第19話 先生の言う通りかもしれない。
1週間というのは途方もなく時間の過ぎ去り具合が遅いのだと感じた。
やっとメンタルクリニックの予約日が来た時に思ったことがある。それは、たいして悩んでないことを悩みとして受け入れていいものだろうかと思ったのだ。
でも、外に出てくれるだけで母は笑ってくれる。母の喜びはまるでお祭り騒ぎのようにわざとらしくて僕は好きではない。
母がよく言う言葉がある。
『普通が1番』
『普通なのだからあなたは将来働ける』
『もし、発達障害があってもあなたは軽い方なのだから大丈夫なんだから、普通に出来るはずだよ』
ぼくはいつも普通にやってるつもりだ。
なのに、なんで出来ないのか分からない。
今日、メンタルクリニックの先生はなんていうんだろうな。
『宇治峰さん、こんにちは。今日はどうかな?』
『先生、僕...学校に行こうと思います』
『なんでかな? そんなに焦らなくてもいいんだよ。行けなかったら違ったカタチで行けば良いし、無理しなくて良いんだよ。どうして、行きたいって思ったの?』
『僕、普通になりたいというかならなきゃいけないんです。母は僕の発達障害は軽い方だから普通の人のようになれるっていうから、だから学校に行こうと思ってて』
先生は少しだけ悩んだ後に流暢に発達障害について話し出した。
『発達障害っていうのはね、2つあるんだよ。ひとつは重い発達障害の人だよ。重い方はマイペースに自分のことをしていくんだよ。もうひとつは君みたいな軽い発達障害の人なんだけどね。軽い発達障害がある人は他人の気持ちとか色んなことに気がついてしまうんだよ。それって、周りから見たらすごく気遣いが出来てしまう人かもしれない。だけど、裏を返すと気持ちがわかりすぎて、自分の気持ちより相手を優先してしまうんだよ。発達障害が軽いってことは普通の人と同じように生きられるわけでもないんだ。普通の人が出来ることが出来ないことが生じるんだよ。発達障害が軽い人は就職が難しいとも言われてるんだよ。それに、君はすぐに学校に行けるかい? 人がいっぱいいる中に入っていけるかい? まずは人馴れしなきゃ無理だろう。だから、こうやってまずは僕と話してみないかい』
僕は先生の言葉を信じてみることにした。
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