プレゼント ~Giver SIDE~
尿意でふと眠りから覚めた。
便所で用を足しベッドに戻ると、時計は六時十一分を示している。
ベッドでは安らかな表情をした彼女が寝息を立てている。僕が寝ていた場所を向いて布団を胸にかき抱いているが、白い肌の背中はまる見えである。
今日は彼女の誕生日である。
昨夜ホテルに入ってから、プレゼントを渡しお祝いした。彼女に贈ったのは、「サマンサベガ」のハンドバッグだった。
これと決めるのには大いに時間がかかった。
彼女のファッションを観察して趣味趣向を把握し、さらに直接聞き出した。その情報を元にあらゆる店に出向いたが、全ての条件を満たす物は中々みつからなかった。
何日もかけて探しているうち、疲労はピークに達し妥協する考えがよぎった。
そんな時ネットで探していたら、まさに「コレだ!」という物を発見した。長い時間をかけてようやく選ぶべきものが決まったと思った。
ところがそれは型の古いもので、正規店での販売は終了していた。ここまで来て手に入らないと分かった時は大いに絶望した。
だが僕は諦めきれず、試しにメルカリで検索をした。すると、そのバッグが販売に出されている。しかしわずかに期待した新古品ではなく、やや使用感のある中古品であった。
画面と向き合った僕は悩みに悩んだ。
誕生日プレゼントに中古はいかがなものか。だがこれ以上理想的な物は見つかりそうもない。購入時の箱も付いているので、あとは上手くギフト包装すればイケるんじゃないか。追い詰められていた僕はそう考えた。
人に物を贈る時にこれほど不安を抱えたことはない。
彼女は満面の笑みで包装を解き、箱の中身を目にした瞬間、真顔になった。
その表情に僕はとてつもなく狼狽えた。
――バレたか。
思わず「ダメだった?」と聞くと、彼女はみるみる感動を湛え「これが欲しかったの」と言った。
この言葉で僕は
そこで体を重ねた時におもむろにバッグを彼女の頭に敷いて、少しでもくたびれている理由を作ろうと試みた。この奇行にはさすがの彼女も「え、なんで」と言い、僕は「あの……フェチなんだよ」と苦し紛れの言い訳をした――。
バッグはベッド脇のテーブルに置き直されている。
僕はそれを手に取って彼女の開いた背中に下敷きになるように、そっと差し込んだ。
プレゼント 柴野弘志 @baccho711
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