第10話 大脱走

僕はある時 ふと思った。いつも マイクロバスの乗らないと雪の聖母には来られないと思っていたけど、もしかしたら歩いてでも雪の聖母に来られるのかもしれない。今日帰る時にバスがどこを通るかよく覚えておこうと思った。そして僕は 次の日 幼稚園のバスで帰るのはやめて自分で歩いて自分の家に帰られるかどうか試してみようと思った。帰る時間になった いつもなら マイクロバスのところに行って乗り込んで帰るのだが 僕はその日 バスには乗らなかった。朝 マイクロバスに乗ってきた道を歩いて帰った。初めの角は左に曲がったから帰りは逆に右に回れば良かった。右曲がれば間違いない そう思って右に曲がって下り坂をずっと下まで下って行った。そうしたら広い通りに出た。あまり通りが広いので怖くて僕には渡れなかった。僕は広い通り が渡れずにその手前でぐずぐずしていた。そうしてどうしようかと迷っているうちに帰る時間が来て 雪の聖母のマイクロバスが出発した。マイクロバスはいつものように 坂を下って降りてきた。大きな通りのところの交差点でバスは止まった。交差点のところで行ったり来たりしながら 迷っている僕を シスターが見つけてバスに乗せてくれた。マイクロバスには僕の他はもう誰も持っていなかった。他の子供たちは もう 家に送られた後だった。僕はシスターに黙って帰っちゃダメですよ と少し怒られた。いつものように マイクロバスは家に向かって 帰り いつも僕が降りる場所で止まった。母が迎えに来てくれていた。母は少し泣いているみたいだった。家に帰って僕はお母さん どうしたの なぜ泣いているのと聞いた。母はどうして今日はバスに乗らなかったの と聞いた。僕はなんと答えていいかわからなかった。そして母が怒っていることに気がついた。お母さんがどんなに心配したか分かってる?幼稚園から電話があったのよあなたがいないって。僕はやったことの重大さを理解した。僕は母に少し怒られて そして もう勝手に黙って帰っちゃダメですよ と言われた。僕ははい 分かりました と答えた。それで 母の機嫌は直った。僕は時計を見て驚いた。変だなと思った。僕の中では10分ぐらいしか時間は経ってないはずなのに実際は 1時間以上も過ぎていた。僕は大きな通りの広い交差点が渡れなくて 1時間以上も ぐずぐずしていたらしい。ほんの5分か10分だと思っていた時間が1時間以上も空いていたなんて 僕も驚いた。幼稚園の子供が1人いなくなってマイクロバスにも乗らずに行方不明 みたいなもんだった。そりゃ シスターも お母さんも驚いてしまうわけだ。みんなに ずいぶん 心配をかけたらしい。 僕も申し訳ないと思った。本の思いつきでマイクロバスに乗らなくても 歩いて家まで帰れるんじゃないかと思っただけだったのに。幼稚園でも家でもずいぶん大変なことになっていたらしい 僕は全くお気楽に考えていた。 マイクロバスで帰らなくても 歩いて帰っても同じだと思ってた。だが幼稚園児がほんのちょっとでも いつもと違うことをすると大変なことになってしまうんだと その時わかった。

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