ゾンビ&モノポリー
「したいわけじゃないわ。しなきゃいけないからしてるだけ。勘違いしないで」
「まだ俺のこと嫌いです?」
「…………。いいからさっさと脱いで」
かれこれ数週間が経過した。
真弘と星那はまだ真弘の自宅に引きこもっていた。
というのもここから移動して何処に行けばいいのか皆目見当もつかなかった。
テレビもラジオも意味をなさず、スマホも電池式の充電器でなんとか充電は出来たが圏外でなんの役にも立たなかった。情報がまるで無い現状。自分ら以外の生存者は何処にいるのか、そもそも他に生存者は居るのか定かでは無い。それなのに下手に外を出歩くのは危険だった(主に真弘が)
真弘を置いてゾンビに襲われない星那が1人で外に出ることもあったが、それは星那の体調が安定しなかったので長時間に渡っての活動は出来なかった。
やはり星那は定期的に真弘の生命エネルギーを体内に受け入れないとゾンビ化が進行するようである。
結果として引きこもり。食う、寝る、まぐわう。3大欲求を満たすのがメインな退廃的な日々を送っていた。
初めの頃は第一印象が最悪だったこともあり、星那は真弘と少し距離を置こうと思った。しかし、1人きりだと、ふとした瞬間に猛烈な不安に駆られる。星那のゾンビになる前の記憶は朧気で鮮明に思い出せない。家族は居たような気がするが顔すら思い出せなかった。頭の中に居るまともな人間は真弘だけだ。まるで世界に2人きりなってしまったようで、その真弘すら傍に居ないとなると頭がどうかしてしまいそうな気がした。
結果、星那はなるべく真弘と同じ空間に居ることを選んだ。
幸いと言うべきはバカでスケベではあるが真弘がそこまで悪いヤツでは無かったことか。基本的には星那の言うことはなんでも聞くし、ことある事になんやかんやと理由をつけては引っ付いてくる。そんな真弘を星那はデカイ犬か何かのようだと思った。まだ半分ゾンビだというのに、そんなことをまったく気にもとめずに真弘は星那に擦り寄ってくる。まあ、ゾンビ相手に嬉々として腰を振る変態なのだから、そんなものかとも思うが、そんな真弘に星那の心は少しだけ救われていた。
電気はなくとも少なからず娯楽はあったが、ヤルことといえばヤルことだった。必要な行為ではあったが単純に真弘がスケベだったというのもある。
毎日、必ずヤッた。なんだったら食事と睡眠を挟みながらも数日間ヤリ続ける日々を送ったこともあった。
初めのころは感覚が鈍く、あまり感じることのなかった星那だったが、交わる回数を重ねる事に少しづつ身体に変化が訪れていく。
鈍かった感覚が徐々に鮮明になっていった。脈打つアレの形がハッキリと感じ取れるようになっていく。冷えきっていたはずの身体が生命の熱を帯びていく。そんなこともあり、真弘と交わっている最中こそ自分は生きているんだと、そう強く実感できた。
「んッ…………。はぁ……はぁ……」
「オッ、しめつけしゅごぉ……。もしかしてイキました?」
「………………別に。そんなこといいから、早く中に出して」
「はい!頑張ります!」
まあ、そのことは恥ずかしいし、何となく癪に障るから真弘には伝えない星那である。口では必要なことだからだとか、仕方ないだとか、しょうがないだとか、したいわけじゃないとか言っている。内心はその真逆で、もっと交わりたい……なんだったら四六時中ずっと繋がっていたいとさえ思っていた。絶対に言わないが。
それに行為中は余計なことを考えなくていい。実際問題、こんな引きこもってパコってばかりいていいわけがない。これから先もずっとこうしていられるわけじゃない。水や食料を調達してくるのも、やがて限界が訪れるだろう。けど、まだ大丈夫。2人だけなら余裕はかなりある。だから、まだ。
そうして先の不安を誤魔化すように快楽に溺れた。
その甲斐あってか、星那の身体の大部分は通常の肌色に戻り、青紫に変色している部分は残り僅かだ。
「思ったんですけど……星那さん以外ともヤレば、その人のことを人間に戻せるのでは?」
「…………」
「……星那さん?」
「………………それは、危険だからヤメた方がいい」
「そうですか?」
「だいたい……確証がないわ。たまたま私が戻れただけで、他の人にも効果があるとは限らない。もしも逆に今度は真弘が感染してゾンビになってしまう可能性だってなくもない。たまたま私と真弘の相性がよかっただけ。その可能性を捨てきれないのに危険を犯してまですることではないわ。あなたがゾンビ化してしまったら私もゾンビに戻ってしまう。私とあなたは一蓮托生。軽率な行動は控えるべきよ。それに仮に成功したとして、人が増えればそれだけ水や食料の消費だって増える。2人が3人になれば単純に1.5倍よ。 そうなってくると厳しいものがある。あまりにリスクが多すぎるわ」
急に早口でまくし立てるように星那は言う。
「だから………………私、以外となんてしないで」
リスクばかりだとは言うがメリットになる部分もあるだろう。だが、それよりもなによりも、星那の感情的な部分がそれをするのを反対した。真弘が自分以外の誰かとしていることを想像したら、無性に腹がたち気分が悪くなった。
「真弘の相手は私だけがするから、軽率な行動は絶対にしないで。わかった?」
真弘は「そういうことじゃない気が……」と、ちょっと思いながらも星那の言うことに大人しく従った。
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