狐の戯れ
月葡萄
第1話月下の狐
───京都のある山奥───
雲一つない満月の夜。
山に桜が咲き、春らしい暖かい風が吹き、川のせせらぎが聞こえる自然溢れる山の中。
その山に、数枚の葉っぱが不自然と揺れた。
葉っぱが揺れたのは、一匹の妖怪が走っていたのだ。
その妖怪は頭に皿を乗せ、鷹のような黄色い
その河童の青年は左腕を負傷しながら、山の中を
息を乱しながら背後に警戒をしていると、横から何かが飛んできて、河童の青年は紙一重で
飛んできたものを見ると、それは
それを見た河童の青年は苦無が飛んできた方向を睨みながら舌打ちし、再び走り出した。
(なんなんだよ...ちくしょう!)
河童の青年は内心苛立ちながら必死に走っていると、ふとある物に目に入り、河童の青年はある物の方に向かった。
(しめた!これで戦える!)
河童の青年が目に入った物は、川だった。
河童の青年は代々、水を操ることが得意な種族。
山の主である天狗も水を操ることが得意だが、河童と比べると劣る程の操作力。
河童の青年は急いで川に向かって走った。
川につくと、河童の青年は川に手を入れたその時、謎の痺れが河童の青年を襲った。
「!?」
反射的に手を戻して、川につけた手を見た。
見た目は何ともないが、それを対比するかのように指すらも自由に動かすことが出来なかった。
川を見ると、僅かに青白い細い光が川を走っていた。
それがなんなのか分からないが、河童の青年はそれを考える時間すら惜しいと思い、直ぐに川から離れようとしたが、既に遅かった。
河童の青年の背後に五人の
「・・・誰だお前ら・・・」
怒気の
すると、札から黒い
それを見た河童の青年は目を見開き、相手の正体を告げた。
「まさか・・・陰陽師か・・・!」
その言葉に、薄赤の狩衣を着た男が眉をひそめた。
「妖怪風情がその名を口にするな」
男の言葉が終わると同時に、黒い大蛇は河童の青年に向けて牙を向いた。
黒い大蛇は口を開き、勢いよく河童の青年に向けて飛んできたが、足を滑らして体制を崩してしまい、運良く噛まれなかった。
体制を崩して、思わず川に手を動かせる手をつけてしまった。
また手を動かすことが出来なくなると思い、一瞬で手を引っ込めたが、何故か手は自由に動かせていた。
河童の青年はもう一度川に手をつけて、水を
「ぐは・・・!」
不意の攻撃に膝をつきそうになったが、脚に力を入れて手に掬った水を大蛇に向けて勢いよく投げた。
大蛇は避ける暇もなくその攻撃に当たり、大蛇の身体に無数の穴が
大蛇はもう自分の意思で動くことが出来ないまま、
薄赤の狩衣を着た男の持っていた札も同じように塵になって消えていった。
それを見て、男は息を吐いた。
「あいつの攻撃をくらって倒れずに殺すとか、お前中々やるな」
男は大蛇について特に怒りも悲しみもなく、言葉を紡いだ。
「ところで、あと似たような攻撃何発耐えれるんだ?」
その言葉が合図に、側にいた他の陰陽師達がから札を取り出した。
札から出たのは、人程の大きさの
それを見て、河童の青年は絶句した。
今の攻撃でもう身体を動かすことが出来ず、立っているだけでやっとの状態であった。
陰陽師達はそれを知らず、お互いにアイコンタクトを取り、狼を出した陰陽師がトドメをさすことになった。
「やれ」
狼はその命令を聞き、河童の青年に向かって牙を出し、襲ってきた。
河童の青年は覚悟を決めて、目を
数秒だっても狼は河童の青年を襲わなかった。
不思議に思いながら目を開くと、そこには信じ難いものが目に入った。
河童の青年が見たのは、目の前に黒い狐の仮面を被り、青い羽織を肩にかけた男がたっていた。
視野を広げてみると、河童の青年を襲おうとしていた狼は、首を切られて塵になっていた。
河童の青年が驚いていると、一人の陰陽師が声を荒らげた。
「誰だ貴様は!」
陰陽師達は警戒の眼差しを向けていたが、仮面の男は特に反応はなかった。
狼を出した陰陽師が新しい札を取ろうとした時、陰陽師の
陰陽師は声を発することなく、額から血を流しながら倒れた。
「なぁ!」
側にいた陰陽師が倒れた陰陽師の方を見て驚いていると、仮面の男は一瞬でその男の首を鎌で殺した。
それを見て、新しい札を取り出そうとしたが、仮面の男はそれを見過ごさず、分銅を飛ばして、二人の陰陽師を殺した。
それを見ていた薄赤の狩衣を着た陰陽師は静かに仮面の男の背後に周り、札から出した刀振りかざした。
それに気がついた仮面の男は、鎌で刀を受け止めた。
陰陽師は距離を取り、仮面の男を睨んだ。
「誰だお前は?我らと同じでは無いな」
「・・・」
仮面の男は一言も言わず鎌を構えた。
すると、陰陽師は二枚の札を出して槍と二刀流の侍を出した。
「卑怯とは言うなよ」
仮面の男は小さく頷いた。
誰が最初に動くのか警戒していた。
そして、最初に攻撃してきたのは槍を持った侍だった。
命を貫く突きを仮面の男に向けると、仮面の男は横に小さく避けて、鎌で首を斬り、鎖分銅を手から離した。
鎖分銅を握っていた手で槍を掴み、二刀流の侍に向けて槍を投げた。
その槍が二刀流の侍の腹を貫き、後ろに倒れた。
仮面の男は陰陽師がいた方に顔を向くと、陰陽師は構えながら走ってきた。
陰陽師は横一文字に刀を振った。
しかし、仮面の男は一歩後ろに下がったせいでそれは空振りになり、仮面の男が鎌で身体を袈裟斬りにして斬った。
その攻撃が致命傷となり、陰陽師が出した刀と侍が塵になって消えていき、吐血しながら崩れ倒れた。
終始それを見ていた河童の青年は驚きが止まらなかった。
余りにも一瞬の出来事で何が起こったのか分からずいにいたが、一つだけ分かることだとすれば、最後に立っていたのは仮面の男だった。
一安心と言いたいが、河童の青年は未だ安心することは出来ない。
何故なら、その男は味方なのか敵なのか。
陰陽師を殺したから味方っとは軽薄な思考はしていない。
次襲われるのはもしかしたら自分なのではないかと思い、河童の青年は少しだけ回復した体力でそこから離れようと足を動かそうとしたが、仮面の男が声をかけた。
「もう大丈夫だ。僕は味方だよ」
その言葉に安堵したのか、河童の青年は視界が真っ暗になり、膝から崩れ落ちようとしたが、仮面の男が河童の青年の身体を支えた。
仮面の男は河童の青年を背中に乗せて、森の中に消えていった。
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