ぱんだ先生に聞いてみよう

もちっぱち

第1話 告白して振られた


「好きです!付き合ってください。」


 校舎裏でひなたは言った。


 赤くした頬をポリポリとかきながら

 花は、何も言わずにお辞儀をした。


 頭を下げたまま、

 顔を見られたくない花は言う。


「ご、ごめんなさい。」


 その場から立ち去って行く。



 玉砕。


 ひなたはがっくりしてうなだれた。


 すると、後ろからのっそりと

 静かに現れた。


 同じ高校の制服を身につけた

 ぱんだが静かにひなたの後ろに

 近づいてモフモフと言う。


 言葉を理解できなかった。



 ぱんだは

 ポケットからピロピロ笛のおもちゃを

 口につけてピーと吹く。


 ひなたの頭の中に意識が飛んでくる。


 

(振られたな。)



「……ピロピロ笛が通訳?!

 テレパシー?

 ぱんだが?」


 ひなたは、驚いて、一歩後ろに下がる。


 指を立てて、こっちと指示を出すぱんだ。

 昇降口近くにある花壇のふちを

 ベンチがわりに腰掛けた。


 ぱんだの目の前でひなたは

 同じクラスの花に振られた。


 膝に肘をつけて負けたボクサーのように

 がくっとした。


 またピーとピロピロ笛を吹く。


(女子はたくさんいるだろ。

 前を向け。前を。)


「ぱんだが言うな。

 ぱんだが。

 パンでも食べてろ。」


 完全なる八つ当たりだ。

 2年も片思いして勇気を出して、

 告白したのに、あっさりと振られたのだ。

 そりゃそうだ。

 今までずっと見てきただけで会話一つすら

 してない。

 どこの馬の骨かわからないやつの告白に

 OKする女子もおかしな話だ。


 ピー

(好きなままでもいいんだぞ。)


「ぱんだがグレーな解答をするんじゃない。

 白黒をはっきりつけろ。

 ぱんだなんだから。」


 半べそかきながら

 またうなだれる。


 まぁ、何もせずに好きなままでもありか。


 少し気持ちの整理ができた。


 ひなたはバックを背負い直して、

 家路を急ぐ。



 ぱんだはパタパタと手を振り、

 ピロピロ笛を吹きながら、ひなたを

 見送った。


 夕日が出るとカラスの一声で

 いつの間にかぱんだは消えた。


 花壇にはピロピロ笛が残っていた。



 

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