MONSTER:EDEN〜魔物達の生存大戦〜
@kandoukei
プロローグ:不出世の天才
初めに、その少女は不幸であった。産まれた時から下半身不随と病弱な体質であったのだから。
しかし、その少女は幸運であった。裕福な両親が学校さへも行けない彼女の為に世界中から掻き集めた本を読ませてもらっていたから。
さらに、その少女は一つだけ恵まれた。数学・文学・歴史・科学・戦略論…ありとあらゆる叡智を完全に記憶する才能を持っていたから。
それでもやはり、その少女はその一つ以外は恵まれなかった。初の高校入学の直前に体調が崩れ、危篤状態に陥った。
少女は死の苦しみの最中、自分が背負いし不幸に激昂し、神や世界を呪う気力さへも残されずにただ微睡むだけだった。
(ああ、どうして私は死ぬんだろう。私が好きな本をいくらでも読んだ。色んなことを知ったら、この苦しい生活を抜け出せると思った。でも、間に合わなかった。)
そして、少女は
(ああ、願うことなら私が持つ叡智全てを世界に…)
この世界での人生では報われなかった。
「よかろう。その願い、
少女は死の淵にその声を聞き、産声を上げる。周囲には木造の壁の部屋に、窓に見える草原、中年の男性と老婆の安堵した表情と自らを抱く女性の苦し紛れと涙目の笑顔、そして、小さくも太い自らの手足。
少女は確信した、自分は生まれ変わったと。少女は泣き叫ぶ、また新たに生きることが、自由に人生を歩むことができると。
なぜなら、彼女はありとあらゆる叡智を決して忘れないから。
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