった。

フレア「あっああ…」

アリシア「なによ…こいつ…?」

遥「かっ怪物…!」

怪物は目の前にいる和也を見て近づいてくる。

和也「ひっ!来るな!来るな!」

和也は持っていたサブマシンガンを怪物に向かって連射する。

しかし怪物は弾丸が何発命中しようとものともしない……そして

和也「うわぁぁぁ!!!」

怪物は右手を振り上げ

バシッ!

その鋭利な鉤爪で和也のサブマシンガンを持っていた右腕を弾き飛ばした。

ボトッ

和也の右腕が地面に落ちる。

和也「あっ…ああ…!俺の腕!俺の腕があああぁぁぁッッッ!!!」

和也が絶叫を上げる。

五人「!?」

アリシア「和也!!!」

ちぎれた右腕を押さえる和也、そんな和也にむかって。

アリシア「和也!逃げて!!!」

和也「へっ?」

ズシャ!!

怪物は巨大な鉤爪で和也の体を突ら抜いた。

和也「ゴボォ」

和也の口などから大量の血が溢れ出す。

隼人「嘘…だよな…?」

怪物は和也を投げ捨てる、投げ捨てられた和也の体はぴくりとも動かない。

その場にいる誰もが理解した、和也は今この怪物に"殺された"のだ。

遥「いや……いやぁぁぁぁーー!!!」

遥が悲鳴を上げる。

夏樹「じょ冗談じゃないわよ!!」

夏樹はその場からいち早く逃げ出した。

隼人「和也…お前!よくも…よくも和也をッッッ!!!」

隼人が逆上して刀を抜き怪物に切りかかる。

アリシア「隼人!だめっ!!!」

アリシアは隼人を止めようとするが隼人の耳にその声は届かない。

怪物は再び右腕を振り上げ。

隼人「あ……」

バシッ!

今度は隼人の頭を弾き飛ばした。

隼人の頭は地面に転がり、首から噴水のように血が噴き出して彼の体は崩れ落ちる。

フレア「あっああ…」

ガシッ!

フレア「!?」

アリシアがフレアの腕を掴む。

アリシア「逃げるわよ!!フレア!!!」

そしてそのまま走り出した。

フレア「おっお姉様…」

アリシア「いいから走って!!!」

アリシア(あいつには勝てない!戦ったら間違いなく殺される!!逃げないと!!せめてこの子だけでも!!)

アリシアは本能的にあの怪物には勝てないということを悟った、あの怪物にとって自分たちを殺すことは目の前にいる虫を殺すことと変わりないのだろう。

夏樹「いやぁぁぁ!!!」

アリシア「!?」

アリシアの耳に夏樹の悲鳴が聞こえてくる。

前を見ると先に逃げた夏樹が半透明の触手を持つ怪物に捕まり取り込まれそうになっていた。

よく見ると他に逃げ出した生徒も半透明の怪物に襲われている。

夏樹「あっああ…助…け」

夏樹が半透明の怪物に取り込まれる。

取り込まれた夏樹は瞬く間に怪物の体の中で消化されドロドロに溶けていく。

フレア「ひっ!!!」

アリシア「くそっ!!」

アリシアは踵を変えす。

アリシア(向こうには逃げられない!怪物に囲まれてる!!寮に逃げるしかない!!!)

アリシアはフレアを引っ張り寮に向かって逃げる。

後ろからは。

「いやだ!!いやだああああああぁぁぁ!!!」

「助けて!!助けてええぇぇ!!!

同級生や他の学年の生徒達の悲鳴や助けを求める声が聞こえてくる。

アリシアは振り返らない。

なんとかアリシアとフレアは寮にたどり着く。

アリシア「はぁ…はぁ……」

「アリシアちゃん!!!」

アリシア「!?」

アリシアの耳によく知った声が聞こえてくる。

振り向くとそこにはこちらに向かって走ってくる遥の姿が見えた。

遥「はぁ…はぁ…っ!!!アリシアちゃん!!!」

アリシア「早く!こっち!!!」

アリシアは遥に向かって手を伸ばす。

アリシア(もう少し!)

遥もアリシアに向かって手を伸ばした。

アリシア(後…少し!!)

遥が近づく。

アリシア「遥!!!」

遥の手がアリシアの手に触れかけたその瞬間

アリシア「え?」

グシャ!!

突如にして遥の姿が目の前から消えアリシアの顔に血がかかる。

そして…和也と隼人を殺した怪物が目の前に現れた。

遥は巨大な怪物に叩き潰されていた。

アリシア「はる…か…?」

アリシアの目に…

アリシア「ああ…あああ……!」

怪物に叩き潰され臓物が飛び出た遥だったものの姿が映る。

アリシア「うわぁぁぁ!!!」

アリシアは槍を握り怪物に向かって攻撃する、しかし隙だらけの攻撃は最も簡単に怪物の左腕に防がれ、怪物はそのままアリシアを薙ぎ払う。

アリシア「うっ!!!」

フレア「お姉様!!!」

アリシアは壁に叩きつけられる。

アリシア「っ!!!」

アリシアは立ち上がり槍を握りしめる。

アリシア「殺す…殺してやる!!貴方なんか!!私が殺してやる!!!うあぁぁぁぁ!!!」

アリシアは錯乱していた、度重なる同級生や友人の死と言う信じ難い現実が、アリシアの精神を狂わせたのだ。

アリシアは怪物に飛び掛かる。

アリシア「死ねぇぇぇッッッ!!!」

アリシアは怪物の体を槍で突き刺すが。

アリシア「!?」

怪物には全く効いていない、それもそうだろう、銃弾を何発も喰らっても平然としているような化け物だ、この程度でどうにかなるわけが無かった。

怪物は右手をアリシアに向かって振り下ろす。

アリシアは咄嗟に避けようとするが…

アリシア「うあッッ!!!」

避けきれず怪物の鋭利な鉤爪がアリシアの左肩を切り裂く

アリシア「うっ!!ぐうっ……はっ!?」

どごっ!!

体勢を崩したアリシアに向かって怪物は左腕を振るう。

バキッ!!

怪物の拳が叩きつけられ骨が音を立てる。おそらく肋骨が何本か折れたのだろう。

そしてアリシアの華奢な体はいとも簡単に吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。

アリシア「かはっ!!!」

アリシアの口から血が溢れる。そのままアリシアは痛みで気を失ってしまった。

フレア「お姉様!!!」

怪物がアリシアにとどめを刺すために近づいていく・・

フレア「お姉様に手を出すな!!!」

フレアが怪物の顔面に殴りかかる。

フレアは怪力の持ち主でその華奢な体からは想像できないほどの力を持っていた、もしフレアのパンチを普通の人間が顔面に受ければ、首の骨が折れるか、顔の骨が陥没するほどの威力だ。

バシッ!!

フレアの拳が怪物の顔面に命中する…しかし・・・

フレア「うそ!?」

怪物はフレアのパンチを受けてもびくともしなかった。

怪物はフレアを左手で軽々と吹き飛ばす。

フレア「うぐっ!!!」

フレアが壁に叩きつけられる。

フレア「まっ・・・まだまだ…」

フレアが立ち上がる、その時。

「なんだなんだ!?」

「ひっ!怪物!!」

騒ぎを聞いてか寮に隠れていた生徒達が出てくる。

怪物はフレアを無視し出て来た生徒達の方に突進していく。

「ひっ!!こっちに来る!!!」

「逃げろ!!!逃げろ!!!」

生徒達は逃げようとするが怪物は物凄い速さで近づき生徒達を皆殺しにしていく。

何人かは窓から逃げ出す。逃げられなかったものは何らかの方法で応戦するが全く歯が立たない。

次々に生徒達が殺されていく。

フレア「やめて…もうやめてええええぇぇ!!!」

フレアは無我夢中で怪物に殴りかかった・・・

………

どれぐらい経っただろう。

アリシア「うっ…」

アリシアが意識を取り戻す。

意識を取り戻したアリシアが手を動かすとすぐに何かに触れた。

アリシアがそれを確認する。

アリシア「ひっ!」

それは生徒の生首だった。

アリシア「なっ何が起きたの?・・・!」

アリシアがあたりを見渡すとそこは血の海だった。

あたり一面に血が飛び散り、体の一部や臓器が転がっている。

アリシア「ふっフレア…フレアは…!?」

フレアを探すアリシアの目にボロボロになったフレアの姿と怪物が映る。

フレア「うっうう……」

怪物は今まさにフレアにとどめを刺そうとしていた。

アリシアはフレアを守ろうとするが体が動かない。

アリシア「なんで…動かないの……!!」

そうしているうちに怪物がフレアの目の前に立ち右腕を振り上げる。

アリシア「フレア!!逃げてっっ!!!」

フレア「っ…」

フレアは動けない。

アリシア「やめて…フレアには…手を出さないで…」

怪物はフレアに向けて右腕を振り下ろす。

アリシア「フレアッッ!!!」

フレア「ッ!!」

フレアは諦めて目を閉じこの後襲いかかってくる痛みを覚悟する。

しかしいくら経っても痛みは襲って来なかった。

フレア(私死んじゃったのかな?でも…妙に感覚がしっかりしてるような…)

フレアはゆっくりと目を開ける、そこには……

「なんとか…間に合ったな」

アリシア「!!っ……!」

フレア「おっ…」

アリシア・フレア「お兄様ッッッ!!!」

レオの姿があった。

レオは怪物の攻撃を刀で受け止めていた。

レオ「安心しろ…!もう…大丈夫だ!後は…俺に任せろ!!!ハアッ!!」

レオは怪物の腕を弾く。

怪物は後ろに飛び退き体勢を立て直す。

フレア「お兄様…気を付けて!」

レオ「ああ分かってる。さあ…かかってこい!今度は…俺が相手だ!!!」

レオが刀を怪物に向かって構える。

レオ「うおおおぉぉぉぉ!!!」

レオは怪物に向かって走り出す。

怪物もレオに向かって走り出す。

怪物が右腕を振り上げ巨大な爪を使ってレオに攻撃を仕掛ける。

レオ「!」

怪物の攻撃は早いが動きは単調であった。レオは瞬時に見切り回避する。

怪物の爪が空を切り、床に突き刺さる。

レオ「くらえ!!」

レオは刀で隙だらけの怪物に斬撃をくらわせていく。

怪物の体が切り裂かれ血が噴き出す、怪物は唸り声をあげ膝をつく。

レオ「まだまだ!!」

レオは怪物に更に斬りかかろうとするが。

レオ「なにっ!?」

怪物は右腕を床から引き抜きそのままの勢いで斬りかかろうとしたレオに向かって攻撃を仕掛ける。

レオ「くっ!!」

レオは刀を使って怪物の攻撃を防ごうとするがその腕を振るう力は凄まじく、レオは吹き飛ばされ、床に叩きつけられる。

レオ「ぐはっ!!」

アリシア「お兄様!!」

レオ「くっ………はっ!!」

レオの目に飛びかかってくる怪物の姿が映る。

レオ「っ!!!」

レオはすんでのところで横に転がり回避し距離をとって体勢を立て直そうとするが、怪物はその巨大には見合わぬ動きでレオに瞬時に近づく。

レオ「くそ!!」

レオは怪物に向かって刀を振るうが。

ガキンッ!

怪物はレオの攻撃を右腕の鉤爪を使って防ぐ、そしてそのままレオの刀を弾き飛ばした

レオ「しまった!!」

刀を弾かれ無防備になったレオに向かって怪物は左手を使って強力なパンチをレオに叩き込む。

レオはそれをモロにくらってしまう。

ミシミシミシ

レオの骨が嫌な音を立て、レオは吹き飛ばされる。

レオ「かはっ!!」

フレア「お兄様!!わっ私も…お兄様と一緒に…!」

フレアがレオに加勢しようとするが。

レオ「っ!来るな!フレア!」

レオがそれを静止する。

フレア「でもっ!!」

レオ「俺が…お前達を守る!!!だから…来るな!!!」

フレア「お兄様…」

レオは近くに落ちていた先程弾かれた自分の刀を拾い立ち上がる。

レオ「はぁはぁ…」

レオ(やはり強い…他の怪物とは桁違いだ…"あの力"を使わなければ確実にやられる!)

怪物が近づいてくる。

レオ(やるんだ!俺が…)

レオポケットから一つのタブレットケースを取り出す。

レオ(妹達を…)

そしてその中から一粒の赤い錠剤が出てくる

レオ(アリシアとフレアを…)

レオはそれをなんの躊躇もなくそれを

レオ(守るんだ!!!)

飲み込んだ…

ドクンッ!

レオ「!」

その瞬間!レオの目は更に赤く、真紅に染まりそして背中からは蝙蝠に似た巨大な翼が生えてくる!

レオは刀を構え、怪物を見据える。

レオ「来い!」

怪物はレオに向かって突進していき巨大な鉤爪で攻撃を仕掛けるが…

レオ「!」

怪物の攻撃は空を切った。

怪物が攻撃してくる直前レオは常人の数倍にも及ぶ速度で回避し後ろに回り込んでいた。

怪物はそれに気づきすぐさま体を逸らしながら右腕で薙ぎ払うが…

レオはそれを華麗に飛び跳ね回避する。

そして着地すると同時に床を蹴り一瞬で怪物との距離を縮める。

あまりのスピードに怪物は反応することができない。

レオ「ハァ!」

レオは怪物の体を切り付ける、刀は怪物の体を深く切り裂いた。

怪物は苦しげな唸り声をあげながらも左腕で反撃するがいとも簡単にレオはそれを回避する。

レオ「悪いがあまりこの力は長く使いたくないんだ…だから…次で終わりにするぞ!!!」

レオは刀を鞘にしまい、柄の部分に手を置き体の力を抜き全神経を集中させる。

怪物は怒りの咆哮を上げながらレオに突進していく、そして右腕を振り下ろそうとした刹那

レオ「そこだ!!!」

レオは刀を鞘から全力で抜き放ち、居合斬りを放って怪物の右腕を斬り飛ばした!

レオの居合斬りの速度は凄まじく、見ていたアリシアやフレアはそれを捉えることさえできなかった!

そしてその威力は斬撃波を生み出し後ろの壁に深い斬痕を残した!

レオ「これで…終わりだ!!!」

レオは刀を手の中で回転させ、そのまま怪物のあらわになっている巨大な心臓部を切り裂いた!

切り裂かれた心臓から大量の血が噴き出し、怪物は断末魔を上げながら地面に倒れ…絶命した。

レオ「終わったか…お前達大丈夫か!?」

アリシア「お兄様…ぐうっ!」

アリシアは立ちあがろうとするがあまりの激痛に顔を歪ませる。

レオはアリシアの側に急いで近づく。

レオ「アリシア、無理しなくていい」

レオはアリシアを慎重に抱え上げる、そしてレオはフレアの方に向かう。

レオ「フレア、大丈夫か?」

フレア「うん」

フレアの怪我はアリシアほど酷くなく自力で立ち上がれた。

フレア「お兄様…うぅ…うわぁぁぁん!」

フレアはレオに抱きつき泣き出す。

フレア「怖かった…こわかったよぉ…ひっく…」

レオ「フレア…もう大丈夫だ」

レオは左手でフレアの頭を撫でる。

フレア「うぅ…みんな…みんな死んじゃった…お友達も…みんな…!」

レオは何も言わずに左腕でフレアを抱き寄る。

フレアはレオの腕の中で嗚咽を出しながら泣き続ける。

そんなフレアの姿を見てアリシアも死んでいった遥達の姿を思い出す。

彼女達は死んだ…大切な友人であった遥にはもう会えない、和也や隼人、夏樹達も友人ではなかったものの、共に学生生活を送る仲間だった。そんな彼らにも…もう会うことはできない、彼女達との日々は…もう帰ってこない…あの時逃げださなければ…後悔してももう遅かった…

そんな事実がアリシアを突き刺す。

そんな様子を感じ取ってかレオがアリシアに声をかける。

レオ「アリシア…お前は大丈夫か?」

アリシア「!私は…わたしは…泣いたり…なんて…しない…」

アリシアは強がるが目には溢れんばかりの涙が浮かんでいた。

レオ「アリシア…我慢しなくていい…泣いたっていいんだ…辛い時は大声で泣いていい」

その言葉を聞いた瞬間アリシアの目からたくさんの涙が溢れ出す。

アリシア「ひっぅ…みんな…うぅ……うわぁ"ぁ"ぁ"ん!!!」

そしてアリシアもレオに抱きつき大声で泣き出す。

レオ「二人とも、辛かったな…本当に…よく頑張った」

レオは泣きじゃくる二人をただ強く抱きしめていた……

………

しばらくして二人が落ち着いたので、レオ達は寮から外に出た。

外に出て直ぐにこちらに向かって走ってくる複数の人影に気づく。

「おーい!!!」

レオ「あれは…」

一番最初に目に入ったのはリオンの姿だった。

リオン「おーい!!!レオー!!!」

レオ「リオン!」

リオンはレオ達に走って近づく。

リオン「レオ!はぁはぁ…やっと見つけたぜ!」

リオンに続いて他の者達もレオ達の元に集まってくる。

レオ「みんな…俺を探しに来てくれたのか?」

霊華「当たり前でしょ!一人で突っ走って!心配したんだから!」

霊華はかなり怒っているようだ。

レオ「すっすまん…」

レオが申し訳なさそうにする。

霊華「それにあんたがいなくなってから私達だって…」

光「まあまあ…怒るのは後にしましょ、今はそんな状況じゃなさそうだし」

光が怒り心頭といった様子の霊華をなだめる。

修斗「ご無事ですか?兄上様、お嬢様、妹様」

レオ「俺は大丈夫だ」

霊華「本当?なんか背中の部分びりびりに破けてるけど…」

レオ「いやこれは…大丈夫だ」

霊華「?」

レオはそのことをはぐらかした。

レオ「それよりもアリシアとフレアの怪我がひどい。すぐに穂乃果のところに連れて行ってやってくれ」

修斗「分かりました!直ぐにお運びいたします、リオンさん手伝ってください」

リオン「えっ?俺?」

修斗「あなたは走るのが早いですよね、今は急を要する事態です、1秒でも早くお嬢様達を運ばなければなりません」

リオン「ええー!?また走んのかよ!」

修斗「つべこべ言わずに手伝ってください!」

リオン「分かったよ…」

修斗「それではお嬢様…失礼します」

アリシア「え?」

修斗はアリシアをお姫様抱っこする。

アリシア「しゅ修斗!?いや…これは…///」

修斗「少しのご辛抱です、本来なら担架などで運ぶべきなのですが…今は直ぐに穂乃果さんの元にお届けしなければならないので、安心してくださいできる限り揺れないようにお運びいたしますので!」

アリシア「そっそうじゃなくて…///」

アリシアは顔を真っ赤にして何も言わなくなってしまった。

そんな様子のアリシアには気づかず修斗は彼女を抱えて走り出す。

フレア「いいな〜お姉様」

リオン「なんだ?ああやって持ってほしいのか?よっと!」

リオンも修斗同様にフレアを軽々とお姫様抱っこする。

リオン「全力で走るからちゃんと掴まっとけよ!」

フレア「えへへ~分かった!」

リオン「よし!行くぞ!」

リオンはそのまま全力で修斗の後を追って走って行った。

真鈴「……ちょっと羨ましいんだぜ…」

光「なんか言った?」

真鈴「べっ別になんでもないんだぜ!///」

光「あらそう…ふふっ」

真鈴「…///」

グレイ「…ごほん…それで一体ここで何があったんだい?ここまでくる間にかなりの怪物の死体があったみたいだし、あの二人以外はどうしたんだい?」

レオ「怪物はほとんど俺が道中で倒した奴らだ」

光「あの怪物達を一人で倒したの!?」

流石の光もこれには驚く、あの怪物には物理攻撃が効かなかった筈なのだ。一体どうやってレオはあの怪物を倒したのか…

光「あいつ物理攻撃はほとんど効かなかったはずなんだけど…どうやったの?」

レオ「奴の体の中心に核のようなものがあるんだ、それを攻撃すれば物理攻撃も奴に通用する」

光「なるほど、弱点があるのね」

レオ「ああ、それと巨大な鉤爪を持った巨人のような怪物とも戦ったな…奴がもしかしたらゼロの言っていた試作品なのかも知れない…」

そう言ったレオは考え込み何も言わなくなってしまう。

レオ(俺は奴を見たことがあるような気がする…だが…どこで奴を見たんだ?)

レオ「…」

霊華「どうしたの?レオ?」

何も言わないレオに霊華が話しかける。

レオ「いや…気にしないでくれ」

レオは自分があの怪物を見たことがあるかもしれないことは黙っておくことにした。

真鈴「それで他の奴らはどうなったんだぜ?」

レオ「他の者達は……」

しばらくレオはなんと言うべきか迷って何も言わなかったが、意を決したように口を開いた。

レオ「全員…死んだ」

皆「!?」

この言葉にレオ以外の全員が驚愕ししばらく言葉を失った。

最初に口を開いたのは真鈴だった。

真鈴「じょ冗談だよな…全員死んだって…」

レオ「もしかしたら何人かは逃げ延びているかも知れない…だがほとんどが死んでいたのは確かだ…」

真鈴「嘘だ!だってここにいた奴らだってそれなりに実力を持ってたんだ!それが死んじまうなんてそんなこと…」

レオ「この惨状を見れば分かるだろ!信じたくないのは分かる!だが…これが事実なんだ…」

そう言われて改めて辺りを見回すと怪物の死体以外にも人の死体や体の一部、ましてや骨さえ転がっていた…おそらくあのゼリー状の怪物に溶かされた者の残骸だろう。

どれだけの惨状かは一目瞭然だった。

真鈴「そん…な…」

真鈴はその場にへたり込んでしまった、他の者達も今だに信じられないと言った様子だ…

皆心のどこかではこう思っていたのだ(能力や才能を持った自分達が怪物に殺される訳がない…)と

だが現実は違ったいくら能力や才能があろうと怪物達には最も簡単に殺されてしまうのだと実感した。レオがもしもここに向かわなかったら、少しでも遅かったらあの二人も怪物に殺されていて生存者はきっと誰一人いなかったのだろう。

しばらくの間誰一人口を開かなかった。

どれぐらい経ったのだろうか遂に一人が口を開いた。

レオ「…行こう」

光「え?」

レオ「彼らから必要なものを貰っていく」

レオの言葉にまたも驚かされる。

直ぐに霊華がレオに食ってかかる。

霊華「なっ!本気で言ってるの!レオ!死んだ人達のものをとっていくなんてそんなこと!」

レオ「分かってる!」

霊華「!じゃあ…!」

レオ「だがな!俺達が生きていく上では必要なものなんだ!武器も弾も食料も物資は全て限られているんだ!綺麗事は言っていられない…」

霊華「でも…」

レオ「分かっている、俺もそこまで落ちてはいない、貰っていくものはあくまで俺達が生きていく上で必要最低限のものだけだ、それ以外は置いていく」

霊華「…分かった…」

霊華はそれ以上何も言わなかった。

レオ「皆もそれでいいな?」

全員が頷く。

レオ「それじゃあ…行こう」

そうしてレオ達は必要なものを集めていく。

寮に入ると巨大な怪物の死体と何人もの死体があった、寮の中の光景は外に比べ更に凄惨なものであり、真鈴はその光景を見るなり嘔吐してしまった。

仕方なく寮の中はレオとグレイ、霊華が必要なものを集めることにし光は外で真鈴の介抱をすることにした。

しばらくして修斗とリオンがレオ達の元に戻って来たため事情を説明し、二人もレオ達を手伝うことにした。

真鈴「和也…」

真鈴は光に介抱してもらったことである程度回復し、外に何かないか光と探していた。その途中で和也の死体を見つけた。

真鈴「もう…お前と射撃対決ができないなんて信じられないんだぜ…お前は私の…最高のライバルだったんだぜ…っ!」

和也との勝負の日々を思い出し、真鈴の目から涙が溢れる。

真鈴「……泣いてたって仕方がないんだぜ」

真鈴は涙を袖で拭う。

真鈴「お前の相棒…借りてくぜ…全部終わったら返しにくるんだぜ、だから…」

真鈴はそう言って近くにあった和也の使っていたサブマシンガンを拾う。

真鈴「こいつを持っていくこと…許して欲しいんだぜ」

………

光は真鈴を介抱した後何か使えるものがないか探していた、半透明の怪物の近くに人骨と何か光るものが見つかる。

光「これって…」

それはネックレスであった、所有者と一緒に怪物に取り込まれたのかところどころが溶けていた。そして光はそのネックレスに見覚えがあった。

光「夏樹…あんたなのね」

光は彼女のことを知っていた、しかしそれは…

彼女の黒い噂をよく耳にするからである。彼女は男達を誘惑して財布替わりにしたり、奴隷のように扱っているなどのことだ。

このネックレスも騙した男に買わせたものなのだろう。

光「バチが当たったのよ、あんたは…自業自得…てやつなのかしらね…」

光は少し笑いながら言ったが直ぐに悲しげな顔へと戻った。

光「でも…いくらなんでも、こんな最後は…あんまりだわ…」

光はしばらく口を開かなかった、それは光の彼女への同情の表れなのだろう。

光「……まあ…いい勉強にはなったんじゃない?あんたが天国に行けるか分からないけど…せめて…来世はいい人生を送れることを祈っておくわ、私がこんなこと言うなんて滅多にないんだから…感謝しなさいよね?」

光は頭蓋骨の近くにネックレスを置いた。

……

寮の入り口で修斗はあるものに気づく。

修斗「この方は…」

修斗が気づいたのは一つの女性の死体だった、重い物で上から押し潰されたように死んでいて見るも無惨な姿だった。

リオン「どうしたんだよ?修斗?その死体がどうかしたのかよ?」

修斗「この方は…おそらく遥様なのでしょう…」

修斗は死体の服装や外見からそれが遥であったと推測した。

リオン「遥?そいつって確か…」

修斗「ええ、お嬢様のご友人の方です…」

リオン「マジかよ…アリシアはこのこと知ってんのか?」

修斗「恐らくはご存知の筈です、お嬢様もここにいらした訳ですから」

リオン「こいつも怪物に殺されちまったのか…クソッ!」

リオンがこぶしを壁に打ち付ける。

修斗「……おや?これは…」

修斗は遥の死体の直ぐそばにあったあるものに気づいた

リオン「なんなんだ?それ」

修斗「どうやら押花のしおりのようです」

それは綺麗に作られた押花のしおりだった、誰かにプレゼントするつもりだったのだろうか、包装もされていたが血で汚れてしまっていた、幸い中身は無事のようだ

修斗「誰かに渡すつもりだったのでしょうか…一緒に手紙もありますね」

リオン「なんて書いてあるんだ?」

血で汚れてしまっていてほとんど読めなかったが

「アリシアちゃんへ

これからもずっと親友でいてね。」

それだけは解読することができた。

修斗「………」

リオン「……」

二人は何も言わなかった、言葉が出なかったのだ。

リオン「それ…どうするんだ?」

修斗「お嬢様様にお届けします、もともとこれは遥様からお嬢様へのプレゼントだったようなので」

リオン「そうか…その…あー…アリシアのそばにいてやれよ」

リオンは珍しく気を使った発言をする。

修斗「貴方に言われなくても分かっています」

リオン「そうだったな…」

修斗(遥様、これは必ずお嬢様にお渡しします、なのでどうか…安らかにお眠りください)

………

レオは寮内での探索は終えて外に出ていた、少し離れたところに頭部のない死体を見つけた。

レオは服装と持っている刀からそれが隼人だと分かった。

レオ「隼人…お前も殺されてしまったんだな…」

レオは隼人の死体の近くにかがみ込むそして…

力一杯地面を殴りつけた。

レオ「くそっ!どうしてだ!?どうしてお前達が殺されなければならなかったんだ!!どうして!!」

レオの問いに答えるものは誰もいない…

レオ「…」

レオは隼人の胸の部分に彼の持っていた刀を置いた。

レオ「…約束する、俺は必ずお前達の仇を取って見せる!必ずだ!こんなことをした奴には…必ず代価を支払わせる!俺が…俺が・・・・・・“すべて終わらせて見せる”」

………

しばらくして寮内外での探索が終わり皆が寮の入り口付近に集まった。

光「必要そうなものは大体集めたわ…」

皆の手元には食料や水、各々が使える武器や弾薬などがあった。

リオン「結構…貰ってきちまったな…」

リオンは自分達が持ってきたものを見ながら言う。

やはり死人のものをとっていくと言うことはいくら自分達が生きる必要があるとしても後ろめたいことなのだ。

修斗「仕方ありません、どれも私達が生き残るには必要なものですから…」

修斗はリオンにそう言うが、リオンに向けてと言うよりも自分にいい聞かせているように感じられた。

レオ「みんな、よくやってくれたな…ありがとう」

グレイ「それで…これからどうするんだい?寮に戻るのかい?」

レオ「いや、もう一つやりたいことがあるんだ。」

光「まだ何かするの?」

レオ「彼らの…墓を作ってやりたいんだ」

グレイ「墓を?」

レオ「ああ、彼らをあのままにしておくのはあまりにも可哀想だ、だからせめて彼らの墓を作って埋めてやるぐらいはしたいんだ」

光「なるほどね…」

レオ「だがこれはあくまで俺の個人的な意見だ、だからみんなの意見を聞きたい」

霊華「私は賛成よ」

霊華が真っ先に答えた。

霊華「これだけの物を貰っていくの、それぐらいのことをしてあげないと、彼らに恨まれちゃうわ」

レオ「そうか、他のみんなは?」

真鈴「私も賛成だぜ!せめて後輩に…そのぐらいのことはしてやりたいんだぜ!」

リオン「俺も賛成だぜ!」

グレイ「僕もそれがいいと思うよ」

光「私もグレイと同じくよ」

他の者達も全員レオの意見に賛成のようだ。

レオ「みんな…ありがとな」

そうしてレオ達は寮の中にある用具室からいくつかのスコップを持ってきて墓作りを始めた。

修斗「…兄上様」

レオ「?どうした修斗?」

修斗「実は…」

リオン「ん?あいつら何話してんだ?」

リオンが二人が何か話しているのに気付いた。

真鈴「さあ?だけどだいぶ大事な話っぽいから邪魔しない方がいいんだぜ」

真鈴は二人の表情から真剣な話をしていることを察しリオンが水を差さないようにした。

レオ「…分かった、だが気をつけろよ?」

修斗「承知しております。では」

二人の会話は終わったようで、修斗はどこかに走って行ってしまった。

リオン「あっ!おいレオ!修斗の奴どこ行くんだよ?」

レオ「修斗は別行動だ」

リオン「別行動?何するんだよ?」

レオ「少し確認を…な。あいつなら心配しなくても大丈夫だ。それよりも俺たちはみんなの墓を作るぞ」

レオは適当にはぐらかして行ってしまった。

リオン「え?あっ!おい!たくっ!なんなんだよ…」

真鈴「まあ…あいつらもあいつらなりの考えがあっての行動だからそこまで気にしなくてもいいと思うんだぜ」

リオン「そういうもんか?」

二人は深くは考えず、墓づくりに専念することにした。

数十人分の墓を作るのは時間がかかり夕方までかかったがなんとか簡易的な墓が完成した。

そこに生徒達の死体と彼らの荷物などを共に埋めた。

光「なんとか終わったわね…」

真鈴「もうヘトヘトだぜ」

度重なる戦闘や力仕事などで全員疲れ果てていた、ただ疲れているのは肉体だけではなく精神的にもではあった。

グレイ「こう見ると、沢山の後輩達が怪物に殺されたんだね…」

光「そうね…」

「………」

多くの墓の前に誰しもが沈黙した。

リオン「他の奴らは大丈夫なのかな?」

光「さあ…まあ…でもきっと大丈夫よ!今はそう考えるしかないわ…」

リオン「…そうだな」

レオ「…」

霊華「レオ?」

レオは何も言わず前に歩いて行き、墓の前に立った。

レオ「みんな…こんなことしかできなくてすまないっ!………約束する、必ず…お前達の仇は打ってみせる!だから…どうか安らかに眠ってくれ…」

レオはそう言って目を閉じ手を合わせた。

その場にいる他の者達もレオと同じように目を閉じ手を合わせる、日が沈みかけ辺りが暗くなるまでそうしていた…

ふと霊華はレオの方を見た…そして…

霊華(・・・え?)

自身の目を疑った…

レオの近くに立っていた霊華にはレオの表情はよく見えた…死者のために黙祷をささげるレオの表情は………

“笑っていた”

ドクンッ!!!

霊華の心臓が跳ねる。

どうして?なぜ?疑問が霊華の頭を一瞬で埋め尽くし、レオを見るのが怖くなり目をそらした。

霊華(わ…笑ってた?レオが?なっなんで?いっいやそんなこと・・・)

“ありえない”レオが死人を・・・ましてや同じ学校の後輩の死を笑うなんて…レオに限ってそんなことはありえない…きっと見間違いに違いない…

霊華は頭ではそう分かっていた…だが・・・それでも・・・もしも・・・もしも見間違いじゃなかったら?本当にレオが笑っていたら?それがレオの・・・本性だったら?

霊華はレオの・・・自分の知らないレオの本性を知ってしまうかもしれない…そんな恐怖からかレオの方を見ることができなかった。

だが・・・

霊華(・・・目をそらしたままでいいの?何も知らないままでいいの?もしもあれが本当にレオの本性だったら…それから目をそらしたままで…自分を偽ったままで…彼のことを好きでいられるの?…)

霊華は考える。

レオを見ることで知らなくてもいいことを知ってしまう恐怖と・・・それでも自分を偽らず真実を知り向き合うことを天秤にかけた…

そして…

霊華(私は…私は知りたい!レオのことを!もしもそれで自分の知りたくなかった真実を知ってしまうとしても!それに私は…信じたい!レオのことを・・・彼がそんな人じゃないって、そう信じたい!)

霊華は意を決してレオの方を見た…

レオの表情は…笑ってなどいなかった…悲しみと怒りが混ざったような複雑な表情だった。

霊華はほっとした・・・それと同時に考えすぎだとも感じた。

霊華(良かった…今思えばレオに限ってそんなわけないわよね。いろんなことがあって少し神経質になってたのね…)

霊華は見間違いだったことに安堵し、それ以上深くは考えなかった…

レオ「・・・・・・・・・ふふ」

・・・

レオが手を合わせるのをやめこちらに振り返る。

レオ「みんな、手伝ってくれてありがとう、そろそろ帰ろう、穂乃果達も心配している筈だ」

全員が頷き寮へと帰っていく、その間誰一人口を開く者はいなかった。一体これからどうなってしまうのか、自分達は生き残れるのかそんな不安を抱きながら皆寮へと戻っていった。

………

寮に帰ると直ぐに田中と佐藤、それとエレンが駆け寄ってきた。

田中「遅かったじゃねえか!怪物にやられちまったんじゃないかって心配したんだぜ!」

レオ「すまなかった」

佐藤「アリシア君とフレア君は大怪我をしていたし、修斗君に聞こうと思ったんだけど詳しいことは会長達から聞いてくれって言うし…一体何があったんだい?」

どうやら修斗はすでに寮に帰ってきてはいるようだった。しかし何があったかは話していないようだ。

レオ「それは…」

レオ達は今まであったことを全て話した。

エレン「うっ嘘…そんな…」

あまりの衝撃の事実にエレン達三人は言葉を失う。

レオ「信じられないのは分かる…俺も本当は夢なんじゃないかと思うぐらいだ…だがこれが現実なんだ…」

エレン「そんな…」

田中「やっぱり俺達も怪物に殺されちまうんじゃ…」

田中が怯えた声で言う。

レオ「そんなことはない!力を合わせれば必ず生き残れる!そう…必ず……」

レオはそう言うが声に力はなかった。

それもそのはずだ、そんな保証はどこにもなかった、教師達が殺され、生徒達も怪物になす術なく殺された。本当に生き残れるのだろうか?そんな不安が空気を重くし誰もが沈黙したその時。

グゥぅぅぅ〜

突如として音が響いた。

リオン「やべ!えっと…ははっ!腹減っちまった…ははは……」

どうやらリオンの腹の音のようだ。

光「あんた…よくあんなことがあってお腹が空くわね…」

リオン「しょうがねえだろ!朝からなんも食ってねえんだし!」

レオ「そういえばそうだったな」

真鈴「意識したら急に腹が減ってきたんだぜ」

レオ「よし、話は後にして食事にしよう!少しは気がまぎれる筈だ」

光「そうね、そうしましょう」

リオンの緊張感の無さが功を奏したのか重苦しい空気は少し軽くなった。

皆が食事の準備をする…と言ってもあるのは缶詰などだけだが。

リオン「こんだけしかねえのか?」

修斗「仕方ありません、食料にも限りがありますから、我慢してください」

リオン「しょうがねえか…」

光「まあでも確かに少ないわね…」

正直にいえばかなり量は少なくとてもじゃないが満腹にはなれそうになかった。

グレイ「海で魚を取るなりすればもう少したべられるんだけどね…」

光「明日から頑張るしかないわね」

レオ「そうだな…とりあえず今はこれを食べよう」

そうして皆食事を始める。

リオン「そういえば修斗、お前別行動してたみたいだけど何してたんだよ?」

リオンが修斗に別行動の理由を尋ねる。

修斗「少し確認したいことがあっただけです」

真鈴「レオの奴もそういってたけど…確認したいこと・・・てなんなんだぜ?」

修斗「・・・まだ確証が得られたわけではないので明言は避けておきます」

修斗はそう言うとそれ以上は何も教えてはくれなかった。

リオンと真鈴は何も教えてくれない修斗に不満は覚えたものの、口が堅い彼にこれ以上何を聞いても答えてはくれないと理解していたためそれ以上質問はしなかった。

食事は直ぐに終わった、食事が終わるとどっと疲れが押し寄せてきた。

光「はぁ…お風呂に入りたいわね…」

真鈴「せめてシャワーぐらいは浴びたいんだぜな…」

温泉は何が入っているか分からなないため使用できず、シャワーは出ないため体を洗うことさえできなかった。

光「!」ブルッ…

光が急にそわそわし始める。

光「…ねっねえ真鈴?」

真鈴「なんだぜ?」

光「その…トイレってどうすればいいの?」

どうやら光は催しているようだ。

真鈴「そういえば…トイレってたしか使えなかったから…どうすればいいか私も分からないんだぜ…」

光「そんな…んっ!」

真鈴「けっこうやばいのか?」

光「うっうん…」

その時ちょうどロザリアが通りかかった。

真鈴「あれロザリア、お前体調は大丈夫なのかぜ?」

ロザリア「真鈴さん、はい、もう大丈夫ですよ」

ロザリアはにこっと笑って見せる

真鈴「そりゃ良かったんだぜ!」

光「ねっねえロザリア!あんたずっとここにいたのよね?トイレて…どうしたの?」

ロザリア「おトイレですか?そっその…えっと…言わなきゃ…だめですか…」

光「お願いだから教えて!」

光はかなり切羽詰まっていた。

ロザリア「その…お外で…

ロザリアはもごもごしながらとてつもなく小さい声でボソッと何か言った。もちろん何と言ったか光達には聞き取れなかった

光「え?なんて?けっ結構やばいから早く教えてほしいのだけど…」

ロザリア「おっ…お外でしたんですっ!ううっ!///」

二人「!?」

ロザリアは顔を真っ赤にして涙目になりながら言う。

光「そっ外…で?」

ロザリア「わっ私だってしたくなかったんですよ!でもおトイレは使えないし、それに我慢もできなくて…ううっ!///」

ロザリアはそう言って顔を手でおおって泣き出してしまう。

真鈴「ああ!ロザリア!聞いて悪かった!こんな状況じゃしかたなかったんだぜ!だから泣かないでくれなんだぜ!」

光(うっうそ…そんな外でなんて…でも…もう…)

光「もう限界!!!」

真鈴「あっ!ちょ!光!」

光は走って外に出て行ってしまった

真鈴「いっいっちゃたんだぜ…はぁどうすれば…ん?」

その時誰かが真鈴の肩に手を置いた、振り返ると…

美春「お前…なにロザリアを泣かせてるんですか?」

凄まじい般若のような形相をした美春がいた。

真鈴「ひっ!あっ………」チョロロ…

真鈴は下半身が温かくなっていくのを感じた…

・・・・・・

レオ「夜も更けてきたな…今日はもう寝よう」

田中「なっなあ?こんな怪物どももいる中寝て大丈夫なのかよ。もし寝てる間に怪物なんか来たら…」

グレイ「確かに危険だね…」

レオ「1時間ごとに交代で見張りをしよう」

レオが提案する。

霊華「今はそれしかないわね、いいと思うわ」

修斗「私も賛成です」

他の者達も交代で見張りをすることに賛成のようだ。

佐藤「順番はどう決めるんだい?」

光「順番決めにいいもの持ってるわよ、ちょっと待ってて」

光は自室に戻りあるものをとってきた。

レオ「それは王様ゲームの時の…」

光が持ってきたのは王様ゲームの時に使用したくじの棒だった。

光「そう!これなら平等でしょ!」

レオ「確かにな…だが王様は何番目にするんだ?」

光「ん~まあ王様引いた奴は一番最初ってことにしましょ!」

グレイ「それややこしくならないかい?」

光「大丈夫よ!それに王様は国民をしっかり守る義務もあるんだから!早く決めましょ!あっそれと時間的に9番以降の奴は当たりで見張りはしないってことで」

レオ「まあ…とりあえずそれで決めよう」

田中「絶対に9番以降を引く!」

こうして一人一人がくじを引いていく。

レオ「2番か…」

霊華「5番…っ!///」

霊華はあの日のことを思い出して顔が真っ赤になる。

光「私は3番か…残念。王様だったらもう一回ポッキーゲームを命令できたのに…」

霊華「あんたが王様じゃなくてほんとに良かったわ!///」

田中「うげ・・・王様・・・なんでこんな時ばっかり・・・」

田中がうなだれる。

佐藤「日頃の行いだね」

修斗「8番・・・最後ですか。そういえば真鈴さんは?」

光「真鈴は…ちょっと色々あっていないから私が代わりに引いておくわ」

真鈴は今この場にいないため光が真鈴の分を引くことにした。

レオ「穂乃果は…彼女は皆の治療やメンタルケアで疲れてるはずだ。彼女に見張りをさせるのはやめておこう」

医学の知識を持っていて治療などを行える穂乃果は今の状況ではかなり重要な存在であり一番体力も使うため、できるだけ休息をとってもらうために見張りはさせないことにした。

こうして見張りの順番も決まり今日は全員就寝することにし、各自が部屋に戻っていく。

皆が部屋に戻る途中でレオは光に呼び止められる。

光「ちょっといいかしら?レオ」

レオ「どうした?」

光「あの時のあんたの服の背中の破れ方…怪物にやられたわけじゃないでしょ、怪我もしてないし」

光の言うようにレオの服は背中の部分はあの時不自然に破れていた。

光「あの力を使ったの?」

レオ「ああ、使わざるおえなかった」

光「誰かに見られたりは?」

レオ「アリシアとフレア以外には見られていない、大丈夫だ」

彼の力のことは光達一部の人間しか知っていない。そしてこのことは他の者達にはバレてはいけないのだ。

光「それなら良かったわ、誰かに見られたりしたら大変だもの、呼び止めて悪かったわね」

レオ「いや大丈夫だ。そうだ俺も聞きたいことがあったんだ」

光「どうしたの?」

レオ「エントランスでなにかあったのか?さっき行こうとしたらエレンにすごい勢いで止められたんだが…」

光「えっ!いや別にたっ大したことじゃなかったわよ、ちょちょっと真鈴が体調を崩しただけよ!」

レオ「大丈夫なのか?」

光「えっええ!すっストレスかしらね、穂乃果がいたから大丈夫よ!」

レオ「そうか…確かに今日は衝撃的なことばかりだったからな無理もない」

光「そっそうよ、無理もないわ」

レオ「ああそうだもう一つ気になったんだが…光、さっきも着替えたのにまた着替えたのか?」

光「え!?あ…いやこれは…」

レオ「こんな状況だ、服も洗濯できないからできる限り着まわした方がいいと思うんだが…」

光は寮に帰ってきた際に服を着替えていたはずなのに再び別の服になっていた。

光「べっ別に私が何を着ようと私の勝手でしょ!!!」

光が声を荒げる。

レオ「!?そっそうか…いやすまないデリカシーに欠けた質問だった…」

レオは光の剣幕に押されそれ以上は何も聞かなかった。

光「その通りよ全く!私はもう寝るからね!お休み!」

レオ「おっお休み…」

光は部屋に戻って行った。

レオ「…」

レオ(怒らせてしまったようだ…やはりこんな状況だ。皆気が立っているのだな…発言には気を付けなければ)

レオは独り反省会をしていた。

その後レオは部屋に戻るのではなく、ロザリアの様子を見に行った。

レオがロザリアの部屋の扉をノックする。

レオ「ロザリア?入ってもいいか?」

直ぐに扉が開き、ロザリアが出てくる。

ロザリア「お兄様?大丈夫ですよ」

レオ「そうか…それじゃあ失礼するぞ」

レオが部屋に入る。

ロザリア「えっと…どうしたんですか?」

レオ「調子はどうか聞きたくてな、気分は良くなったか?」

ロザリア「はい、穂乃果さんのおかげですっかり良くなりました」

ロザリアは笑顔でそう答えるがレオにはロザリアが無理に笑顔を作っていることが分かった。

レオ「ロザリア…無理しなくていい、何かあるんだったら言ってくれ」

ロザリア「あはは…やっぱりお兄様にはバレちゃいましたか…」

ロザリアは少し笑うが直ぐに表情が暗くなる。

ロザリア「お兄様…私…怖いんです…」

ロザリアがゆっくりと口を開く。

ロザリア「急におかしなゲームが始まって…先生達が殺されて…得体の知れない怪物も出てきて…その怪物に二年生や一年生の人達が殺されて…アリシアやフレアもあんな大怪我して…」

ロザリア震えながら話し続ける。

ロザリア「次は私達の誰かが死んじゃうんじゃないかって…もしかしたら…みんな怪物に殺されちゃうんじゃないかって…怖がってちゃ駄目って分かってても…そんな事を考えると…震えが…止まらなくて…!」

ロザリアは怯えていた、度重なる現実味のない出来事に…しかし本当に怯えている理由は大切な人達を失ってしまうかもしれないということから来ているのだろう…自分が死んでしまうことよりも大切な人達を失う方が怖い…それは優しいロザリアらしい考え方だとレオは感じた。

レオ「ロザリア…」

レオは震えるロザリアにそっと近づきそして…

優しく抱きしめた。

ロザリア「お兄…様…」

レオ「大丈夫だロザリア、俺がお前を守る、アリシアもフレアも他のみんなも…絶対に守ってみせる、誰も死なせたりなんかしない、だから大丈夫だ」

レオが優しくロザリアの頭を撫でる。

ロザリア「お兄様…!うゔ…!」

ロザリアはレオの腕の中で泣いた、本当は恐怖で直ぐにでも泣き出してしまいたかったのだろう、でもそれを耐えていたのだ、溜まっていたものを吐き出すようにロザリアは泣いた

レオはロザリアが泣き止むまで優しく頭を撫で続けた…

そんな一部始終を開いたドアの隙間から見ているものもいた。

霊華「レオ…」

霊華は複雑な気持ちだった、レオのロザリアに対する態度は兄としては素晴らしいものなのだろう、ただ霊華にはそれが兄としてだけではないように感じてしまった…

(もしかしたらレオはロザリアに気があるのではないか?)そう考えてしまったのだ。

レオとロザリアは血が繋がっていない義兄妹だ、本当の兄妹ではない…だから…レオがロザリアに気があってもおかしくないのだ…

霊華(そうだったら私の気持ちは…)

届かない…そう霊華は考えてしまった。

霊華はしばらくその様子を見たあとバレないように部屋に戻った…霊華の足取りは重かった…

それから少ししてロザリアは泣き止んだ。

レオ「落ち着いたか?」

ロザリア「はい、もう大丈夫です!」

今度は心配なさそうな様子だ。

ロザリア「あの…お兄様…ありがとうございます、私…」

レオ「気にしなくていい、また辛い時は言ってくれ、できる限りは力になる」

ロザリア「分かりました」

レオ「それじゃあ今日は寝よう、明日も何があるか分からない。できる限り体力は回復しておかないとな」

ロザリア「そうですね、それじゃあお兄様、お休みなさい」

レオ「ああ、お休み、ロザリア」

レオはロザリアの部屋を後にし、自分の部屋に戻っていった。

……

修斗はアリシアの部屋に来ていた…理由は二つある。一つはレオにアリシアの側にいるよう頼まれたからだ。二つ目は寮で拾ったある物を渡すためだ。

修斗「お嬢様」

アリシア「どうしたの?」

修斗「…」

修斗は少し迷ったが意を決してアリシアにある物を渡した。

アリシア「これは?」

それは寮で見つけた遥からアリシア宛のプレゼントだ。

修斗「遥様からお嬢様宛のもののようです」

アリシア「!遥の!」

アリシアは急いで手紙を開ける。

血で汚れた手紙はほとんど解読できないが、アリシアへの感謝の言葉しか読めなかった

アリシアの手紙を持つ手は震え、手紙に涙が落ちる。

アリシア「遥…」

遥との思い出がフラッシュバックのようにアリシアの脳内に浮かびループする。

アリシアの心を遥を助けられるはずだったのに助けられなかったと言う罪悪感が支配する。

アリシア「私…ごめん…ごめんなさい…私・・・あなたの親友なのに・・・それなのに・・・あなたを見捨てて・・・本当に最低で・・・私・・・」

そこまで言うとアリシアはまた大声で泣き始めてしまった。

ただ謝罪の言葉を口にしながらむせび泣くアリシアに対して修斗はただ…見ていることしかできなかった……

…………

レオが部屋に戻ってしばらくすると不意にドアがノックされた。

レオ「誰だ?入っていいぞ」

ドアが開き顔を出したのは・・・妹のフレアだった。

レオ「フレア?怪我は大丈夫なのか?」

フレア「うん」

レオ「どうしたんだ?」

フレア「その…」

フレアは少し頬を赤らめ言葉に詰まるが、少しした後口を開く。

フレア「こっ…怖くて…眠れないの、だから…一緒に寝てもいい?」

レオ「もちろん構わないぞ」

フレア「本当!やったー!」

フレアは嬉しそうにベッドに入ってくる。

フレア「えへへ」

レオ「全く…」

レオも満更ではなさそうだった。

フレア「ねえお兄様?」

レオ「どうした?」

フレア「頭なでなでして」

レオ「え!?それは…」

躊躇するレオに対してフレアは…

フレア「むー!してくれないと私寝ないよ!」

駄々をこねる。

レオ「はぁ…全くフレアは仕方ないな」

レオはフレアの頭を撫で始める。

フレア「えへへ〜」

フレア(お兄様の手…あったかいな〜)

フレアはその後直ぐに眠気が襲ってきてスヤスヤと眠ってしまった。

レオ(寝てくれたな…よかった…)

レオはフレアの寝顔を見つめる。

レオ(必ず守ってみせる…もう二度と悲しませたりなんてしない…絶対にだ!)

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