【完結】推しに命を奪われる運命だと!?
楽歩
第1話プロローグ
『あなたと…殿下をずっと護っていくと…この剣に誓っておりました…』
護衛騎士ノエルが、美しい顔を歪め、剣を握りしめる。
『ふ…ふふふ…あー、もう終わりなのね、最後に見る顔があなただなんて…いいわ、やりなさい!その剣で!』
憎いと言わんばかりに睨みつけ、叫んだアイリーン・ノヴァック侯爵令嬢。
覚悟を決めたノエルは、アイリーンから目を逸らすことなく、剣を構えなおし、一気に振り下ろす…。
どさりと音を立て、絶命したアイリーンからは、苦しみや憎しみの感情は見えず、むしろ最後に見せた微笑みの中には安堵すら見えた。
剣を強く握るノエル。浴びた返り血と頬を伝う涙を拭うように、静かに雨が降りだした。
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くぅーーーー!!!!
何度思い出しても、泣ける!!ああ!雨に濡れるノエル様の美しさに、また泣ける!!
恋愛シュミレーションゲーム「雨上がりの恋時雨」略して雨恋
天真爛漫なヒロイン男爵令嬢が悪役令嬢たちの妨害に屈することなく、攻略対象と恋に落ちていくという、まあ、よくあるゲームだ。
しかーし!!なんといってもこのゲーム、攻略対象者が、いや、モブですら超絶美形!!
公式グッツはもちろんのこと課金をしなければ見ることができないお宝ショットのためにお金を次々と投入するファンが後を絶たず…
かくいう私も、雨恋にどっぷりはまった、一人なのだ。
だが、私の推しは皇太子の後ろに控える護衛騎士ノエル様。
なぜ、あの美しさをモブにしていまったのだ、運営様よ。
漆黒の髪に澄んだ青空のような瞳。鍛え抜かれた体に時折見せるはにかんだ笑顔。
攻略対象5にいてもいいだろう。
一部の望みをかけ、運営様から出る公式ブックを買いあさり、これまた、一部の望みをかけお宝ショットに期待するも私の推しは、へたすりゃ見切れている…
…推しに課金ができていない…
この悔しさが前世の私を苦しめてきたといっても過言ではない…
―はい 前世…
そうです。前世ということは、今世があるということであり、ええ、わたし…わたくしがいるこの世界、まさしく「雨恋」の世界なのです。いえ、…なのですわ。
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