第10話 落ち込んだ時
「あーーー」
ひなたは、勉強机の椅子に座り、背もたれにもたれかかった。
天井に顔だけ出すぱんだ先生。
(何、叫んでるんだよ)
「あ、白黒パンダ」
床に落ちてくるぱんだ先生。今日は、なぜかスーツを着ている。
ピロピロ笛も相変わらずタバコみたいだ。
(ぱんだ先生と呼びなさい)
「はいはい。てかさ、今、俺、猛烈にイライラしてるわけ。ん? 悲しみでもあるのかな」
(ほー)
「健太郎に遊びに行かないって1週間前に誘われてたのに、
当日の朝って、今日のことね。高熱出して、無理いけないって連絡来たんだよ」
幼馴染で親友の健太郎。いろんなことを相談するいいやつだ。でも、今日は、前から約束していた釣りに行く予定だったが、高熱が出たと連絡来た。ひなたは、一瞬、時がとまったように固まった。
「今は、ピーク落ち着いたんだけど、すっごい、めっっちゃイライラしたわけ。
具合悪いってわかっていて、無理っていうのもわかるけど、何か、こう俺の中のボルテージが行くぞー〜ーってなってたのにぽろんって1通のメッセージで一気に落とされたの。イライラから悲しみに変わったわ」
ひなたは、ベッドに置いていたお気に入りのジンベイザメの抱き枕を抱っこした。
(おうおう、俺は、そのジンベイザメが羨ましいな)
「ぱんだ先生、ヤキモチ?」
(……そうとも言う)
「抱っこする?」
(無理だよ)
ぱんだ先生は、ひなたの足の上に乗ろうとした。感覚がない。
するりとすり抜けた。
「なんで? だって、手は触れるっしょ。ほら」
ひなたは、ぱんだのふわふわな手を触ってみた。確かに感覚はある。
でも体は無理のようだ。
「どんなシステム?」
(わからない)
ぴろぴろ笛をピューと吹く。
「んでさ、その感情どうしたらいいの?健太郎を責めたくないの。
でも、俺自身の問題なんだけど。どっか行きたいなって思うけど、
健太郎と行くつもりだったから他の人ってすぐには切り替えられない。かといって、家でのんびりも落ち着かない」
(……寂しいんだろうな、つまりは。そうだなぁ、まぁ、次の予定を立てればいいだろう。自分が行きたいところとか。未来のことを考えば、ウキウキするだろ)
「まぁ、確かに。でも、今日はどこにも行きたくない」
(いいよ、それで。美味しいもの食べて、明日の楽しいこと考えろ。
今は……アプリゲームとか漫画とかアニメとか見れば?)
「……何か、どれもつまらないって思っちゃうんだよなぁ。
健太郎と釣り行きたいって考えてる自分がいたから。はぁ……」
(俺と行くか? 俺は、釣れないけど)
「釣り?行くの? でも、釣れないんでしょう」
(釣りを応援する。必死で。思いっきり。釣れたら、褒める。
これでもかと。ハイタッチはできる)
「……」
ひなたは頭の中で想像した。隣にぱんだ先生と釣りを満喫。
何だか絵になりそうと考えた。
「行こうかな?」
(よし、来た。行こう。どこの釣り?)
「海釣りな」
ひなたは、釣りの行く準備をした。
「あれ、ちょっと待って。どうやって行くつもりしてたんだっけ」
(知らんよ)
「あー、健太郎の兄貴が車出すって言ってたんだった。残念。健太郎が風邪ってことは兄貴もきっと同じだから無理だ」
(タクシーとか?)
「……やめとく」
ひなたは、またボルテージが下がった。
「スマホでゲームでもしてるわ。あと、漫画とか……」
ベッドに横になって、ブツブツとつぶやきながら、暇をつぶした。
そんなまったりした日があってもいいと思うけども。
ぱんだ先生はため息をついて、また消えた。
なんで、スーツだったのかと質問がないことにつまらなさを感じたぱんだ先生であった。
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