第4話「告白ドッキリーその4」

 帰宅し、オレは自室のベッドの上に、制服のまま突っ伏した。


(やばい。このままじゃ、オレ)


 ミイラ取りがミイラになる。


 落ち着けと、自分を律する様にスウッと深呼吸する。これはドッキリなんだ。普段、自分の周りにいないタイプなので、混乱しているだけだ。だいたいあんな地味な女、全然タイプじゃない。


 それにもし、本当に如月のことを好きになってしまったら、あいつらに、どれだけからかわれるかと、ゾッとした。それを思うと、オレは大分冷静になって来た。どうかしていた。ドッキリだったと告白された時の、如月のことを思い浮かべて、モヤモヤした気持ちを吹き飛ばそうとした。

 

 ただ、ほんの少しだけ心の奥がチクリとした気がしていた。


***


 オレはその次の日から、何故だか如月のことが直視出来なくなっていた。この気持ちが何なのか分からないまま、祭りの当日を迎えることになってしまった。


***


七月十三日(日)


 祭りの当日は見事に晴れて、待ち合わせの駅前は、沢山の人々で賑わっていた。皆浮かれている。いや、本来祭りというものは、そういうものなのかも知れない。そんな風に通り過ぎる人々を、オレはボーと眺めていた。


 本当は、今日ここに来るか迷っていた。ドッキリだと何度自分に言い聞かせても、拭えない何かがある。始めは単なる罰ゲームで、お遊びのつもりだったのだ。軽く「笑える」だろうと気軽に始めたことだ。


 でも――


 これ以上、如月に関わってはいけない気がする。色んな意味で。やっぱり帰ろうかと思った時、後ろから呼び止められた。


「八神君、お待たせ」


 そこには、いつもと違う如月が立っていた。


(え、浴衣っ?)


 普段の膨張ぼうちょうした癖毛の髪を丁寧に結い上げ、可愛らしく鮮やかな飾りを刺して、薄水色のさわやかな浴衣に身を包んでいる。眼鏡をしていないせいか、いつもより目が大きく見える。その瞳で、オレの顔を覗き込んで来る。


(か、可愛い)


 きっと自分の為にわざわざ浴衣まで着て、こんなに可愛くして来てくれたのだと思うと、胸が詰まりそうになった。


(今から、オレ、こいつにドッキリだったって告白……するのか?)


 罪悪感で、オレの胸は押し潰されそうになった。ここは絶対浴衣姿を褒めるべき。分かっているのに、言葉が出なかった。言葉にしたら、自分が思っていることが嘘になる気がした。それがどうしても嫌だった。



つづく

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