ペティット
お涼
第1話 プロローグ
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広場の噴水の像がなくなったのを知ったのはつい先日のことだった。
大きな街の一角の、よくある噴水を中心としたレンガ調の広場で、それを見守るかのように噴水の真ん中に設置された白い石像だった。
天使か、女神だったかがモチーフの石像で、気の毒なほど世間に溢れすぎていて、実際に私の頭の中では鮮明な造形が頭に浮かんでこなかったし、その事件が伝えられたときは(それを事件と言っていいのか分からないが)、机の上の食べかけのスコーンは朝ご飯として有効的に働くかどうかの方が気がかりだった。
実際問題よくある噴水の真ん中のよくある石像を失ったところで、私の生活において実質的な障害はない。いまでさえ天使の顔(便宜上天使とするが)を思い出すよりも、広場までの具体的な道筋を思い出すことの方がはるかに頭を悩ませる問題である。そしてそれすらも、結局のところ私の問題足りえないのである。
でもとにかくとして、噴水広場の石像は突如としてその姿を消してしまった。
まるでマジシャンがバニーガールの女を大きな布で隠したスリーカウントを唱えた後の出来事のように、なんの痕跡もなく失われてしまったのだ。
そして、結局のところそれがこの話の発端でもある。
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