X(旧twitter)放流小説(2022年)

須堂さくら

3月

『I love you』

好きだって言っても愛してるって言っても結婚してくださいって言っても、君は「どうでもいいわ」としか言ってくれなかったけれど、そんなどうでもいい僕を、たくさんの家族たちと一緒に看取ってくれてるんだから、君の「どうでもいいわ」は、僕が君に贈ってきたたくさんの言葉たちと、きっとおんなじ。

(2022/03/16)


『I love you』

母は父の部屋にいた。

「私、大抵のことはどうでもよかったの。何が起きても、あの人はここにいて、私に笑いかけていてくれたもの。だけど、だから、あの人が私より先に死んでしまったことは、どうでもよくないわ」

母は悲しげに微笑み、父の笑う写真を撫でた。

僕が、最初で最後に母の涙を見た日。

(2022/03/21)


『とっておき』

お気に入りのパン屋が潰れていた。

「とっておきを食べさせたかったのに」

がっかりする私に、君が笑う。

「とっておきを出すところなら俺も知ってる」

イケメンのシェフが居るから惚れちゃうかもね、なんて笑う君に連れられて、見えてきたのは見慣れた景色。

イケメンのシェフに惚れ直した午後。

(2022/03/24)


『魔王』

聖剣が魔王の胸を貫く。

断末魔は溜息のような吐息が一つ。

世界を恐怖に陥れた存在は、ただ寂しいと泣いている小さな子供だった。

これが魔王かと疑うが、聖剣は決して間違わない。

震える切っ先を向けた時、伸ばされた手は救いを求めていたのか。


斯くて世界は救われ。

僕は消えない罪を背負った。

(2022/03/30)

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