第16話 NSAってこんな捕物みたいな事も出来んのか?!
YRP横須賀リサーチパーク、石立重工研究施設の正門前。
仕事を終えた英輔のSUVが出て来て、いつものように近くのホテルへ向かおうというところ。
車の前に手を広げて立ち塞がる十文字。
運転席の窓から、英輔が顔を出す。
「誰かと思えば景隆君じゃないか。いったいどうしたんだ?」
「
そう言って、後部ドアを指差す十文字。
* * *
沙織もどきを車に残し、外に出る英輔と十文字。
「大事な話って言うのは何なんだい? 景隆君」
「3週間程前、
英輔の顔が強張る。
「義姉さんは全部知ってます。義兄さんがその女性と付き合っていることも。その女性がどういう存在かということも」
十文字は、顎で助手席の女性を示す。
「でも、技術情報の漏洩に加担するのは良くないと思いますよ。こういうの、もう、止めにしませんか?」
英輔は、俯いたまま、震えた声を絞り出す。
「沙織には、退院するまでにちゃんと話そうと思ってたんだ……。それまでに何とか結果を出して……。あと、もう少し時間が欲しい。景隆君、2週間、いや1週間でいい、時間をくれないか?」
「義姉さん、聞いてました? どうします?」
十文字はスマホを取り出して尋ねる。
『英輔には、じっくりお灸を据えたいところだけど、その前に、部外者には退場願いたいかな』
「そうですね。とりあえずは、その女性を何とかしてから、話の続きをしましょう」
そう言うと、十文字は、おもむろに助手席のドアを開け、沙織もどきに抱きつく。
「景隆君、彼女に何をするんだ!」
「え? ちょっと?!」
急に被さってきた十文字を両手で押しのけようとする沙織もどき。
十文字は、その女の右耳に耳打ちするかのように顔を近付けて英輔の死角を作り、左耳に無効化ギアを差し込んだ。
沙織もどきは、ぐったりと頭を垂れた。
「景隆君、いったい彼女に何をした!」
十文字に詰め寄る英輔。
その後ろへ、すっと滑り込んできたセダンから、バタンバタンと2人の人物が降りて来て、英輔を挟みこんだ。――橿原と保奈美である。
「国家安全保障局のものです。重松英輔さん、外為法違反の疑いで、あなたにお話を伺いたいのですが、ご同行頂けますか?」
――NSAってこんな捕物みたいな事も
出来んのか?!
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