第2話:アンブレラ・ローダンセマム。

コスプレイベントで、後ろ向きにヘタレ込んでた女の子。

天気君は写真を撮らせてもらおうとその子の前にこそこそ回り込んだ。

見るとその子はエルフのコスプレをした女の子だった。


だけど顔はずず汚れてるし衣装も汚れてところどころ穴も開いてたりしてる。

汚れてはいるけど、そのハンデを物ともせず天気君が我を忘れるくらい

その子はめちゃ可愛かった。


写真を撮らせてもらおうと思ったけど、それは後回しにして天気君は

エルフコスの女の子に見とれてしまっていた。


(エルフなんて最高じゃん・・・しかもめっちゃ可愛いいし・・・)

(せひともこの子と友達を超えたくらいの仲良しになりたい)


って天気君は下ごころ丸出しでそう思った。

可愛いってだけで・・・男が女の子に魅了されるって・・・その子の

性格も分かんないんだか、まずはビジュアルからだろう・・・そんなもん

だろう。


天気君は迷わず声をかけた。


「君・・・エルフコスの君、大丈夫?」


「え?、あ〜どうも〜・・・すいません、あの、ここどこでしょう?」


「は?」


「気がついたらこんなところにいたんです・・・」

「ここどこでしょう?」


エルフコスの女の子は天気君にすがるように不安な声でそう言った。


「ん〜っと・・・?」

「ここどこでしょうって?・・コスプレイベントの会場だけど・・・

君、知ってて参加してんじゃないの?


「よく分かりません・・・」

「あの私、教室で薬の調合してたんですけど、そこまでは覚えてるんです」

「だけど気が付いたらここにいて・・・」


「教室?・・・薬の調合ってなに?」


「私、魔法学校に通ってて・・・」

「あ、私、アンブレラ・ローダンセマムって言います」


「・・・あ、僕、明日野 天気あしたの てんきって言います、よろしく」


「でね、気がついたらここにいたんです、私」


「うん、それはさっき聞いたよね・・・」


「だからね・・・教室で薬の調合・・・」


「それも聞いた・・・」

「あのさ、君どこから来たの?・・・家はどこ?」


「アルフヘルムって国のアルモース地方ってところの片田舎です」

「魔法学校二年生です」


「んんん?・・・何言ってんのかな〜?、アルフなんちゃらってなに?・・・」

「魔法学校って?」

「君・・・普段ゲームとかよくやってる・・・たとえばファンタジー系とか?」


「ゲーム?」


「ファンタジー系のゲームにハマってるんじゃないの?」

「現実とゲームの世界と混同してない?・・・ゲームにハマり過ぎるあまり

そういう人よくいるんだ」


「分かりません・・・」


「あのさ悪いことは言わないから家に帰ったほうがいいよ」


(頭おかしいんじゃねえの?)


「一度家に帰って病院にでも行けばあ?・・・なんか体も擦り傷あるし

あっちこっち血が滲んでるみたいだしさ」


(可愛い子だけど、関わんないほうがいいかも・・・)


「じゃ〜ね、・・・さいなら・・・気をつけて帰んなよ」


触らぬ神に祟りなしって思ったんだけど天気君は内心ではエルフコスの、

その子のことがめちゃ気になった。

後ろ髪引かれる思いで他のコスプレーヤーを求めて会場内を歩き始めたが、

さっきのエルフコスの女の子が天気君のあとを付いてくるじゃないか?


「え〜なについて来てんの?」

「悪いこと言わないから帰った方がいいって・・・」


「あの・・・お願いです、私、右も左も分からなくて・・・迷惑とは思います

けど・・・よかったらあなたのおうちに連れてってもらっていいですか?・・・

ひとまず・・・」


「はあ?・・・ひとまずって?」


「もう訳がわからなくて・・・」


つづく。



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