第6話 バレた
「で?君はどこの誰なんだい?」
ドアを閉めて、フカフカのソファにドカリとお行儀悪く座ると同時に、セオがそう切り出した。
―――あー、その話ね。私もね?今までのシアっぽく振る舞おうかとも思ったよ?
でもさ、性格が全然違うし。24時間365日、これからずっと演技し続けるなんて出来る?無理でしょ。
だから開き直って、素のまま過ごすことにしたのだ。
7歳の子なんて成長でコロコロ性格変わるだろうし、高熱の後に少し違和感があってもバレないだろうと高を括っていた。
「・・・何の話?」
とりあえず、一度とぼけてみる。
何事もチャレンジだ。
「今日はね。クロエにシア様が困っていたら連絡をくれるように、伝えておいたんですよ。クロエには映像転送のスキルがあって、ノア様が来た辺りから映像が送られてきて見ていました。」
―――映像転送スキル・・・それって結構な貴重スキルなのでは?クロエちゃん、有能なのね。
「少し前からおかしいと思っていましたが、ノア様へのあの態度。・・・いえ、精霊獣と初対面でない様子。どう考えてもおかしい。」
「モモちゃんとは、以前から庭で何度か会っていた・・・とは思わない?」
「シア様が護衛もなく、屋敷の建物の外を出歩いたことはありません。召喚のように、屋敷内で直接会っていた可能性もなくはないですが。・・・あれはどう見ても、偶然の感動の再会でした。」
どうやら言い逃れ出来そうにない。
そもそも隠している理由もないので、観念することにする。
「私はシアだよ。シアの記憶もあるし、私がシアな事は本当。だけどね、高熱から目が覚めた瞬間から、異世界での別の人格の記憶もあるの。」
セオは一瞬驚いた表情をした後、促すように少し頷いてみせた。
「その異世界では、この世界はゲームの中でのお話だったの。ゲーム・・・ゲームって分からないよね。絵本のようなものなんだけど、物語を自分で進めていけるような・・・・・・・。」
説明はとても難しかったけれど、セオが要所要所で的確に質問をしてくれたおかげで、なんとか説明することができた。
「・・・なるほど。実はそのような話は歴史上珍しくありません。」
「ホント!?」
「歴史学者や文学者の中では有名な話です。明らかに、この世界の理から外れた者が時々現れるとしか思えない。その痕跡がそこここにある。」
以前の世界でいうオーパーツみたいなものだろうか。
「王家やそれに近い人たちは知っていて隠しているのでは・・・なんていう説もありますね。」
「そうなんだ。その、今までもいたかもしれない異世界人って私みたいに『プレーヤー』だったのかな。」
「どうでしょう。・・・お父上やお母上に報告はされるんですか?」
「うーん。まだ止めておくよ。」
今まで異世界の記憶の事を家族やセオに相談しなかった理由。
特にない!
特にないのだけれど――――――まだ情報が少なすぎた。
この世界で、異世界人の記憶を持っているとバレても大丈夫かどうかの判断ができる情報がない。
隠しておくのが無難だろう。セオにはバレてしまったけど。
「そうですね。もし、お父様がたの助けが必要だと思ったら、その時に相談しましょう。・・・大丈夫。お二人とも、心からお子様たちの幸せを願っている、とても優しい方たちですよ。」
セオがそう言って笑った。
「うん、分かっている。」
セオも先ほどの両親と子供達とのちょっとしたやりあいを見ていたので、心配してくれたのかもしれない。
「あんなの、あっちの世界じゃどこにでもある、ただの家族喧嘩。ただのプチ反抗期よ!」
「プチ・・・反抗期?」
「反抗期って概念がないのかな?子供が成長して、親の言いなりを止めて、自分の意見を言い始めるってこと。」
「なるほど。―――確かにそれはこちらの世界でも、どの家にでもある普通のことですね。」
シアはセオに異世界の事がバレて、少しホッとした。
やっぱり一人で抱えているには、負担が大きかったのだ。
―――誰かに相談できるって、こんなに心強いんだな。
バレて初めて気が付いた。自分が不安だったことに。
前世では大人だったけど、シアはまだ7歳なのだ。
「ところでシア様。その歴史の中の違和感を見ていますと、どうやら『異世界人』は魔力量を上げる方法を知っているとしか思えないのですが、心当たりはありますか?」
実はこの世界、魔力量は生まれつき決まっていて、それは生涯殆ど変わらないと言われている。
成長するに従って多少は増えるケースもあるし、たまになぜか分からないがいきなり魔力量が増えるケースもなくはないという。
でもほとんどの人は、生まれつきの魔力量がそれほどの変化することはない。
でも『異世界人』は魔力量を上げる方法を知っている―――――?
「うーん。ゲームでは『ミッション』を達成したりすると、魔力量もプレイヤーレベルも上がるんだけど。ステータス画面がないしなー。」
「ステータス画面?」
「うん。ゲームでアイコン・・・ボタンを押すと出てくる、こう・・・画面に今の自分の魔力量とか、攻略対象の好感度とか・・・所持金とか・・・・。うわっ出た!」
説明しながらステータス画面を想像していると、慣れ親しんだステータス画面が目の前に浮かび出てきた。
「え、何が出たんですか?」
どうやらセオには見えていないようだ。
「うん。そのゲームのステータス画面が、今目の前に出ているの。魔力量、上げられるかもしれない。」
シア・イーストランド(辺境伯令嬢)
水魔法使い
レベル:1
魔力量:1
体力:1
―――うわ、低い!体力1ってヤバくない?何とかしないとすぐ死ぬわ!
!ミッション
☆ ミンタ草の採集―5本
☆ いたずらネズミ駆除―5匹
☆☆☆☆☆ 街の男の子の無実を晴らそう
「あ!ミッションがいくつか来ている。これを達成すれば魔力量も体力も上がるわ。ミンタ草からは回復ポーションも作れるし一石二鳥ね。・・いきなり☆5のミッションもある。」
「魔力量も体力もあがるんですか。それは良いですね。シアお嬢様は体力がなさすぎます。」
「うん。普通に運動しても、体力は付くと思うんだけど。あ!所持金のアイコンもそのままあるー。まあさすがにゲームで稼いだお金は入っていないだろうけど。」
見覚えのあるコインのアイコンも、ゲームの時と変わらぬ位置に存在している。
持ち物ポケットは上限1にリセットされていてアイテムは何もないし、どうせ所持金もなくなって・・・・・・・
ポチっ
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「シア様?どうされました?」
「ある。」
「はあ、何が?」
「68億リル。ある。」
「・・・・・・・・・・・・。」
さすがのセオも黙り込み。
もう夜も遅くなってきたことも思い出し、そういえば疲れてるのよねーとなり、その日はとりあえず解散となりました。
次の日晴れていたらミンタ草を採りに行く約束をして。
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