第4話 夢でも幻でもない

 目が覚めると、彼ら、「皇帝」と「魔王」は場所こそ帝国と魔族領とに離れてはいたが、取り囲む者たちを見つけると、同時に叫んだ。


「下がれ!」


周囲の者たちは目覚めた各々の主君に声を掛けようとしたが、その怒りとも悲鳴ともつかない大声に驚き、即座に離れて跪いた。


「寄るな、寄るな、下がれ」


 シン、と静まり返った周囲に「皇帝」と「魔王」は混乱のさなかにも、おかしなことに気づきつつあった。


 何もしてこない、ということはどういうことだ・・・。


 彼らは身を起こし、寝台から出て立つと違和感を感じた。そして、足元を見て一瞬、意識が遠のいた。が、努めて冷静になろうとしたが、思わず


 お、お、お、お、お、お、と訳のわからない声を漏らしていた。


 どういうことだ、これは。

 そしてガウンを剥ぎ取ると己が手と体を見た。

 しかし、それが逆に彼らの頭をぼんやりしたものからハッキリとしたものに変えたのである。


 互いに互いをを見たことがある者同士の覚醒ともいえる。

 彼らは己の前に畏れと共に額ずく者たちに改めて視線を向けた。

 そして思った。


 夢や幻でもない、現実の、今の、向こう側の世界なのだと。

 どうしてこのようなことになったのか。


 「皇帝」と「魔王」はジッとその手を見ながら考えた。そして偶然にも同じ行動をとった。

 彼らは顔を上げると窓に向かい、朝日に映るその景色を見つめた。


 これがあの世界の眺めだったのだ、と。


 そう、心の中でつぶやいていた。

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