S.N.S. ~Sagami Network Society~
光命
第1章 蜘蛛の糸
第0話 事件解決
異形とは--
妖怪、怪物、異星人など、人とは異なる種族のことを指す。
この世は人と異形が共存している。
いや、共存ではない。
人が異形をある区画に押し込み、監視、管理、研究をしているのだ。
異形たちの中には自由と平等を訴えるものもいる。
人の中には異形の撲滅を叫ぶものもいる。
さまざまな思想が入り乱れ、複雑に絡み合っているのだった。
世の中は極限状態。
張りつめた糸のように、いつ切れてもおかしくない。
危うさをはらみ、時が過ぎていく。
明日の世界はどうなっているかは、誰も知らない。
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第0話
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事件は解決した―――
今回の事件はある青年が計画をしたものだった。
現場はとあるマンションの一室。
窓ガラスは赤く染まり、フローリングの色もわからないほどだった。
そこに横たわる女性には4本の大きな傷。
如何にも人ならざるもの、異形が起こした事件といった現場だった。
相神翔は改めて送られてきた写真の数々を画面に映し、スライドしながら眺めていた。
スマホ越しの写真でも、異様な光景は明らかに伝わってくる。
この事件は、現場の状況から、当初異形が起こした事件と断定してネットニュースは報じていた。
もともと今の世の中は異形を心良く思わない風潮がある。
それだけに、尚更ニュースは広まりやすく、またたくまに世の中の話題をさらっていた。
どのチャンネルもネットニュースもまず一番に取り上げていたくらいだ。
もともと異形を管理すべしとの声も大きかったが、この事件でさらに大きくなってきた。
国や政府にも、異形を従来以上により管理するべきだと声をあげる人たちが、デモをあちこちに起こしていた。
それだけ今回の事件の行方が注目されていた。
しかし、この事件を起こした真犯人は、ごく普通の人、若い男だった。
それもトラブルでも、怨恨でもなく、異形の恐ろしさを世間に知らしめるためという理由だけでだ。
「そんなことで、人殺しをするなんて……」
仲間たちとの事件の情報のやりとりを見返しながら、相神翔はつぶやく。
『ありがとう、みんな』
『みんなからの情報があって事件は解決できたよ』
『助かったよ』
以前から付き合いのあった仲間内のグループチャンネルにそう書き込んだ。
みんなから直ぐに反応がやってくる。
事件解決をみんなが喜んでいた。
そんな反応を見ながら、ベッドに寝転がり、天井を眺めた。
「人と異形が共に生きることが出来るのだろうか」
「いや、共に生きることを目指すんだ」
「これからも人のため、異形のために出来ることをやろう」
自らの境遇を重ねていく。
「人と異形のハーフである僕だからこそ、出来ることがあるはずだ」
「絶対に人と異形は分かり合えるはず」
そんなことを考えながら、目を閉じて、相神翔は眠りについたのだった。
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