H++世界シミュレーター~無尽賢者タイムの絶対調和ユートピア

雨夜森半

プロローグ、人狼ゲーム配布身分牌中

【世界中の男女が永遠の賢者モードに入るって、Yes or No?】

絶対に忘れない、あの十二歳の夜で、彼女の声が聞こえたこと。

何でも白く輝いて、雲の上に浮かんでいるようだ。映像も触覚もないけど、その存在を確実に感じられる。

夢かな?

泣きすぎて、夢見ちゃったかな。

「誰?」

【神様よ~】

「そんな軽々しい話し方する神がいるわけないでしょう」

【えっ?子供になめられたとは、う~ううううううううおおおおっおおおおウウウグスッおおおおおおおおおおおううううううおおおううううううおおおううううううおおおううううううおおおううううううおおおおおおおおおおおお~】

どういうこと?どこかの防空警報が鳴ったのか?

「ストップストップストップ。だから、何が言いたいの?」

【事情はこうだよ!もうすぐ君は母子家庭の子供になるでしょう~】

今日こそ——浮気をしていた父親がついに、第三者と新しい家庭を築きたいという願望をついに母親に打ち明けた。願望?いえ、彼はただ一方的に通知しただけだ。

でも——

実は、僕も母も、ある女の存在をよく知ってる。ただし、気の弱い母は、知らないふりしてただけ……僕と夢ちゃんのために、この家族を繋ぎ止めるために、母はもう全力を尽くしたんだ。尊厳までも犠牲した。

でも口に出してしまえば、見た目の睦まじさすら全部崩れちゃう。

「からかうつもりなのか」

【なぜ、こうなったと思う?】

これって明らかなことじゃないの?

あの男、全部を捨てるつもりだ!——もう感情がないって何?これはただの言い訳だけだ、下半身思考の男性が自分の働物的行働に対する最低な説明だ!

知ってる、僕は全部知ってる……

たまに夜中に目を覚ますと、スクリーンに映し出された汚れた映像が目に入る。人間はそんな下品で恥知らずなことをするためだけ、「愛情」とかいうくだらない嘘をついたでしょう?

だからこそ学校でも、見よう見まねでやってる子たちが、僕と幼馴染の関係を野次飛ばしたんでしょう。僕はただずっと友達でいたいだけなのに!なんで僕らの友情がこんな風にからかわれるん?僕は知ってる、これはただの始まりだけだ。いずれ僕ら子供たちも、あいつらのようになる。

憎い!聖人ぶった顔をしてる大人が憎い!彼らの欲望が、すべてを汚したんだ!

実に気持ち悪い!

だから、変えなきゃ。

この世界全体、変えなければならない!

ただあの男が、家族の再建が思い通りにならない姿が見えるだけで、僕……いえ、俺はめちゃくちゃ満足だ!

まるで心の声が聞こえるように、神を名乗るこのやつは、再びその言葉を口にしたんだ——

【世界中の男女が永遠の賢者モードに入るって、Yes or No?】

汚れた作品を全て消滅させるよりも、すべての下品な思想を完全に消えさせたほうがいい!

性別意識がなくなったら、世界はもっと素晴らしくなるんだ。絶対!

「では、その代償は何だろう」

彼女は何か答えようとしてたんだけど——

まあ、いいか、どうせ夢の話だし、どうでもいいんだよ。

俺はただ早くこのボタンを押して、夢の中で完全に調和された素晴らしい新世界を体験したいんだ。それだけ。

そして——

世界は、ついに浄化された。









#1絶対ピュアなハーモニー世界


目が覚めた。

輝見学園に向かう路面電車の中。

ここは海上都市サラン市で、土地面積は約500平方キロメートルくらいで、人口は500万人ちょっとぐらいんだ。

千年前からここは近くの大国の属国で、ずっと漢字を使ってきただけど、でも別の海上隣国の文化浸食のせいで、市場にはエロ本のような作品が大量に現れて、一人一人の若者を汚れさせてるんだ。

なぜ良い手本を学び、それらを制限することができないのか。

別にだめなわけでもない。ただ、そうなると、「下の者は見ることもできないのに、上の者は本物をやってる」って、弱者のふりをして社会を風刺するやつが出てくるんだ。これでは人々間の対立を激化させるだけで、生理的需要の根本的な解決策はない。

一番わかりやすい例として、お宅のオス猫が成年の季節になって「ワーワー」と鳴くとき、どうするんの?答えは明らかだ、メス猫に会いに行くという行為を遮断するよりも、その余計な考えを徹底的に根绝したほうがいい。

だからやるなら、全部平等に根こそぎにしなきゃいけないんだ。

——俺はこの国のため、この世界のために何かをしなければならない。すべてを浄化しなければならない。

そして、俺も確かにやった。

【賢者モード】、【調和】……なんて素敵な言葉だ!

俺は、本当の意味で健全な世界を創造したんだ!

まだ12歳の時に決断したけど、もう5年経った今でも後悔しないんだ。未来も後悔しない、俺は確かにこんな選択をしたことがあるんだ!

ほら、この街のいろんなところにあるコンビニや書店、ビデオショップからは、エロい内容を混ぜるような真似はもう見えなくなった!

隣国から来たアイドルグループは市場が消滅し、特にファン経済は崩壊して、いわゆる「ダーリン」を追いかけるような盲目的な女の子も存在しなくなったんだ。彼女たちも現実生活をより重要視することができるようになった。

公共交通機関で涼しい格好によって、異性から変な目で見られるような心配もなくなった。俺の隣にいるこの女の子みたいに、暑い日に公共の場所で襟首を開けて風を送っても、誰もこれが変なことは思わない……俺以外だ。

「おいおい、夢ちゃん!イメージに気をつけろよ!」

「はぁ?お兄ちゃんってさー……」彼女が唇を尖らせた。「お兄ちゃんってなかなか昔風だよね。そんなことって誰も気にしないよ」

2本のポニーテールが不機嫌そうに振られていて、長いまつげと明るい瞳を持つ時絵夢は、精巧なお人形のようにかわいい。見ての通り、俺の実の妹だ。今輝見学園中等部に通ってる。学校は自宅から遠いので、週末終わったら学校に戻って泊まらなきゃいけないんだ。

こんなに美人確定の妹がいるって、すごく心配なことだよね。サラン島の治安は近隣諸国ほど良くないのに、賭博合法化で大量の資本が引かれてきた。そして、資本があれば地元の社会風土が悪くなり、風俗店やギャングなども至る所で見られるようになった。誘惑が多すぎたら、若い子の心も蝕まれてしまうだろう。幸いなことに、これらは俺の選択によって完全に消滅された。

彼女は何て言ったっけ?誰も気にしないなんて、お兄さんの俺は気にしてるけど。

「お前はね、もういい歳だし、異性の目も気にしたほうがいいよ」

「男性は私を見つめてくれるの?」

「見ますよね」

「見たら何ができるの」

何ができる?

たぶん……何の感じもないだろう。何しろ今は完全な調和状態賢者モードだから。

それなら、全然気にならないだろう。

「気にしなくてもそうはいかないんだ」

「変だよ。お兄ちゃん、変なんだよね……誰も気にしてないのに、例え着を着ずに街を歩いても大丈夫だからさ。階下の中国のおじさんは、そのまま碁を打ちながらスイカを食べてるんよ。」

「あ、あれは男だ!」

「なんで男と女って違うのかな。でもお兄ちゃん、世の中にどうして男と女の区別がある?」

これは……

ところで、俺がボタン押してから無限EDになって、入学した子供達はもう性別の意識完全消えちゃった。大人でもほとんど残ってない。

【無限ED】といえば、ネット上ではその浄化事件の総称となっているようだ。EDが何の略語なのかはよくわからないけど、Endingかな?Endingって何?何が終わったの?穢れた考えと能力を失っただけで、なんで世界が終わりに迎えるみたいな言い方をするの?

今でも、試験管ベビーによって次の世代を作ることも可能だろう。

試験管ベビーという技術は非常に調和の技術で、人類を完全に家畜のような繁殖の糟粕から離れさせて、誰も別の人の上で働物のような行為をする必要もなく、世界全体が新たな文明のステップアップしたんだ!

効果については?

婚姻数が減っただけだ。ほら、やっぱり彼らの結婚理由って、不純じゃない?

「男女を分けるのは、2人で家庭を築き、子供を共に育てるためだろう」

「でもなんで家族作るの?」

「魂の通じる人と一緒にいるのが好きだからさ」

「でもなんで異性じゃないといけないの?」

「子孫を継ぐことができるからね。試験管ベビー方式で」

「どうして子供が必要なの?」

「だって、社会的責任!」

「でも、責任果たさなくていいの?」

「最近施行された『サラン島法典結婚家庭編司法解釈』第七十九条によると、30歳までに結婚しないと罰せられることになっちゃうし、32歳で子供がいなかったら、刑罰も重くなって、将来的には強制執行の可能性もあるんだ」

「えっ!」

夢ちゃんは怯えたように俺を見た。

世界ってそんなに驚くか?こんなに純粋で美しいのにさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る