第2話 名前が決まったでち
失神していた、らしい。
巨人のような最近、気になっていた鈴木ルカの顔を見て。
体の上には、ハムスターの床材のおがくずが、こんもりかけられている。
屈辱的だが、意外に暖かい。くそっ。もぞもぞ起きると体は自然に、自動に、勝手に、砂場であろう場所に行き、俺はクルクルまわり風呂を終了。
意外にサッパリする。
「あ~ハムちゃん、起きたの?さっきはごめんごめん!あはは!」
会社にいる後輩、鈴木ルカ、25歳ではない。鈴木ルカではあるが、風呂上がりに学生時代の穴のあいたジャージを着て髪を肩にかけたタオルでガシガシふき、片手には缶ビールを握って部屋に入ってきた。
「佐々木も、タイミング悪いよね~。昇進の夜に亡くなるなんて。かわいそう」
佐々木?会社では佐々木先輩♡呼びだった。牢屋に入れられた囚人のように俺はケージギリギリまで近くに行った。
かわいそうと言っているわりには、ちゃぶ台にのせたビールをグビグビ飲む。
何だ、この女。正体がわかったのがハムスターに転生してからとは、自分が情けない。
「そう言えば、ハムちゃんの名前を決めてなかったなあ~」
天井を仰ぎ、先輩だった俺すら秒で過去の人間らしい。
「そうだ!佐々木を偲んで、サムは?」
は?と思った所で、鈴木は納得いったようにひとりごちだ。
「佐々木進の最初のさ、最後のむ、でサム!けっこうイケメンのハムちゃんだしね~!」
ざつ!ハムスターの名前が人間の頃から雑につけられている気はしていたが、ここまで雑とは。
偲んでねぇし、むしろ冒涜だし。
鈴木は、ふすまから毛布だけとりだして、ご満悦の顔でイビキをかいて眠り始める。
俺の体はウズウズして、嫌でも回し車に向かう。
大音量のイビキの中を進みもしない同じ場所で、教えられもせずに俺は走り続けた。
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