第11話 柏木の一人旅

夏休みまで残り31日…

 私は柏木由紀、月から地球を調査しに来た魔法使いだ。

 今日は日曜日、地球では多くの人間がこの日が休日で、自分のしたいことをするという。

 ので、私は今電車に揺られている。月から見た地球はとても青かった、私はその青さが近くで見たらさぞ美しいと思い夢を見ていたのだが…地球は来てみれば月と変わらぬビルがあり、一面が道路で出来ていた。

 そんな話を廉にしたところ、そんなところは都市部だけだ、都市部を出て海とやらを見に行くと良いという。

 廉の言うとうり、少し電車に揺られていると、ビルの群れから飛び出し、緑が見えてきた。先日登った小山とは違い、周りには高いビルがほとんどない。

 未だに登りきっていない太陽がはっきりと見える。

 それから別の都市部に入ったが、私のワクワクは収まることを知らなかった。廉がよく教えてくれなかった海とやらは先程の景色以上に美しいのだろうと、胸が踊るようだった。

 楽しみにしている時間が過ぎるのはとても早く、あっという間にあと4駅で海が見れる場所までやってきた。

 私は、海を初めて見る瞬間はゆっくりと自分の足で歩いていたいと思い、残り2駅のところで降り、歩き出した。

 進むにつれ風が涼しくなり、独特の香りがして、私の心は最高潮に達していた。

 そしてそれが見えた瞬間、私は駆け出していた。

 白い浜に、青く、そして光を反射して輝く海、私が見たかったものはこれだと、私がここに来た意味はここにあったんだと、そう思わせる程の美しい景色に、私は心奪われた。

 何時間だっただろうか、日が登り、少し傾くまで私はその景色を眺めていた。不思議と、飽きることは無かった。

 時折跳ねる魚、都市部に比べ涼しい風、キラキラと光る水面、全てが私を引き付けて離さなかった。

 私は、その景色を写真におさめ、帰りの電車に乗った。

 これから始まる旅へのワクワクを止めることは、もはや不可能だ。

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