第2話 大事なものを無くした
ひなたに念願の彼女ができた。
その子の名前は
「柚葉、これ、あげる。」
放課後の帰り電車の中でひなたは
バックからガシャポンで取った可愛い猫の
ストラップを柚葉にあげた。
「わあ、可愛い。ありがとう。
大事にするね。」
柚葉はニコニコと喜ぶ姿が可愛かった。
心がホカホカと温まる。
1週間後の電車の中で、
柚葉はソワソワとして落ち着かない様子。
元気がない。
話を切り出した。
「ひなた、謝りたいことがあるの。」
「どうしたの?」
イヤホンを片方ずつつけて、
音楽を聴いていたがそれを耳から外した。
「実は、先週、もらった猫のストラップ、
このバックにつけてたんだけど、
紐はあるけど、端っこに付いてた猫が
どこにもなくて…。
本当、ごめん!」
申し訳なさそうに柚葉は謝った。
こう言う時、どうすればいいだろうと
ひなたはかなり困っていた。
せっかくあげたものを無くすなんてと
怒るべきか、怒ったら嫌われてしまう。
すぐ許しても、そこまで大事じゃないと
思われても、誰でもよかったのかとなる。
脳内では、頭を抱えてぶんぶんと
首を振って発狂した。
そんな時、電車の真っ暗な窓に
ぱんだがまた現れた。
鏡に映るようにぼんやりと浮かんでいる。
ピロピロ笛を拭いた。
テレパシーだろうか、ぱんだの声がした。
(ストラップは無くなっても、
君はいなくならないで。
これに尽きる。)
(それ、言う?
ちょっとくさいセリフじゃないの、
それ。 大丈夫かな。)
「柚葉、ストラップ、
無くなっちゃったね。
でも、どんな物でも
いずれ壊れるものだよ。
それが早いか遅いだけ。
ストラップ無くなっても
柚葉はいなくならないで、お願い。」
ひなたは子犬の耳を頭につけたような
目で柚葉を見た。
柚葉の胸はきゅんと矢をつかれたようだ。
「え、うん。
大丈夫、いなくならないよ。
ごめんね、今度から気をつけるよ。」
「うん。」
窓に映ったぱんだはいいねと
親指を立てた。
それに応えるようにひなたも
柚葉に見えないよう、親指を立てた。
なんとかなるもんだなと、
助けてくれるぱんだを
ぱんだ先生と呼ぶことにした。
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