ハリネズミのハリー第5話
@peacetohanage
第1話
店先の黒板には、珍しくクローズの文字が記されています。
しかし何やらカフェの店内からは、幾人かの会話が聞こえてきます。
キッチンには店主のハリーが勿論。
そうしてたったの五席しかない店内には、一、二、三、四…四人もの人影がごった返しています。
五つのテーブルの上には、食パンが二斤とそれぞれのお皿に盛られたハム、ベーコン、卵、レタス、キュウリ、トマト、生クリームに幾つかのフルーツ!
きっとまだキッチンには、何か有ったかもしれません。
ハリーはバターを持ちながら、四人の元へとげとげ現れます。
「さぁ、誰がバターを塗る?」
と猫。
「じゃあ、僕が食パンを切るよ!」
と犬。
「私がフルーツサンドを作るわ?任せて!」
と蝶のお姫様。
「とんとんと僕が具材を挟むよ?」
と小豚。
ハリーは猫にバターを手渡します。
「僕はバスケットに布巾を敷くよ?今日はシェフ業もクローズかな」
ハリーは再びキッチンへとげとげ戻ってしまいました。
今日は客席がキッチンなのです。
さぁ!五人のわがままサンドイッチ作り大会が始まりましたよ?
好きな物を好きなだけ挟む特別なサンドイッチです。
何てたって、それらが完成したら皆で近くの公園まで紅葉見物をしに行く予定なのです。
「ねぇ、ハリー!サンドイッチは何故生まれたの?」
と蝶のお姫様。
「イギリスのサンドイッチ伯爵は、ゲームが大好きで…食事の時もゲームが出来る様に、片手で食べられる物を頼んだそうだよ?そこでパンに具材を挟んだサンドイッチが生まれたのさ」
「さすがはハリーだ!」
犬はベーコンをちょっと摘み食いしました。
「今日11月3日はサンドイッチ伯爵の誕生日でも有り、いいさんどの日とも呼ばれているのだよ」
「語呂合わせだな?とんと合点が行く!」
小豚はトマトを十枚も挟みました。
食パン二斤が、今は八切れのサンドイッチに様変わり!
どれも分厚くて豪華で、片手で食べるのは至難の業に思われました。
ハリーはそれらをバスケットに並べ終わると、鍵を持ち出して皆を外へ促します。
「さぁ、店を開けるからね?端から順々に通りへ出た出た!」
「ハリー、バスケットは絶対に忘れないでね?」
紅葉見物は大成功。
皆で美味しいサンドイッチを二切れずつ平らげました。
ハリーのサンドイッチはBLTとマンゴーのフルーツサンドでした。
皆はお腹一杯になると、公園の野原に仰向けになり青空の雲を眺めます。
小鳥がつぃっと一回転をして、木の葉の影に姿を隠しました。
きっと美味しい匂いに誘われたのでしょう?
「ハリー、明日のおすすめは何にするの?」
「さぁ、どうしようかな?木枯らしの吹くまま、気の向くままかな?」
おわり
ハリネズミのハリー第5話 @peacetohanage
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