X(旧twitter)放流小説(2023年)

須堂さくら

1月

『キズ』

棘をひっかけた心から血が滲み始めたので、ばんそうこうを貼り付けた。

じんわりと血が滲んでくるのをしばらく眺めた後顔を上げる。

これくらいなら血もすぐ止まるだろうから、放っておいても平気だろう。

ひりひりとした痛みは無視をすることにして、私はまた、歩き始めた。

道の先は、まだ見えない。

(2023/01/07)


『旅』

掌の内側に広がった川を下って、命を運ぶ旅に出る。

一人が二人になって、三人になって、それからもっと増えていっても、最後の最後はやっぱり一人。

やったことも、やらなかったことも、無駄なことなんて何一つなくて。

たった一人、たどり着いた先の景色が見たくて、ずっとずっと、旅をしている。

(2023/01/14)


『昨日を畳む』

昨日を畳んで引き出しに片づける。何でもない日だったから灰色だ。

最近はずっとそうだから、引き出しの中は灰色のグラデーション。

数か月前の辺りの赤色は、誕生日を祝ってもらった日だったか。

引き出しを閉じて今日を開く。何色に染まるだろう。多分今日も灰色だけど、平穏が続くのも悪くないな。

(2023/01/20)


『お別れ』

今日と同じ明日が当たり前に来る訳がないことを、知ってるようで知らなかった。昨日また明日ねと別れた友達と今日おはようって言い合えないかもしれないことを、分かってるようで分かってなかった。

一緒に行こうねって人気のカフェ、約束はもう果たせないんだ。

今日はうちに帰っても制服を脱げない。

(2023/01/25)

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