第4話 サイクロプス
S級パーティー【ロイヤルワラント】は、未踏破ダンジョンを順調に攻略していた。
「次はその角を右っすね」
「なあ、タムタム。今の調子で行くと、このダンジョン完全攻略したら何級に認定されそうだ?」
身長差が一番ある同士のガルフがタムタムに聞く。
「そうっすね~上層、中層の発生魔物の分布からすると中級ダンジョンってところっすか」
「でも、今回はダンジョンボスに魔王の刺客が送り込まれてる可能性が高い。侮ってはいけない」
珍しくニッキーが会話に割り込んだ。
「この前の動きが鈍った原因もわかって、モナが対処してくれるんだろう。姫様の
「魔族は基本単純…でも、たまにやたら面倒くさい奴がいる」
「スマン!わしも単純な方なんで、面倒くさい奴はニッキーとタムタムに任せる」
「ん、自覚があるならいい」
「ちょっと~、なんで知能派にあたしの名前が出て来ないのかしら?傷付くんですけど…何気に」
後ろを歩いていたモナが不満を洩らす。
「モナ…胃袋に知能はないんだよ」
「ニッキー!なんで困ったちゃんに諭すように言うんだよ~」
「無自覚ほど怖いものはないぞ…堕落聖女」
「ムッキー!」
「しっ!そろそろ最下層に入るよ」
先頭から2番目を歩いていたタムタムが、メンバーに注意を促した。
最下層には蛇の魔物サーペントや鳥の魔物コカトリスが出現したが、【ロイヤルワラント】の攻撃メンバーは難なく討伐して行く。
しばらくすると、ダンジョンボス部屋の扉が現れた。
いつもの様にタムタムが罠のチェックをすると、ライオット姫にハンドサインを送った。
扉が開くと、ガルフ・ライオット姫・オスカー・ニッキー・モナの順に部屋に入る。
タムタムが扉にストッパーを噛ますと、中の様子を目を凝らして確認する。
奥の暗がりに赤い光が灯ると、地響きと共に赤い光が上方へと移動した。ダンジョンボスである。
ダンジョンボスが立ち上がると、真っ暗だった部屋に光が溢れて来て、ゴツゴツした岩肌の壁に囲まれているのがわかる。
姿があらわになったのは、赤い1つ目のサイクロプスである。
巨体に黒のフルアーマーを纏い、バトルアックスと大盾を両手に掲げている。
真っ黒なヘルムから赤い目だけが爛々と輝く。
「コイツは、わしと相性バッチリな相手だな」
大盾を構えると、ガルフが楽しそうに言う。
サイクロプスは、片手で軽々とバトルアックスを振りかぶるとガルフ目掛けて打ち降ろす。
ガキンという金属のぶつかり合う衝撃音と共に、ガルフの大盾とバトルアックスが弾きあった。
「わしよりずっとデカいくせして、そんなものか!大した事ないのう」
ガルフが煽りまくって、サイクロプスの攻撃を自分に引き付ける。
ライオット姫はロングソードを構えて隙を窺うが、フルアーマーで固められた防御力の前に攻撃の糸口を見つけられずにいる。
オスカーは弓矢でサイクロプスの赤い1つ目を狙い撃ちするが、ヘルムに遮られてクリーンヒットには至らない。
ニッキーは氷結魔法でサイクロプスの足元を凍りつかせるが、力技で破壊されてしまう。
なかなかサイクロプスの勢いを止められない中、ライオット姫がバトルアックスの猛攻を掻い潜ると、膝の関節部分の隙間にロングソードを突き立てた。
サイクロプスは後ろへ退くと、両手を広げて吠える。
「来るぞ、モネよろしく」
ニッキーが言うや否や、5人のメンバーの動きが鈍くなる。
「聖なる力にて状態異常を打ち払え!」
モネの
「モネ、あんがと…サイクロプスやオーガキングみたいな脳筋野郎に、状態異常なんて魔法が使える訳ないだろうが!」
ニッキーが吠えると、岩壁の一角に氷槍を飛ばした。壁が崩れると黒い影が姿を覗かせる。
「オスカー、右手上部ダークメイジだ!奴が状態異常の担い手だ」
「ニッキーよく見つけた!後はオレが仕留める」
弓矢を引き絞ると、オスカーはダークメイジ目掛けて矢を放つ。
額に弓矢を喰らったダークメイジが、岩壁から落下するとベチャッと潰れた。
「フフン、これで邪魔な奴は片付いた。魔法でやられたらやり返すのがおいらの流儀だ…平伏せよ!」
ニッキーが魔法を発動させると、サイクロプスが突然押し潰された様に床に這いつくばった。
「姫様、
ライオット姫はサイクロプスに近づくと、
「ヒャッハー族はベイカーに嫌われる。ヒャッハー族はベイカーに嫌われる。ヒャッハー族はベイカーに嫌われる」
と呟きながら、両手でロングソードを握ると赤い1つ目めがけて突き差した。
サイクロプスは赤い大きな魔石を残すと、黒い霧となって立ち消えて行った。
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