アスファルト

梅林 冬実

アスファルト

アスファルトは細く続く

なだらかな坂を上ればそこは


そこは何もない街

人気のない街をたまに行き交う車

どこから来てどこへ行くのか

誰に告げることもなく

エンジン音だけ響かせ通り過ぎる


愛に狂い恋に迷い いつしか君が見えなくなって

僕はひとり 坂道を上っている


人気のない街は僕の心のほんの薄い部分を

少しだけ救ってくれる

人混み 群れる人々 楽しそうな男女

そのいずれにも僕は交われず

誰もいない歩道の 誰もいない街角の

彩りと呼ぶには あまりにお粗末な淡色の

ただ漂うだけの生体として

朔風に吹かれている


薄暗い空 冬枯れた街路樹 目に染まるレンガ

ひとつひとつを心に留め置こうとすれば

今よりずっと難しくなる

僕だけが どうにも


できることなら

愛する人と気儘に生きたかったけれど

それさえもできなくて


ずっとひとりでいればいいなんて

言葉はこの胸を切り裂いて

君のいう通りに時を過ごしてみたけれど

寂しさには抗えなくて


誰も困らせるつもりなんかなくて

だから何かの拍子に 誰かの表情が曇るのなら

それは僕の所為だから 僕は音を立てずに去るけれど

それを卑怯だと詰られたなら


どこが?

誰が?

僕が?


自分を失する 詰め寄ってしまう


自分のことには必死になれると

君は僕を嘲ったけれど

それは誤りだ

僕は僕のことなんてどうでもいいと

いつもいつも思っているから 考えているから

僕が僕のために誰かに向き合うなんて 有り得ないから


僕が大切に思う人の

僕が負担になるのなら

僕は辛くて堪らないから

君がふと空を見上げたとき

街路樹に目を移したとき

レンガの朱が目に宿ったとき

去り行けばいいと 考えていただけなんだ


細く長いアスファルトを僕は歩く

靴音が響く

タイヤがアスファルトを鳴らし

僕の靴音は消え失せる

その瞬間 僕が感じることを

君に上手く伝えられたなら

僕が君を傷付けることはなかったのだろうね きっと

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アスファルト 梅林 冬実 @umemomosakura333

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