シスター&ドリームチケット



「なんで家の中に居るのッ!?」



不法侵入シスターから慌てて飛び退く。いかんいかん。あんなたわわに触れていたら理性なんぞ瞬殺だ。



「鍵が掛かっていなかったので招かれてるのかと思いまして」



ということらしい。これは鍵をかけなかった俺のミス……ミス?鍵かかってなかったら入っていいわけなくない?「先っぽだけだから」って言って先っぽ入ったらこれは奥までGOしてええやろって根元までずっぽり入れちゃうようなもんでしょ。あっ、いやそれは暗黙の了解だからいいのか?致命的な例えミス。やっぱ俺のミスだわ(?)。


そんなんでシスターに不法侵入された。警察呼んだ方がいいかな?いや謎の超理論で俺が捕まることになりそうだからやめとこう。



「「…………」」



シスター乱入で示し合わせたように美希と詩良先輩が俺の背後へと隠れる。はいはいコミュ障コミュ障。初対面の人は警戒してナンボですねー。



「シスターさん……それにしてもおっぱい大きすぎやしないかい?何を食べたらそんなダラしない育ち方をするのかな。あっ、真弘くん餓死しそうだからそろそろ食べ物おくれ?」



失礼極まりない腹ペ子。こやつは人見知りはしないが、誰彼構わず余計なことばかりを言う。そんなんだからオマエはみんなから煙たがられるんだぞ。これはこれでやっぱりコミュ障。波子よ、オマエはとりあえず黙っとれ。



「えっと……ムチムラさん?とりあえず家から出ていって?」


「そんなこと仰らずに。なんとかお話だけでも聞いて貰えないでしょうか?少しでいいのです。ほんの少しだけ、先っぽだけでもいいのです」



シスターが1歩踏み出す。振動でシスターが胸に装着していたキングスライムアーマーがたゆんっと揺れた。おほっ。


くっ……!一瞬、理性が飛びかけた。確かに小さい方が好きではあるが、この大きさは卑怯なり。だってみるからに柔らかいもの、包まれたら絶対すごいことなるもん。とてもすごい。凄くすごい(語彙力消失)。


この場に魔獣が居なかったら拐かされて即刻静かな個室での語らいに発展していたことは間違いない。耐えろ理性。ここで欲望に身を任せたら魔獣共に全身の骨をバギバキに砕かれ絶命するぞ。何それ怖すぎ。こんなんデストラップじゃん。回避回避。



「今立て込んでるんで無理です。お引き取り下さいムチムチさん」


「そうですか……。でしたらこの契約書にサインだけでもして頂けませんか?お名前を書いて頂くだけなのでお時間は取らせません」



ずずいとムチムチシスターは契約書らしき紙ペラを手ににじり寄ってくる。


なんでそうなる。その流れで何故サインが貰えると思うのか。理解に苦しむ。


まったく。契約書ってなんやねん。コレ絶対サインしたらダメなやつだよね?サインしたらそれで最後、怪しい宗教団体に入信させられて家族諸共けつ毛まで毟り取られるヤツよね?


チラリと契約書を見る。


そこには婚姻届と書いてあった。



「……ちょっとその契約書を見せてもらってもいいですか?」


「っ!サイン頂けるのですね!ありがとうございます!」



そんなことは一言も言ってない。明るい表情のムチムチシスターから紙ペラを受け取って見る。


うん。やっぱり婚姻届だ、コレ。


紛うことなき婚姻届だった。しっかりとシスターの名前が既に記載済みでもある。いやある意味では契約書だとは思うけど契約書ではなくない?終身雇用契約的なこと?どういうことなんですかー!僕にもちゃんと理解できるように説明くださーい!


心の叫び。いくら叫べど誰が説明してくれるでも無し。自分で考えろと?はい、考えます。



タイトル『見ず知らずの爆乳シスターが俺を悪魔から助ける為に家に押し掛けてきた〜契約書と称して婚姻届にサインしてくださいと迫ってくる。聖職者とは言い難いスケベなムチムチボディーに誘惑されて理性は決壊寸前です。このままゴールインしちゃってもいいですか?〜』


こんな感じ?昨今の作品事情に漏れぬクソ長タイトル仕立て。FA〇ZAで好評発売中のASMR?何それ聞きたーい!


じゃなくて。


いやでも現状を押し掛け女房系ラブコメの導入部分と考えるとおかしなことは何も無いのではなかろうか?


突如として来訪する見知らぬ美少女。初対面ながら何故か既に好感度はMAX。最初は渋るも「貴方に拒まれたら行くあてがありません」とか適当に言っとけば秒で籠絡される主人公。そこからなあなあで始まる美少女との同居生活……もはや使い古されたテンプレ展開。


んなこと実際にあるわけねーだろ常識考えろ!とは思うが男の子的には一度は体験したいであろうシチュエーション。ヒキオタの欲望に塗れた夢の顕現。


それが今まさに俺の身に降り掛かっているということなのか?素晴らしい!是非ともムチムチシスターさんと同居がしたいヤリたい搾りたい!


いやー、こんなクズな俺にもこんなご都合主義展開が訪れるなんてね。来ちゃったかな?俺のラブコメ時代が来ちゃったかな?



……このタイミングで?



もっかい言うね?



このタイミングで?



タイミング悪すぎん?


タイミング糞すぎん?


なんで今のタイミングなの?



手を伸ばせば掴める位置に俺たちのドリームシュチュエーションがあるというのに……!めくるめく爆乳ドスケベシスターとのちょっとどころじゃないエッチな共同生活が待ってるっていうのに!


背後からのしかかってくる極圧プレッシャーで指1本動かせない!なんと情けない!けど!やっぱ命には変えられねーよ!俺、死にたくないもの!



「ささっ、真弘様。そちらの契約書にサインをお願いしますっ!」



ぬっ、と俺の両サイドから腕が生える。2本の腕は俺が手にしていた契約書改めて婚姻届と言う押し掛け女房系ラブコメ行き特急列車の切符……その端と端をそれぞれ掴んだ。



ビリビリビリビリッ。



「あっ……!?そんなっ……!」



そうして俺たちの夢は魔獣2匹に容赦なく引き裂かれてしまうのであった。












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