3−5 ささやかなお茶会
ニコラスの怪我の治療を終えたところで、シスターが戻ってきた。
「お待たせ……あら? もう手当は終わったのですか?」
「はい、終わりました」
返事をするジェニファーにシスターは近づく。
「……まぁ、上手に包帯を巻いていますね。怪我の治療に慣れているのですね」
ニコラスの手当の後を見つめながらシスターが感心する。
「あの、クッキーを配って頂けましたか?」
ジェニーに子どもたちに配るように頼まれていたのでジェニファーは心配だった。
「ええ、もちろんです。みんな、喜んで食べてくれています。お二人も今から食堂へいらっしゃいませんか?」
シスターの言葉に、ジェニファーはニコラスに尋ねた。
「私は食堂に行くけど、ニコラスはどうする?」
「もちろん、僕も行くよ」
「それでは、皆で食堂へ行きましょう。子どもたちも待っていますから」
「「はい」」
シスターに促され、ジェニファーとニコラスは頷いた――
前を歩くシスターが2人に説明している。
「この教会には0歳の男の子と2歳の女の子。それに5歳の男の子がいます。私以外に、もう一人シスターがいて、今は5人でこの教会で暮らしているのですよ」
「皆、僕たちよりも年下なんだね」
ニコラスがジェニファーの耳元で囁いてきた。
「そうね。私は小さい子供が好きだから楽しみだわ」
家に残っているニックとサーシャ、それにダンの姿が思い浮かぶ。
「ふ〜ん。ジェニーは小さい子供が好きなのか」
「ええ、だって家に……」
そこまで言いかけ、ジェニファーはとっさに口を閉じた。
自分が今はジェニーであることを忘れていたのだ。
「え? 家に? ジェニーは弟か妹がいるの?」
「いいえ、いないわ。あのね、家に小さい子が遊びに来たことがあったの。そのとき、とても可愛くて好きになったのよ。ところで、ニコラスには弟か妹がいるの?」
咄嗟に誤魔化すために、ジェニファーは質問した。すると、何故かニコラスの顔が曇る。
「……僕には……」
「ニコラス?」
そのとき。
「食堂に着いたので、扉を開けますね」
不意にシスターが声をかけて、話は中断された。
「はい、お願いします」
ニコラスが返事をすると、シスターは木製の古びた扉を開けた。
ギィ〜……
すると木製の長テーブルに並んで座っている小さな子ども達が、シスターと一緒に楽しそうに話している姿があった。
シスターの腕の中には赤子が抱かれている。
「皆、今日はお兄さんとお姉さんが教会に遊びに来てくれました。大きな声で「こんにちは」とご挨拶しましょう」
シスターの言葉に、2人の子どもたちは大きな声で挨拶した。
「「こんにちは!!」」
「フフ、こんにちは」
「こ、こんにちは」
小さな子供に慣れているジェニファーは笑顔で挨拶するも、ニコラスは何処か気後れした様子をみせている。
「どうぞ、お二人共。こちらに来て、私達と一緒にお茶を飲みませんか?」
赤子を抱いたシスターが笑顔で手招きしてきた。
「はい!」
ジェニファーは笑顔でテーブルに駆け寄り、「ま、待ってよ!」と後からニコラスが追いかける。
2人は席に着席すると、楽しいお茶会の時間が始まった――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます