我が家のリフォーム顛末記

田島絵里子

第1話

八十三歳の義母が風呂で転倒したことがきっかけになり、うちのマンション専有部をリフォームすることになりました。廊下とリビングのフローリングと風呂全体です。

 二〇二三年一一月七日、工事を担当する業者さんがやって来ました。

「今日は内部の養生と、エレベーターなどの養生です」業者さんが紙の板を手にしています。どうやらその紙の板が、養生のための道具らしい。「安全第一」ということばと、どこかの社名が記されています。

 2ミリ程度の厚さで、白っぽい灰色。これをカッターで切り裂いて、廊下・玄関・畳を保護していきます。四隅がぴっちり決まっていて、折り紙的な美しさがありますね。

 わたしは小首をかしげました。

「前から聞きたかったけど、養生ってなに」

「床や壁などを、梱包材で保護することですね」

「床は傷つくとヤバいから保護するのは解るけど、玄関の扉も保護するの?!」

「そりゃそうですよ。そうだ、のぞき窓のところは穴を開けて覆っておきますね」

 郵便受けの部分も上手に避けて、保護をする業者さんの手つきは慣れています。


床に広がる養生板をよくよく観察。緑色のゴシック体で

「あなたの大切な床や家具をしっかりと守っています」

と書かれています。紙ごときで守れるのかとちょっと不安。


 十一月九日まで洗濯パン、カラン解体、UB解体をします。

ところが八日までに洗面台の中身を片付けるのを失念。

 歯ブラシ、ドライヤーなどを業者と一緒に片付けます。

「この棚の下の洗剤も、片付けましょう」

「済みません、片付けたつもりだった」

「いえいえ、これくらいは」

和気あいあいと隣の八畳部屋へと運びます。


昼休みは十二時から十三時。

工事が始まって一時間した一〇時頃のことでした。

「三〇分ほど、断水しまーす」

「はーい」

手を上げて答えた途端。

ぎゅるぎゅる……

突然、お腹の急降下。

や、ヤバイ!


便意よ、待て。30分待て!!!!!

ぎゅるぎゅる、むぎゅー、ぐわー!

腹がめちゃくちゃ痛くなってきた!


 こういうときは、なにかで気を紛らわせるんだ!

 スマホの無料マンガを読むぞ。

 評判のマンガ、前から読みたかったんだ。

 どれどれ、一頁めくってみるか……。

 痛い、痛い、腹が痛い。

 ギャグマンガなんか読むんじゃなかった(涙)


「す、済みません、トイレ行きたい」

「え、断水中ですが」

「一回分ぐらい、水があるでしょ?!」

 わたしの迫力に、業者さんたじろぎつつ、

「ええ、まあ……」


トイレに駆け込んでなんとか間に合いました。

一回分の水はあったが、手は洗えません。

三〇分後に手を洗って、事なきを得ました。


 九日はカランと風呂の解体。

 風呂はアスベストが出るということで、少しお高い料金を取られていますし、そのための政府の建物等の解体等に関するお知らせが玄関ドア内側に貼られています。

 おまけに、解体専門業者もやってくるんです。いかにも大工という服装をした専門業者の肌はどす黒く、ガリガリにやせていました。仕事、たいへんそうだ。

呼び掛けてきました。

「今から一時間ほど、うるさいです。申し訳ない」

「いいですよ」

 風呂が解体されていく音。耳がキンキンします。これって何かに似てると思ったら、道路工事みたいな音がするんだね。

「終了予定時刻は午後一四時です」


 ところが予定よりもずっと早く、午前中には終わっていました。

「意外とアスベストが出ませんでした」

 片付いた壁と床は、コンクリートが剥き出しです。

 コンクリート壁には、「カラン」とか「ユニット」とかいった、字みたいなのもある。

 写真を激写しておきました。

 空っぽになったシャワーのノズルが、気持ち悪いほど色っぽい。


 気づくと風呂場への出入口が養生されて、まるで昭和の商店街のアーケード入口みたいになっている。

「これで移動の際に、家具を入口にぶつけてもだいじょうぶです」

 こんな技術があったんだ。知らなかった。驚いた。

「すごいですね、レモン色ってところが明るくていい」

「でしょ。これ触ってみてください。スポンジ製でふわふわしてるから」

「た、たしかに!」


 業者さんは去って行きます。

「明日が風呂の解体本番です。一日中うるさいですよ」

 十日の金曜日は覚悟しなくちゃならんようだ。

 その夜、わたしからアスベストが少ししか出なかったと聞いた夫は、目を輝かせて言いました。

「じゃあ、アスベスト料金、割り引いてくれるのかな?」

 セコくないか。 


 それにしても食事の用意、どうしよう。

 近くにスーパーがあるのは知ってるけど、

「引っ越してきたこのウィークリーマンション、解錠がややこしい。私、出来るかしら」

 と不安を口にします。

 夫は仕事だから協力出来ないって言う。

 わたしに子どもがいれば、助けてくれたかもしれないんですが、残念ながら産まなかったからアテには出来ない。ない袖は振れぬ。


 ウィークリーマンションから送付されてきた書類をとっくり眺めます。

 個室玄関の解錠法。

 備品の説明。

 鍵が共同ポストにあって、それを受け取ったら、オートロックの共同玄関は鍵を使って入ること。

 

 共同ポストの暗証番号。

 冷蔵庫や食器はあるらしい。

 ゴミは毎日業者が取りに来る。マンション備え付けの資料を参考にしてください。とのこと。


 土曜日は朝八時半に業者さんがやってきて、昼も食べずにギリリ、ガリリと耳が痛くなるような音を立てて工事をします。

 その間、義母は黒柳徹子の逸話ビデオを鑑賞中。

一方、業者さんは、お昼ご飯も食べずにがんばります。

 夫はお休み。

 十時半頃に、給湯リモコンについての打ち合わせがあり、お昼になるとわたしたちは近くのうどん屋へ。夫ったら行きは車で送ってくれたんですが、そのまま車の点検に走って行ってしまいます。

「帰りは歩いた方がいい」

と夫は言うんですが、義母はぜんぜん歩けない。

 たった五〇〇メートルの距離なのに、タクシーを使って帰りました。

「にゃんちゃんには、迷惑かけるね」

 義母の気配りがうれしいし、八十三歳になっている義母が、ボケていないのはラッキー。

 十五時半ごろまでわたしは疲れて爆睡しました。


 ウイークリーマンションですが、共同玄関については鍵で入り、個室は暗証番号で入ります。その暗証番号も二段階になっていて、年寄りにはややこしすぎる。

 何度もおなじことを繰り返し教えるのは、正直つらいものがあります。義母に言ってもすぐ忘れてしまう。ボケが始まっているのかと戦慄が走ります。


 十二日は日曜だったので業者さんもお休み。わたしは最後の食器を片付けます。残ったのは今晩の晩ご飯のための皿ばかり。

 義母は下着や歯磨きセット、トイレットペーパーやパンなどを持参します。あれほど暗証番号にはモタモタしていたのに、用意をするとなったら手際よい。トシを取るというのはよくわからないなあ。


 十三日月曜日。相変わらずバリバリ・ゴリゴリいう音。風呂に入る敷居を少しでも低くするために、大工さんが智慧と工夫を爆裂させてがんばってます。

 

 十三日は午前中で工事は一段落。

「今日からお風呂が入れますよ!」

 監督さん、嬉しそうに報告してくれました。

「いや、今日は入りません。せっかくだからオケやタライを新調しようと思って。

 カビが生えてたから」

 監督は、感心したようです。

「それもそうですね。新しい風呂には、新しい備品です!」

 午後からは洗濯物をコインランドリーに持って行きます。夕方十五時にはウイークリーマンションWへ行かねばならない。行くのはいいけど、鍵は人数分あるのかな。駐輪場は、わかりやすい場所にあるのだろうか。


 午後、十四時半頃に家を出発。行きしなにコインランドリーに下着類の洗濯物を突っ込んで、そのままウイークリーマンションへ行きます。わたしたちだけでは荷物が持てない。夫が手伝ってくれましたが、文句たらたら。

「本来の仕事はパソコンの設定なんだぞ」

 ウイークリーマンションでは、WiーFiでパソコンが使えるんです(よかった)。ネトフリでいつも義母と鑑賞している洋ドラ「フルハウス」とアニメ「美味しんぼ」、「デキる猫は今日も憂鬱」がバッチリ見られます。


 見まわせば、ものすごい狭いマンションでした。キッチンの前に六畳ぐらいのダイニングがあって、四角いテーブルには向かい合わせで座りにくい椅子がある。鍵は人数分。

 乾燥機付洗濯機がうちのとおなじかと思ったら、なんと送風機つきというだけで、仕上げは室内干しをしてほしいとのこと。

 箸・布巾・急須・オーブンミトンがありません。壁時計は見にくい。ただし、五つばかり水のペットボトル五〇〇CCが冷蔵庫の中に用意されていました。

 夕方近くなり、わたしは洗濯機の使用説明書をチェック。

「へー、五キログラムまで入るのか。よし、さっそく使ってみよう」

 洗濯物を入れて粉石鹸を入れ、スイッチを入れて待つこと十分。

 反応ナシ。


「この洗濯機、壊れてるのかな」

 わたしが洗濯機をどついていると、義母が鍵を探しつつ、

「蛇口、空いてないんじゃないの?」

 ワーッハッハッハッハ。


 水が出るようになって洗濯開始。

 その間に電子レンジの使い方をチェック。

「この電子レンジでパンが焼けるみたい。うちのも焼けるんだよ」

「私はオーブントースターで焼きたい」

「ここにはありません!」

 ともあれ、十三日のご飯はホカ弁屋で弁当を買って帰ったのでした。


 十一月十四日火曜日は、脱衣場のフロアリフォームです。まずはここのタオル掛けにガタが来ていたので、ちゃんと据え付け直します。そのためにはその周囲の壁紙を切ってから据え付け直さねばならない。

「壁紙を貼り直しますが、とりあえず見本です」

 ということで、剥き出しの壁のタオル掛けを外して第二段階の工事が始まりました。


 壁と床を引っぺがし、ゴシゴシ、下に貼り付いた残骸をヘラで取ります。

 そればっかり三時間ぐらいやっていた。

 よく飽きないなあ。わたしはネトフリ三昧に走ります。


 十四日は晴れていたので、自転車で二十分かけてここまで来たわけですが、カサをウイークリーマンションに持参するのを忘れていたので十五日にはそれを取りに自宅へ戻り、相変わらず監督の日々が過ぎていきます。

 十五日は、脱衣所のリフォームでした。赤さびが浮いていて、取れなかったんです。

 ぜんぶ剥がしたら黄土色の空間に、白い雲が浮かんでるという雰囲気。


 ウイークリーマンションWへ戻るのは、たいてい夕方五時頃。

 泊まったのは七階でした。夕焼けに染まるコンクリートの街並を眺めます。

 すぐ窓の下を遮断機がカンカンコンコンしょっちゅう唄っている。

 まばらな住宅地の広がる低山が目の前に見える田舎。いきつけの公民館までタクシーで二千円ほど。

ウイークリーマンションWは、部屋自体は清潔で生活臭もなく、うちのマンションよりずっと新しいって感じです。

 ただ、電源コードが少なすぎて困りました。


 慣れない電器機器を扱うのも、どうしたらいいのかわからない。

 洗濯機の取説をながめつつ、洗濯をします。

 ガタガタうるさく洗濯するのを聞きながら、今度は電子レンジの取説をチェック。

 トーストのページが開きやすい。

 電子レンジ内が汚れっぱなし。

 掃除をしてから食事の用意です。


 前の人がNHKの受信料を払ったらしい。

 別料金になっているNHKがしっかり鑑賞出来ました。

 楽しみにしている『ブギウギ』のBS版もバッチリです。

 こういうサービスは充実しているんですね。


 小皿もないししょうゆもないので、刺身や寿司が食べられません。

 料理が出来るったって、油もないんですからねえ。

 持参したらかなりの量を持ってこなくちゃならない。

 持ち帰るのが大変です。


サークルのメンバーに、今までの成果を写真で紹介します。

「リフォーム後」の風呂写真を見た会員が、

「お疲れさまです! 浴槽が見たいんだけど」

 というので、写真をグループLINEにUPします。

 アメブロ日記でも紹介しているけど、誰もみない。

 どうせ愛嬌のない文章ですよーだ。


 十五日は、リフォームのために外していた洗濯機を戻します。

「美観業者が十三時に来ます」

 十三時ごろ、疲れ果てて爆睡していました。

 それで呼び鈴に気づかなかったのか、と思っていたら……。

 十四時になっても、誰も来ている気配なし。

 ついに業者さんに問い合わせたら、

「済みません、前の仕事が押してまして」

 美観業者さんは、四十五歳の主婦でした。

 自分のペースで出来るパートがある、ということでこの業界に飛び込んだらしい。

「子どもの頃は、とってもシャイだったんですよ! 今はそうでもないんですが」

 仕事をしながら、話が盛り上がります。


 美観業者さんの仕事は一時間で終了。

 見れば脱衣場はピカピカで、その輝きに目がくらみます。

 前と同じもののはずなのに、洗濯機や洗面台まで光って見える。

美観業者さん、「ええ仕事してはるなー」

 

 十六日(木)は、床の張り替えのために食器戸棚やテレビなどの移動です。荷物がかなり多かったので、八畳の空いている部屋にそのまま入りません。

「よおし、テトリスの要領だ!」

 業者さん、楽しそうに食器戸棚を横に置き、テレビを縦に入れたり小物が入っている段ボールを積み上げたり。

「テトリスって懐かしい! もしかして、ぷよぷよもやりましたか?」

 わたしが聞くと、

「もちろんですよ! でも、スーパーマリオブラザーズは苦手でしたねえ」

 業者さんは汗だくになって床から邪魔になる家具類を撤去していきます。


 業者「残念ですが、食卓や冷蔵庫は入ませんでした。床を張り替えるときには、残った荷物を移動させながら張り替えます。予定より時間がかかり、二十五日いっぱいまで工事するでしょう」

 困った。十一月二十五日は予約していたインフルエンザを打ちに、いつもの内科へ行かなければなりません。片道だけで車で1時間はかかるんです。待ち時間や診療時間を入れたら、午前中いっぱいはかかります。その間、業者をどうしましょう。

 夫は、リフォーム業者の営業を監督代行に立てようって言ってるんですが、さて、そんなワガママが通るでしょうか。


 十七日(金)、義母と合唱サークルへ赴きます。業者が今日、明日とお休みなので、サークルに参加できたんですね。そこでリフォームの話題で盛り上がります。

「我が家は、食洗機がついているキッチンをリフォームしたの。キッチン戸棚の外観がひどくてねえ。扉の壁がでこぼこ浮いてるのよ。これをなおしてもらったわけ」

 なんて説明しつつ、画像を見せてくれるDさん。

「うちはウイークリーマンションWにいるんだけど、近所に【アーバンビュー猿股】ってマンションがあるのよ! このマンション、どの世代をターゲットにしてるんでしょう!!!」

 わたしの言葉に全員爆笑。


 十八日(土)、十九(日)は一週間ぶりに夫と再会、懐かしいその顔を見ながら洗濯します。二日前から入浴できるようになっており、夫はしきりに、介護仕様の風呂が入りやすくなった上に滑りにくいとか、お湯張りというモードがあるという話を聞かせてくれます。

「前の風呂は長方形だったけど、今の風呂は少し楕円形になってるね。風呂の床はザラザラしている。古いお湯張りモードのリモコンは、二年経ったら付け替えよう」


 わたしが、マンションに用意されていたシャンプーとリンスが足りないと言うと、

「うちにあるのを持って行けよ。うちのは新規に買えばいい。古いものは使い切って捨てて帰ってくれ」

 いいのかなあ、使い切れる自信はないのだけれど。


 この一週間、夫は大型スーパーで定価一〇〇円台の弁当とサラダを買って過ごしていたそうです。

「平均三〇〇円でご飯が済んだ。だけど、吉野家の朝食は、めっちゃ高くてビックリしたよ」

 セコさが自慢の夫にしてみりゃ、吉野家の朝食四〇〇円台は『高い』うちに入るのでしょう。


 二十日(月)までに、夫がアスベストについて、質問してきました。アスベストは、風呂のリフォーム中に出るということで、その分割高になっています。

「風呂工事中には、アスベストが出なかったってキミが業者から聞いたらしいね。その分工事費を割り引いてくれるんだろ」

 営業の人に聞いてみると、

「ご説明が足りなかったようで済みません。脱衣場のフロアは、アスベストが出なかったんですが、風呂じたいにはアスベストが出たんです」


 それを説明すると夫も、

「まあ、それなら仕方ないな」

と諦めたようすでした。夫はセコい性格ですが、労働者の権利には敏感なんですねえ。


 わたしの方は、風呂の配管工事がちゃんと出来ていたかどうか写真で確認させてもらいます。

(工事中は邪魔なので遠慮しました)。

「このピンクの配管が新しいヤツです。古いのはこれ」タブレットを見せつつ、業者さん。

 古い配管が銅管だという。ならば金色……?

 ところが、桃色だった。驚いた。

 配管を眺めていると、みょうに気持ちが悪くなる。やっぱりこういう作業は、わたしには向いてねーなあ。


 二十日(月)、この日までに養生板を外していた床の張り替え作業に入ります。

「洗濯機なんですが、戻してくれたのはいいんだけど、横の壁にピッタリ寄せすぎだから、今までみたいに洗濯カゴが差し込めるようにしてほしいんです」

と業者に注文したあと、さっそく張り替え作業開始です。使わない部屋のドアに透明なビニールの覆いをかぶせ、衝撃や汚れに対応します。

「今日は十四時頃には終わる予定です」業者さんは言います。

「お疲れさまです。ちなみに二十五日は一日かかりますか」わたしが言うと、

「そうですねえ、荷物の移動とクリーニングをしなければなりませんから。業者さんの段取りによって違いますね」

「実はうち、二十五日はここから南区の内科へインフルエンザの注射をしなければならないんです。診療時間も合わせると、午前中いっぱいはかかるでしょうね。その間、営業に監督代行をしていただけないかしら」

「ああ、それなら、もしよろしければ鍵を預かりますよ。うちではよく、そうしてるんです」

「そうなんですね……。そうだ、わたし、営業の人に、二十五日のこと電話しましょう」

「大丈夫ですよ。ボクからお伝えしておきます」 


鍵を預けることが出来るんなら、早くそれを言って欲しいや。

 肩も腰も痛いのに、ここまで毎日二十分かけて自転車でやってくるんだよ! 

 あんまり腹が減るから、毎日牛丼屋でカレー食べてるんだから。

 太っちゃうじゃないの、どうしてくれる。


 しかも間の悪いことにエアコンのリモコン電池が切れちゃった。電池をしまっちゃったからリモコンが点けられない。

 寒いーーーーッ!


 前日夫が買っていた電池を、さっそく使うことになりました。

 リモコンの電池を業者さんに入れて貰ったあと、営業さんが登場。風呂と洗面台をチェックします。

 

二〇日(月)、フローリングのリフォーム開始。

 床の張り替え作業のため、床を剥がします。

 カーテンを養生し、撤去しきれなかったテーブルや棚なども養生板を敷いて透明ビニールで覆います。

 カーテンの結び目が団子状になって美味しそう。

それまでの床が剥がれてコンクリートが見えてきました。細かい破片がいっぱい出てきます。

「くちゅん、くちゅん」

 ほこりアレルギーの業者がくしゃみ連発。

 ネコ民宿のおかみもネコアレルギーだったな……

 午後十四時ごろには床の剥ぎ取りがすべて完了。

「予定よりずっと早く終わりました」

 床の張り替え業者が二十二日にならないと来ないので、今日は新しい床の搬入です。

 アスベストの件については、営業さんからメールが来ました。

「お世話になっております。

工事期間中、いろいろご不便をおかけして申し訳ございませんが

よろしくお願いいたします。


ご連絡遅くなって申し訳ございません。


まず、アスベストの件なのですが

この度は弊社の工事業者がアスベストが薄くてよかったですねとの発言に関して

ご迷惑おかけして、申し訳ございませんでした。

アスベストの処分費用なのですが、濃くても薄くても費用は変わりません。

理由といたしましては、ユニットバスのタイル部分全体にアスベストが含まれて

いる為処分する容積は変わらないということです。

ただ、濃いや薄いなど見てもわからないはずなのに、この様な発言をさせてしま

い大変申し訳ございませんでした」


 わたしからのメール。

「ご丁寧なご説明、ありがとうございます。

 うちの夫も、セコイようなことを申しておりますが、

 アスベストが多少でも出るようなら、

 おカネを払うのは当然だと申しておりました。


 以前、三菱関連の子会社で労組の組合に入っていたので、

 この辺は理解があるみたいです(なにげに自慢)


二十一日は、午後二時から中扉の取っ手を取り替える作業です。

 二十四日にならんと床の張り替え業者が来ないそうです。

 

 二十二日(水)は、中扉の取っ手を工事することになりました。

 床張り業者が、二十四日にならないと来ないのだとか。

 中扉の取っ手は、三十年間使い込んでヘロヘロ状態です。

「同じモノは用意出来ませんが、似た取っ手を用意しようと思います」

 と業者さん。三十年も経つといろんな部品が不足するのは、機械メーカーに限った話じゃなさそう。


 様子を見に来た営業さんが、

「お風呂に入ってみましたか?」

 と言うもので、わたしは思わずグチをブチブチ。

「入りたいけど着替えの持ち運びが大変です。ウイークリーマンションWまで汚れ物を持ち帰らなくちゃならないし、晩ご飯の弁当も買いたいし。自転車だから、荷物はそんなに持てないのよ」


「車は、ご主人が通勤に使っているんですか?」

「そうなんですよ。わたしも運転しますが、車庫入れでいつもぶっ壊してます。

 その話を『明日へのまいにち』に書いたらコメントが来て、

 『大変だー、彼女が来るぞー、みんな逃げてー』って。

 あーん、わたしは怪獣かーっ!」


「大丈夫です。ボクも最初の頃は、よくぶっ壊してましたから。

 初心者の頃は、誰でもみんな通る道ですよ」


 初心者じゃねーよっ。もう一年以上、車を運転してるんだよ!


 建具屋さんが来てリビングの中扉取っ手の交換。

 金具が合わなくて、いろいろ工夫し、二〇分後には完成。


その夜、夫からTELがありました。

「お風呂のお湯がある程度しか熱くならないし、水の勢いも前ほど強くない」

「じゃあ、営業さんに言っておくね」


その日の午後に水道業者さんがやって来ました。


 水を出して、お湯を確認。

「うーん、普通に出てるように感じますがねえ」

 業者は弱り切ってます。

「わたしもそう見えます。主人にそう言っておきます」

「よろしくお願いします」


 二十四日は床の張り替え作業。

 お風呂のことをリフォーム会社にTELで訴えます。

キイイイイイイン。床の張り替え作業のすごい音がする。丸いディスク状の歯が、コンクリートにぶちあたる音です。スライドという工具らしい。建築現場じゃないのに、ひどい音でした。

 部屋にいてくださいねと言われているので、なにをやってるのかは不明です。

 なんだか不安だな……。

 二十四日に、床の張り替え作業が一日がかりで終わりました。

 翌日は荷物の移動とクリーニングなのですが、わたしたち家族はみんな、インフルエンザの注射のために通院します。

 家に入るための鍵を前日から業者に渡し、その日のうちにウイークリーマンションWを出るための片付けや荷物作りをします。


 思えばこのマンションは、狭かったけど清潔だったなあ。

 ゴミ箱は小さくて、一日分しか入らなかったっけ。

 すぐ近くのパン屋さんは、サンドイッチが美味しかった。

 名残惜しいけど、もう来ることはないでしょう。


 二十五日、通院先から帰ったのが朝一〇時頃になってしまい、朝八時半から仕事に入っている業者さんは、おおむね仕事が終わっていました。

 うれしいことに、食器戸棚をピカピカにしてくれたり、食事のためのテーブルの黒ずみを取ってくれたりしてくれたのが感激でした。


 二十五日の午後は、片付けた食器類などを元に戻す作業。

 三人あつまって、

「これ、もう要らないから捨てよう」

「移動の時に食器が壊れた」

「にゃんちゃん、系統だてて詰めてないから何が何だかわからない」

 ああでもない、こうでもないと頭を悩ませる。

 五時間かかって、なんとか形になりました。


「食事を作る気力はないよね」

 ということで、二十五日も二十六日も外食三昧。

 ともあれ、うちが見違えるようにキレイになった!

 この機会にと、風呂用具を一式、新品に替えてしまう夫。


「風呂の入れ方を教えるね」

 義母とわたしに教えてくれるんですが、義母はその数時間後には忘れてる……。

 年を取るのは悲しいことですね。

明日からまた日常が始まります。

 もっとドキドキわくわくする話が出来るといいけどなと思う昨今です。(了)

 

  

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