日常を返せ!

考作慎吾

1章

不満

 明日から面倒な学校が始まる。

 休み明けの学校はどうしてこんなに気分が沈むのか? わたしは自室のベッドに寝転びながらスマホに手を伸ばし、あと数分で日付が変わる事実に舌打ちをしたくなる。今日は友人のあかねと桃香で買い物をして楽しかった分、余計にそう感じてしまう。

 学校なんて数時間拘束されて、興味のない先生の話と黒板に書かれたチョークの跡をノートに書き写す作業だ。そんな面白味のない作業、つまらなくてしかたがない。

 それならいっそ、その時間を友人たちと好きな場所で好きな事をする方が断然楽しいし、人生経験になると思う。

 SNSに投稿しているキラキラした人たちみたいに面白おかしく毎日を過ごしたいが、わたしはただの平凡な家庭で生まれた女子高生。わたしの願いを口に出したところで、

「何を言っているの、明良あきら。馬鹿な事を言っていないで、勉強しなさい」

「そうだ。来年は受験生なんだから、志望の大学に行けるようにしないと」と両親に小言を言われるのがオチだ。

 想像だけでも深いため息を吐きたくなる。せめて学校でも何か面白い事があれば、勉強のやる気が出るのに。

 例えばお隣に家族が越してきて、わたしと同じくらいのイケメンが挨拶しに訪ねてくる。年が近いから聞いてみると同い年で、翌日は同じクラスに転校して、二人同時に驚いて指を差す。顔見知りということで、先生にイケメンの面倒を見るよう言われて、わたしも好みだから優しく接していくと、イケメンもわたしのことを好きな態度を見せて……。そんなドラマのような恋をしたら楽しいだろうなぁ、と妄想する。

 これも両親からすれば、馬鹿な事になるわけなのだが。

 ここまで劇的じゃなくても、せめて平凡な日常を変える面白いことが起きればいいのに……。

 わたしはお気に入りのナイトウェアを着て慣れ親しんだベッドに潜り込んで目を閉じた。

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