帝国領へ

〜第19話 その人危険人物です!!〜

吸血鬼の少女と別れた後、帝国侯爵領へと入ったのだがどうやらサキから聞かされていたらしく、まさに高待遇だった

王国貴族でかなり前に王族の血が入ってるはずだが、なぜ仮想敵国の王侯おうこう貴族と関係を持っているのだろうか?


まぁ帝国に勇者ということは伝えていないみたいだしいいか


「ーー宿も用意されているみたいだけど...その前にどこか行く?」


「えーと、少しだけ服?を買いたいのですが」


「ーー服?」


「はい」


「じゃあ一緒に行こうか」


「ーーっ!い、いえ....そのーー外で待って貰えるとーーすぐ終わりますので!!」


「服でしょ?今は外套がいとうを着ているから良いけどもしものことを考えると」


「き、着ませんので大丈夫です!!」


そう頑なに譲らないシア、どういうとこだろうか


「着ないで選ぶ服....それってどういう」


「そ、それは...」


説明をうながすと顔を真っ赤にして後ずさってしまった

ーーーもしかして嫌われた?


「ーーもしかして見られたくないやつ?」


「は、はい....今見られると恥ずかしいというか....まだ見せれません」



この時きちんとシアは「まだ見せれない」と言ったのだが絶望した勇者の耳には届かなかった、いやもしかしたらただの難聴かもしれない



「そ、そうか....じゃあ待ってる」


「は、はい」


そう返事をするとシアはユニクッコロセへと駆け込んだ


「ーーーーどこで嫌われた?!」


原因となったであろう場所を思い出そうとシアとの記憶を振り返る


1、出会った瞬間に婚約申し込み


2、同じ部屋で眠るーーー


ーーーーん?


「俺、ただのキモいやつじゃん」


いや、仕方なくない?前世、前々世合わせて52歳だけど恋愛経験ないからね?!

あ、そう考えると涙が


「終わりましたよ、エルア」


「そ、そうか....えっと他に何か買うものある?」


金に物を言わせようとしている勇者の図

最低だ(自分)


「こ、これ以上は申し訳ないです!」


「そ、そう?婚約者になるかもしれないんだから気にしなくていいのに....」



もしかしたらね、とエルアは付け足したのだが元気がなく自然と小声になりシアには届かなかった


「こ、婚約者.....その...エルアは慣れているのですか?」


「ーーーーー?」


「その、恥ずかしい言葉を躊躇ちゅうちょなく言うので」


「な、慣れてないです...てか初めてです」


「そ、そうですか.....よかった」


うっ....いま絶対

経験ないのにこんなこと出来るのかよ

って思われたって!


「そ、そういえば!先ほどいただいた招待状に書いてあった宿に行きませんか?」


「そ、そうだな」


招待状とはどうやらサキから侯爵家当主に発行するように頼んでいたらしい


「えっと.....ここみたいだな」


ついたのは一見、子爵邸くらいの広さがある邸だった

ーーーーー宿?


「そこの者....って招待状持ち?!失礼しました」

「ーーー我々はここの宿直属の衛兵のものです。失礼ですが招待状を確認します」


そう言われて招待状を渡した


宿に衛兵?

まぁ、貴族が住んでいるように見えるからおかしいことではないのだろう


「ーーー確認できました。エルア閣下、ようこそ帝国ホテル「スカーレット」へ」


「....ホテル?」


「はい、王国辺境伯爵のサキ閣下が考案された名前です」


サキ閣下と呼ぶところを見るとよほど良好な関係を保っているらしい

王国は気づいているのだろうか?

まぁあの腐敗ふはいしている貴族達なら無理だろうな、悲し....くはないか


「それにしても広いですね」


「中はもっと広いですよ」


「ーー?というと?」


「それはお楽しみです、どうぞ「スカーレット」をご堪能ごたんのうください」


そう言われると門を開けて中へ入るようにうながされた


「行こうか、シア」


「は、はい」


なにかあるのだろうか?と思い中に足を踏み入れると結界内に入った時のような感覚を感じた


「ーーーおぉ」


入ると外からは見た時とは比べ物にならないような広さの敷地に王国公爵邸のような広さを持った屋敷が立っていた


「こ、これはどういう魔法なのでしょうか?」


「ーーー空間魔法だな、それを魔導石で再現しているみたいだ」


この世界では魔石とは魔物から出てくるのだが、魔石のままじゃ売ることぐらいしかできない

魔石を錬金術師達が加工することにより魔導石になり、それを使うことで魔法を擬似的ぎじてきに再現できるのだ


「空間魔法?!収納として使われる魔法がですか?」


「あぁ」


確かにこれは驚いた、というか宿というより完全にホテルだな


受付に行く間までも貴族の格好をしていないのが珍しいのか色々な人たちがヒソヒソと話し合っていた


これだから血統主義は嫌いなんだよな

一応教国の貴族ではあるが、名誉爵位だし教国に血統主義の考えはない


「受付をしたいんだが...」


「はい、では招待状をご提示ください」


受付嬢にそう言われて提示する

おそらくこの受付嬢も貴族なのだろう

令嬢で侯爵家に奉仕という形は帝国では珍しくない


「ーーはい確認できました、では当ホテル及び帝国ホテル内にいる際にはこちらのバッジの着用を義務付けていますのでよろしくお願いいたします」


そうして渡されたのは透明な宝石でできた五つ星のバッジだった


「これは?」


「当ホテルが発行している階級証ですーー最も上が五つ星、下が一つ星です」


なるほど、高待遇過ぎないか?

まぁこれで貴族間の余計なトラブルは避けられそうだ


「シア付けれる?」


「はい.....あ、付けれませんので付けてください!」


「そうか」


うーーん、白を基調としたマントに五つ星のバッチをつける美少女エルフ、尊い

今更だがシア....元いいエルフはマントが似合っている気がする


「では手続きはこれで完了です。お楽しみください」


「では部屋に行こうか」


「はい、広くて迷いそうです」


そう言い合い部屋に向かおうとすると


「ーーーって、エルア様?!」


ーーーーーっと一言声をかけられた


「.....えっと、あなたは?」


女性のようだが司教服を着ているところからおそらく教国の関係者なのだろう


「失礼しました、教国第三教徒大司教をつとめていますユキ・シラムスでございます」


そう言い、腰をかがめて頭を下げた

第何教徒とは多すぎる教徒を管理するために教国が行っている政策だ

一教徒ずつ1万人の信者がいてどうやら第三教徒のトップがこの人らしい


「失礼....


突然そんなことを言い一瞬だけ司祭服の奥に来ている黒色のマントを見せてきた


ーーーあっ....この人教国神門会だ、それも白い薔薇ばら刺繍ししゅうがあったことから最高幹部なのだろう


要するに危険人物だ

てかなんで帝国の王侯貴族領にいるんだよ


「ーーーちょっと距離が近くないですか?」


「おっと、これは失礼....なるほどエルア閣下は良き伴侶はんりょをお持ちのようだ」


「は、伴侶?!シアはそんなんじゃなーー」


「そう思うなら邪魔しないでくださいね?」


「はははっ、これは手厳しい」


ーービリビリっと聞こえそうな殺気をお互いにぶつけている


シアさん!その人神門会ですっ!危険人物です!!



―――――――――――――――――


A いやぁ、描き始めたらどんどん描きたいことが増えちゃって....明日こそ初夜です....ははっ


Q 結婚してないですよね?


A うるせぇ!!


Q えぇ.....

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