17話:「―セクハラ・エンゲージ 美少女TSおやぢを巡る、戦闘機メカ娘の戦い―」

「それに……こんなに可憐で可愛らしい、魅惑の美少女に。文句を言うものなどいませんよ」


 そんな事を思い浮かべていた血侵の内心を知ってか知らずか、趣意は続けそんな言葉を紡ぎ寄こすと。同時に血侵の片腕に、その豊かな乳房を押し付けて取り付いたのはその直後であった。


「ぉぃ……――っ!」


 その大胆かつ遠慮ない趣意の行動に、血侵は少し咎める声を上げ掛ける。

 が――それを遮られるように。

 血侵の美少女ボディを微かな刺激が襲ったのは瞬間。

 血侵はそれに驚き、軽く目を見開き、小さく声を零した。


「ふふ」


 血侵の耳に聞こえる、妖しく悪戯な趣意の囁き。

 見れば趣意の両腕は。片方は血侵の背中に回されて、その背筋をいやらしくなぞる様に添えられ。

 もう片方はなんと血侵の今は豊かな乳房の下へと回され。それを支えながらしかし、趣意の指先を血侵の乳房へと沈めていた。


「人を惑わすイケナイおじ様……これは、〝撃墜〟しなくてはなりませんねっ」


 そして血侵のボディを弄り始めつつ、そんな怪しい言葉を紡ぐ趣意。

 この色欲に塗れた獣――どうやら撮影のど真ん中だというのに、血侵の姿を前に辛抱たまらなくなったらしい。


「ぉま……――ふぁっ」


 再びそれを咎めようとするが、しかし直後。自信を弄ぶ手先によって甘美な電流が身に走り、血侵は意識に反した艶の含まれた可愛らしい声を零してしまう。


「ッ、おまッ――……ッ!」


 一瞬遅れてその様子に気付き、少し荒げた声を寄こしたのは、反対隣に居た修奈だ。

 が――それは好意を咎め、血侵を救うためのものでは無かった。

 その色は、まるで遅れを取ったとでも言うようなそれ。

 すかさず修奈が見せたのは、今先の趣意と同じ。空いていたもう片方の腕に、その豊満な乳房を押し付けて抱き取り付く動き。


「――ひゃッ」


 そして血侵は、その身に新たに走った別の甘い電流に、またも甘い声を上げた。

 見れば修奈の片腕が血侵の背後に回され。その腕は血侵の腰、尻を鷲掴みにして捕まえて、血侵の身をギュっと抱き寄せていた。

 さらにだ。

 修奈は空いていた片腕の指先で、血侵の顔の顎先をスっと捕まえると。クイと持ち上げ動かして、強引に自分と視線を合わさせた。

 まるで「そんな女に構うな」、「自分を見ろ」とでも訴えるような俺様ムーブ。


「っ!」


 今は端麗な美女の容姿の修奈による、強引で刺激的なそれ。

 血侵も今は美少女に女体化している影響で、心も〝女〟のスイッチが入ってしまっているため。

 美女姿の甥子にされるがままの挙句に見つめられ。心臓をトクンと脈打ち、不覚にもときめいてしまう。


 唐突に巻き起こった、獣二人――修奈と趣意による、愛しの美少女姿のおじ――血侵の所有権を競う修羅場。


「おぉー」

「やるねぇ、いいねぇ」


 しかしそれを囲い見る、撮影要員であるLSR職員の人々は。

 言葉でこそ驚きの声を上げはしたが、それはどこか呑気なものであり。どころか獣二人の行動を評するような言葉まで飛んできた。

 そして引き続きシャッターフラッシュが瞬き響く。


「ぉ――お前等ッ」


 当の渦中にある血侵は。唐突な事態の連続に持ってかれていた意識を、なんとか取り戻し。

 獣と化した甥子姪子を咎める言葉を紡ごうとする。


「っ……!?貴様っ!」


 しかし。その只中にある血侵を挟んで。次には獣同士での獲物を取り合う戦いが勃発してしまった。

 血侵の視線を持って行った修奈に、抗議のものである声を上げ返したのは趣意。しかしその次に繰り出された趣意の手管が、また斜め上のそれであった。

 趣意はなんと。血侵の背筋を弄んでいたその手先の、狙う先を急遽変更。その手先を血侵越しに修奈の背へと伸ばし、その魅惑の背筋をなぞり上げたのだ。


「ひゃぅっ!?」


 その修奈から。今しがた見せた俺様美女ムーブから一転。その美女の容姿に似合わぬ、可愛らしい悲鳴が上がった。


「ッ――!?ふぁ……っ!?」


 さらに、趣意のかました驚きのセクハラ攻撃は、それに終わらなかった。

 趣意はそのまま自身の手先指先を修奈の背に置き、そしてねちっこくなぞり這わせ出してセクハラ攻撃の継続を開始したのだ。

 まるでそれをもって、愛しのおじ(獲物)からライバルをはがそうとするように。


「っぅ……この……っ!」


 しかし背中を嬲られ甘い鳴き声を上げながらも、修奈はそれで引き下がるタマでは無かった。

 なんと修奈は次には、血侵の腰尻を鷲掴みにしていたその手を、血侵の背越しに趣意へと伸ばして。その新たなターゲットとした趣意の魅惑の腰尻を、鷲掴みにして捕まえたのだ。


「ひゃぅっ!!?」


 今度は趣意から、可愛らしくも艶の含まれた悲鳴が上がる。


「きしゃまっ……んぅっ!?」


 修奈からの報復セクハラ攻撃。

 一種憎らしい相手からのそれに、趣意は毅然な表情を作って威嚇する声で退けようとしたが。

 それは面白いまでに失敗。

 趣意の健康的な腰尻は、修奈の手により揉みしだき犯され始め。甘美な電流刺激に苛まれ、趣意からはまた可愛らしい悲鳴が上がる。


「おのれ……きしゃま……っ!」

「っ……おまぇ……!」


 しかし趣意もまた退かず。

 修奈と趣意は、どちらも血侵に乳房を押し付けて抱き着く姿勢を頑として保ちながら。その血侵を間に腕を伸ばし合い、互いを退けるべくセクハラ攻撃を続け嬲り合い始める。


「はなれ……んぅぅっ……!」

「おま……こそ……ひぅ……!」


 互いのセクハラ攻撃が加える甘美な刺激に。どちらも顔を紅潮させて甘い悲鳴を上げながらも、退く様子を見せずに互いを嬲り続ける。


「お前等……ッ、人を挟んでセクハラで戦うんじゃ……――んぅっ!?」


 そんな両者の頭の悪いセクハラ戦争の、間に挟まれてしまった血侵は。それを咎め叱る声を発し上げようとしたが。しかしそれもまた失敗に終わり、甘く可愛い悲鳴へと変わった。

 修奈と趣意は、見ればなんと。

 互いを色を含みつつも尖らせた視線で刺しながら。セクハラ攻撃を加えつつ、相手からの報復セクハラに耐えながらも。

 なんと同時に、器用にも空いている片手で。血侵のボディを弄びこねくり回す行為を、未だに継続していたのだ。

 それは互いをセクハラ攻撃で引き剥がそうとしながらも。同時に愛しのおじ(美少女)を手籠めにして、自身の手中に堕とし手に入れんとする、揺ぎ無き信念(と欲望)からの動き。

 呆れるべきか、いっそ称えるべきか。


 趣意は血侵の乳房をこねくり回して弄び、かと思えばその手を血侵の下腹部に回してまたこねくり回し。

 修奈は血侵の喉元のなぞり弄び、かと思えばその指先を血侵の後ろ首に回して、またそこをなぞり犯す。


「んぅぅ……っ!」


 そして血侵にあっては、双方の乳に両腕を捕まえられ。いや最早自信を犯す両者の手先に完全に女にされ。されるがままに、ただ甘美な電流を堪えている。


「きしゃまには、まけ……んっ、くっ……!」

「っ……!」


 くっ付き抱き合う三人それぞれの視線が、甘い吐息が、可愛らしい悲鳴が。間近で交わり合う。

 そして止むことなく、それぞれを弄り合うセクハラ攻撃は続く。



 ――スタジオ舞台上を交戦空域として。

一機の戦闘機を狙い鹵獲するべく繰り広げられる。二機の追撃機によるドッグファイト、いやキャットファイトか。

 ぞれぞれが奏でる音色が混じり合い、戦いはヒートアップする――



「――おまえ、ら……いい加減に……――ひゃんんっ!?」


 そのたいっへんに頭の悪い戦いの最中で。血侵はいよいよもって咎め叱り止める声を上げ掛けたが。

 残念にもやはりそれは、直後にはまた襲った甘い刺激によって。可愛らしい悲鳴へと変わり響いた。




 そんな最早どうかと思う、戦闘機メカ娘等によるセクハラ交戦の光景を。

 しかしLSRの職員の人々は、そして善制や志頭も。

 逆にどうしてそこまで普通でいられるのか。平然と、人気なまでの様子で撮影や見学を続けていた。


「若いっていいですね」

「だな」


 挙句。温かい目で見守る様子で、そんな言葉まで交わすは志頭と善制。


「やめ……きゃぅぅっ!」


 一方、血侵等は。

 少し状況態勢が変わり。

 血侵は前後で趣意と修奈にその身をサンドイッチされ、今先よりも濃厚な様子で二人からセクハラされている。

 いつのまにかセクハラの戦いそっちのけになり。

 二人の企みは血侵の身体を堪能し。あわよくばライバルよりも前に、自身の物へと堕として手に入れようという、色欲獣欲に率直なものにシフトしていた。


「おまひぇらぁ……っ!――んぅっ♡」


 その只中で。すでにトロットロにされて、撃墜鹵獲されてしまっている血侵。



 それからしばらくの間。ギャラリーが温かい目で見守る中。

 血侵はその身を、獣二人が気が済み正気に戻るまで。弄ばれ堪能され尽くされる羽目にあった――




「――ったくッ」

「ほあぁぁぁ……」

「……」


 それからしばらくの時間が経過した後。

 LSR支社社屋の正面玄関から、血侵と趣意と修奈の三名が歩み姿を現した。

 血侵と修奈にあっては元性別に戻り。そして血侵は管理隊の、修奈と趣意はそれぞれの所属軍・隊の、三者三様の制服姿に着替え戻っている。

 その血侵にあっては僅かに怒り、そして多分に呆れそして疲れたような色で一声を吐く姿を見せ。

 趣意にあっては気の抜けた顔で声を零し。修奈に在ってはどこか大変にバツが悪そうな表情を作っていた。

 そして何より、二人の両頬には。抓られ引っ張られたであろう、赤く色着いた跡がよく見て取れた。



 あれからしばらくして。獣二人――修奈と趣意は、血侵の身を堪能し切った事で正気に戻り。

 それを見計らっていたかのように、善制と志頭が歩んできて割って入り。その場はようやく静まりお開きとなったのだ。


 聞けば。修奈と趣意はどちらも今の部隊配置となってから、スクランブル等の重要かつ油断の認められない状況現場に赴き身を置き。気の張りつめる時間の覆い日々を送っているのだと言う。

 そんな二人の身を心配していた善制と志頭、それぞれの上官は。今回の広域防災演習で偶然再会した、噂に聞いていた修奈の趣意の焦がれるおじ様――血侵の存在に目を付け。

 その血侵と過ごす時間を設け、自由に過ごさせる事で。二人の休息、ガス抜きとする事を思いついたのだと言う。


 いやそれでもアレはやり過ぎだろう。止めろよ。

 と、その犠牲にされた血侵はもちろん思ったが。


 弄ばれた影響でトロットロのクッタクタになっていた血侵に、それぞれの上官から返って来たのは。

 温かい見守る様子表情での、笑顔でのぬるい謝罪。

 それに最早ツッコむ気も起きず、呆れゲンナリした顔を返すので血侵は精一杯であった。


 そして、それはそれとして。

 欲望のままに突っ走り暴走し切った果てに。互いへの競争心も事の途中でどっかへ行ったのか、血侵を堪能し切りご満悦の様子であった修奈と趣意に。

 やり過ぎの仕置きとして、血侵は二人の頬を〝むにーっ〟とつねり引っ張る罰を与えたのであった。



 さて、一連の色に塗れたトンチキ騒ぎは終了となり。

 二人の上官である善制と志頭は、まだ残るLSRとの仕事調整のために残るが。血侵、修奈と趣意は解散。

 血侵は自宅アパートへ。

 修奈と趣意は現在は出張の扱いとの事で、そのためにこちらで取っているホテルへそれぞれ戻るとの事であった。


「――ん?」


 血侵が何気なく視線を上げ。その向こう上空に見える空模様に気付いたのはその時であった。

 まだ真上の空は晴れているが。遠く向こうの空に見えたのは、濃い雲。

 それも灰色の雨雲とは違う、何か青のような紫のような、少し不気味な色合いの雲が、広域に広がっている。


「魔力雲が来てますね」


 背後より、その雲の正体を紡ぐ声を寄こしたのは趣意だ。



 ――この世界、惑星には妖怪や魔族が居るように。魔法や魔力、妖力もまた存在する。

 そして今の趣意の言葉、ワード通り。遠くの空に見えるその不気味な雲は、魔力を有し内包する特殊な雲。魔力を伴う魔力気象と呼ばれるもの一つであった。



「予報に出ていた。明日の朝くらいには、こっちに流れて来るそうだ」


 趣意に続け、伝え説明する言葉を紡いだのは修奈。

 血侵が振り返り見えば、趣意と修奈もそれぞれ視線を上げて、空の向こうに見える魔力雲を見つめている。

 今先までの色惚けた様子から変わり戻り、その表情様子はそれぞれの姿容姿に似合った、真剣なもの。


「マジか。あのデカさだとまず荒れる――気に留めとかねぇとな」」


 修奈の言葉を受け、そして再び魔力雲を見上げて零す血侵。

 魔力雲は、魔力嵐などと呼ばれる激しい魔力気象現象を起こす。それがこちら――ラインイースト地方の方向に流れて来る事を知り、懸念そそして備えが必要な事を鑑みる言葉だ。


「私達は、観測のための出動が掛かるかもしれないな」

「あぁ」


 そこで珍しく、喧嘩腰でない言葉を交わし合う趣意と修奈。

 二人は戦闘機部隊の所属だ。その任には、異常気象の観測なども含まれる。その事から、今見える魔力雲の動向次第では、出動の命令が掛かるかもしれない事を予想する言葉であった。


「あぁ、お前等はそうか」


 改めて二人の身分立場を思い出し。その可能性がある事を同時に思い返し、言葉をまた零す血侵。


「アンタのほうも、無関係ではないんじゃないか?」

「おじ様も基幹道路のパトロール隊ですものね」


 その言葉を向けた二人から、今度は血侵に向けて尋ねる言葉が返る。


「あぁ。区間閉鎖とか、特巡があるかもしれねぇ」


 それに肯定の言葉で返す血侵。

 異常気象が起きれば、当然基幹道路も影響を受ける。

 そして気候状況によっては安全管理維持のため、基幹道路の区間閉鎖や、そうでなくても臨時の巡回のために。血侵等、交通管理隊も出動する可能性は高かった。


「油断はできねぇな。立場は違うし、自分が偉そうに言うのもアレだが、お前等気を付けてな」


 そんな起こりうる可能性から。

 血侵は従兄弟伯父として。そして安全の維持に関わる者として、大小違いはあれど身を同じくする立場として。

 修奈と趣意にそう言葉を紡ぎ告げる。


「あぁ、アンタな」

「おじ様も、くれぐれもお気を付けて」


 それに修奈と趣意同様に、真剣な様子で言葉を返す。


 色々、騒がしくまた色に惚けたトンチキもあったが。

 最後には、これより起こり来るであろう懸念事項に対して。真剣なものへとそれぞれの意識を改め直し。

 その日は解散し、三名はそれぞれの帰路へと着いた。

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