第23話くまさんですわ、お母様

邸に付き、お母様との抱擁もつかの間。



王家は信用ならんとお怒りのお父様がセルジュを呼び、私の魔力を調べたわ。


セルジュは、神殿で育ったのだそうだ。人に歴史ありね。


でも、王宮に確認する様子はないから、よかったわ。「膨大」発言の裏は取られなさそう。



「…信じられない。」といったつぶやいたセルジュが、お父様と執務室へ。



時間がかかるかしら。ふむ。お母さまのお胸を満喫しよう。ハグ、プリーズ。





その後、お父様から、お兄様と一緒に学んでもよいとのお許しが出た。まあ、仕組みは、お父様から聞いた以上のものはなさそうだから、要はひたすらイメージトレーニングね。お母さまの役に立ちたいから、付与魔法を極めて見せるわ。



ふふふ、このアイリーンの妄想…いえ、イマジネーションに限界はないわ。チートの予感よ。



********************



お母様にお土産を準備できなかったから、お土産話をすることにしたの。推しとの時間を優先してしまった私、罪深いわ。

そして、ただいまお茶会中。

そう、ポケットとポシェットの話もしてみたわ。

『メイドのエプロンのポケットのように外につけるものではなく、こう、見えない形?インしている?形なの。』ということをうまく伝えられず絵に描いたら、お母様の興味を引いた。でも、すぐに製作は難しいらしい。

そうよね、今あるドレスに後から付けるのは難しいわ。


ポシェットは、この世界にも存在したのだが、腰にベルトを着け、そこにつるす巾着のようなものだった。着脱が幼児には難しいわね。ちょっと見た目もあれだし。パカッて開くタイプの肩から掛けるショルダータイプを絵に描いて見せたわ。


「まあ、かわいい。この動物は、何?」

「くまさんですわ、お母様」


レースやリボンでもいいけど、幼児には、くまさんポシェットが似合うでしょ。


「熊ってあの熊!?」


この世界にも熊はいる。お母様、その反応は当然よ。


思い出すわ、クマ牧場。軽いノリで訪れ、熊の大迫力に言葉を失ったあの日。安全が確保されている部屋でガラス越しに見た熊。よだれすら怖かったわ。大自然で出くわし、死んだふりができる人間なんて、いやしない。強靭な精神力の持ち主だけ。形勢が不利だろうとも、私は、全力逃げるわよ。


「くまではなく、くまさんですわ。デフォルメしてますの。」


「デフォルメ?」


「おかあさま、これがほしいのです。つくっていただけませんか?」


はい、出番。 潤んだ瞳 上目づかい。


「っ!セルジュ!今すぐ仕立て屋を呼びなさい。くまさんの目は宝石…魔石でもいいわね。直営店に連絡して支配人にも伝えるのよ。」


…効果抜群ね。多用しないようにしなきゃ。あらら、びっくりするほどすぐに来たわ。2人とも汗だらだらね。私が描いた絵を見て、「誰が考えたのですか?これは…アイディアがどんどん沸き上がります。」という仕立て屋。「素晴らしい。奥様、これは売れますね。」という支配人。おーほほほ。もっと褒めたたえよ。


********************


これよこれ。かわいい。ほら肩から掛けて、くるっと回ってみたわ。


ボニーが、「今ならお嬢様の言うカメラ、私も欲しいです。」と、もだえているわ。



よし、これをマジックバックにするわよ。転生者がよく特典でもらう、例のあれよ。なんでも入るバック。

イメージはそうね。某アニメのド〇ちゃんのポケットよ。このくまさんの目の魔石に付与するといいのよね。



はい、できた。こちとら小さい頃から某アニメのファンよ。余裕に決まっているじゃない。



さっそく、お父様とお母様に自慢よ。


私の姿を見て、かわいいと微笑みあっていたお父様とお母様。付与した機能を説明したら、2人とも固まった…あ、動き出したわ。


ひたすら物を入れているわね。ふふ、4次元よ。いくらでも入る。ああ、これでノエル様から何をどれだけ頂いても余裕よ。


ん?お父様に「話がある」と言われたわ。お父様も欲しいのですね!わかりますとも、日本人のほしいものランキングの常連、ド〇ちゃんのポケットだもの。

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