2−17 2人の秘密の会話
「シド……」
「お願いします、ジェニファー様」
あまりにも真剣に頼んでくるシド。これ以上秘密にしておくわけにはいかなかった……というよりも、誰かに話を聞いてもらいたかった。
「分かったわ……全て話すわ。でも、お願い。今からする話は、絶対に秘密にしてくれる。ニコラスには言わないと約束して欲しいの」
「分かりました。こちらもジェニファー様が話したくないを内容を無理に聞き出そうとしているのです。絶対にニコラス様には言わないと誓います」
シドは頷く。
「実は……」
ジェニファーは重い口を開いて話を始めた。
15年前、どのような経緯で『ボニート』へ来たのか。何故ニコラスやシドの前でジェニーと名乗っていたか。そして、突然姿を消してしまった理由を……。
****
――16時半
「そ、そんな事情があったのですか……?」
ジェニファーから話を聞き終えたシドの顔には驚きの表情が浮かんでいる。
「ええ。あの日、いつも以上にジェニーの喘息が酷かったわ。何を言われようとも、町に行かなければジェニーは命の危険に晒されることも無かったし、フォルクマン伯爵の信頼を失って憎まれることも無かったわ……。それに、ニコラスや貴方の前から突然いなくならなくて済んだかもしれないのに……全て私がいけなかったのよ」
今でもフォルクマン伯爵家を追い出されときのことを思い出すと辛くてたまらない。
涙が枯れるほどに泣き崩れたあの日。あれほど優しかった伯爵の激昂した姿、親切だった使用人達から向けられる冷たい眼差しが今も忘れられない。
すると――
「何を仰っているのですか!? ジェニファー様は何一つ悪くないではありませんか!」
突如、シドが感情を顕にした。
「え?」
今まで冷静だったシドの姿しか見たことが無かったジェニファーには驚きだった。
「ジェニファー様を追い詰めたのはジェニー様です。自分のフリをするように命じたのも、町へ行くことを拒んだジェニファー様を無理に行かせたのも全てジェニー様が自分で撒いた種ではありませんか。むしろ被害者はジェニファー様の方です」
だが、ジェニファーは首を振る。
「シド、ジェニーを悪く言わないで……私は元々ジェニーのお世話をするためにフォルクマン伯爵家の別荘へ呼ばれたの。そのためのお金だって貰ったわ。病弱で外に出ることも出来ない彼女を置いて、ニコラスと楽しい時間を過ごしたのは事実なのよ。本当はずっと傍にいなければならなかったのに……。フォルクマン伯爵に恨まれるのは当然よ。私はジェニーに恨まれても良いはずなのに、彼女は自分が亡くなった後にニコラスの妻に迎えて欲しいと遺言を残してくれたのよ? こんな私のために」
今にも泣きたい気持ちを必死に抑えるジェニファー。
ジェニファーは自分を責めるが、シドにはどうしてもジェニーが悪いとしか思えなかった。
「ジェニファー様。俺はジェニー様とお会いしてすぐに、ニコラス様の元を離れなければなりませんでした。……その理由を今からお話しいいたします……」
シドは、少し悲しげな目でジェニファーを見つめた――
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