脇役英雄(仮題)

ヤク物

ある英雄の故郷

公国歴620年の夏、

アデス公国全土を震撼させる事件が起こった。

ミラール大帝国と国境を接する王国西部の貴族120と4家門、

その約半分の65家門が西部国境側が



広大な公国西部は、その半ばで線を引いた様に二つに別れ、

その線上に、 あの懐かしき我が家、ケレス子爵家の領地もあった。


──今生における俺の家は貴族家だったが、

取るに足らない普通の家だった。

国境からも遠く、西部全域に食料を行き渡らせる事を家職とする家だった。


誓って我が家にミラールからの調略は無かったし、

裏切り者の元西部貴族家共からの内応の誘いも無かった。


ただそこにあっただけ。


ミラール帝国と、裏切り者達の領地から、

奴らの目指す、西部央都の前にあっただけの、

奴らにとって場所だったのだ。


辺鄙で、長閑で、家格の割には民と近い。

のんびりした優しい親父殿のヨーゼフと、締まり屋のエマ母様。

真面目で出来の良い跡継ぎのヨナス兄さんと、その妻であるエレナ義姉さん。

姦しい姉のラァラがいて、


幸せだった、


涙が出るほど幸せだった。


変りの者の次男坊である俺、

は、呑気に剣と魔法の異世界を楽しんでいたのだ。


ケレス子爵領が地獄に変わったあの日まで。


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