第6話「告白ドッキリーその6」
「えっ」
「ちょっとは楽しめたかって、聞いてるんだけど?」
オレは如月の
「あの告白、嘘だったんでしょ」
「えっ!」
「それで、私を笑者にしたかったんでしょ」
如月は冷ややかに据わった目で、オレを睨み上げながら小首を傾げる。
「あの眼鏡掛けた、癖毛の、地味で暗そうな奴だよな」
「あー、あいつか。空気すぎて、話したこともねーわ」
「男に免疫なさそーだから、告ったら、めっちゃ慌てそう。想像しただけで、ウケるわっ」
「コロッと騙されそう! そのままやらせてくれるかもよ?」
オレは背筋が凍りつく思いだった。如月が突然復唱した言葉は、あの日の自分たちの会話だ。
「ああ言うことはさ、誰かが聞いてるかもしれない場所で、馬鹿みたいに大声で話さない方がいいよ。誰が聞いてるか分からないから」
(き、聞かれてた)
如月はスッと立ち上がり、かつてないほどの冷たい眼差しで、オレを見下した。
「あんたたちみたいなの見てると、虫唾が走るよ。他人の気持ちをまったく想像できない、平気で人を傷つける悪魔みたいな人間、本当に死んでほしい。私を馬鹿にしたあんたたちのこと、絶対許さないから」
オレは反射的に立ち上がった。いや、違う。違くはないけれど。ショックのあまり言葉が出てこない。如月はそのオレの表情を見て、ハハハとあざけ笑った。
「何、ショック受けてるの? あんたたちがやろうとしてたことと、同じじゃない?」
そうだ。オレは今、如月にされていることを、そっくり如月にしようとしていたのだ。如月は
「もう二度と、話しかけないで」
去って行く如月に、何も言い返すこともできず、オレは微動だにも動けなかった。美しい花火の光が、残酷にオレを照らし出していた。
***
私は下駄を脱ぎ、裸足で境内の階段を降りた。たまに見かける人たちは、夜空に咲く花火をうっとり見上げている。私はその花火がまるで、今の自分の心を映す鏡のようだと思った。
言ってやった。スカッとした。自分を馬鹿にする連中は、みんな死ねばいい。着け慣れないコンタクトで目が潤んできた。儚く散っていく花火の残骸が目に映った。
「ざまー、みろ」
つづく
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