3−11 お礼のプレゼント
「ここがこの町で一番大きなアクセサリー屋さんだよ」
ニコラスが案内してくれた店は赤レンガ造りの建物だった。扉には『手作りアクセサリーの店』と書かれた看板が取り付けられている。
「手作りのアクセサリー屋さんなの?」
「そうみたいだね。僕は一度も中へ入ったことが無いけど。それじゃ入ろうよ」
アクセサリーの店へ入るのが初めてだったジェニファーは少し気後れしてしまった。
(でも……私みたいな子供が入っていいのかしら……?)
「どうしたの? ジェニー。中へ入ろうよ」
ニコラスがジェニファーの手を引っ張る。
「え、ええ。入るわ」
頷くと、ニコラスは扉を開けて2人は店内に入った。
「わぁ……」
中に入った途端、ジェニファーは感嘆のため息をついた。
店内には何台もの棚が置かれ、ネックレスや指輪等様々なアクセサリーが並べられていた。
奥のカウンターにいた女性店員が2人に気付いた。
「いらっしゃいませ……あら?」
「こ、こんにちは」
「僕たちはアクセサリーを見に来ました」
子供だけで来たことに女性店員は一瞬困惑したが、2人の身なりがとても良いことにすぐに気付いた。
(きっと、何処かのお金持ちか貴族に違いないわ)
「何をお探しですか?」
店員の質問にニコラスはジェニファーを振り返った。
「ジェニー。どんなアクセサリーが欲しいの?」
「ブローチが欲しいのだけど……」
「ええ、ありますよ。こちらの棚にあります」
女性店員の案内で、2人はブローチの棚の前にやってきた。
そこには花の形をしたものや、動物の形を模したブローチ等が並べられている。
「まぁ素敵!」
初めて見る美しいデザインにジェニファーの目が大きく見開かれる。
「ジェニー、どれがいいの?」
「そうね……」
どんなデザインのブローチがジェニーに似合うかと、ジェニファーは想像してみる。
そして、一つのデザインブローチに目がいった。
「これ……可愛くて、素敵だわ」
それはウサギの形をしたブローチだった。目の部分には赤く光る小さな石が埋め込まれている。
「こちらのウサギのブローチがお気に召しましたか?」
「はい。とても気に入りました」
女性店員の言葉に頷くジェニファー。
「こちらの品は銀貨3枚になりますが、お買い上げされますか?」
「銀貨3枚……」
ジェニファーは毎週、伯爵家から金貨1枚を貰っている。銀貨10枚分が、金貨1枚なので今のジェニファーには余裕で購入できる品物だった。
「ではこれを下さい。僕が支払います」
ニコラスはジェニファーが先に返事するより早く、ポケットから財布を取り出した。
「え!?」
その言葉に驚くジェニファー。
「言ったよね? お礼をさせて貰いたいって。ジェニーにプレゼントさせてよ。だってこのブローチが気に入ったんだよね?」
「ニコラス……でも……」
「遠慮なんかしなくていいってば。これでお願いします」
ニコラスはポケットから財布を取り出すと銀貨3枚を女性店員に渡した。
「では、お包みしますか?」
「う~ん……いいです。このまま下さい」
ニコラスの言葉に、女性店員はそのまま手渡した。
「はい、ではどうぞ」
店員からブローチを預かったニコラスはジェニファーに尋ねた。
「ジェニー。ブローチをつけてあげるよ。どこがいい?」
「え!? あ、あの‥‥‥!」
その言葉に焦るジェニファー。
「どうしたの? ジェニー」
首を傾げるニコラスに困るジェニファー。
(どうしよう。これはジェニーへのお土産なのに、私がブローチを受け取るなんて……でも断れないし)
「そ、それなら帽子につけて貰おうかしら?」
ジェニファーは帽子を外すと、ニコラスはウサギのブローチを付けた。
「はい、ジェニー。かぶってみてよ」
「ええ」
言われるまま帽子をかぶるとニコラスと店員が笑顔になった。
「わぁ~よく似合っているよ」
「本当、まるでお嬢様の為にあるようなブローチです」
「ありがとう……」
ジェニファーは寂しい気持ちで、ニコラスにお礼を述べた――
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