私も
堕なの。
私も
薄い霧のような靄のような、何かが少し残っている。数十メートル先がギリギリ見える程度の視界。存外、こんな状態の方が美しいものもあるのだと、紫色の花畑の中でそう思った。
何の花かは分からない。その花の香がふんわりと漂っている。その優しい花の香を嗅いで、花の香りの香水なんかは大分香りがキツいなと思った。
売り物の花畑の真ん中で飛び込みたい。この花の香りに包まれたままどうにかなってしまいたい。そんな狂った思考が駆け巡る。
勿論そんなことはしない。
「久しぶりの登場人物一人だけだって。これはメタい話か。今のなしで」
彼ら彼女らがこの世界を覗けるように、こちら側もそちらの世界を覗けると知ったらどんなことを思うのだろうか。プライバシーがどうとか、気持ち悪いだとか、そんなことを言うのだろうか。まあ、私もそう思ってるよ。
こっそり鼻をほじってるアイツも、こっそり人の財布をスったアイツも、コチラには筒抜けなのだから。今の私だって、見られているのかもしれない。
「こんな紫の花畑の中に儚げな少女なんて、書かなきゃ損でしょう」
手を広げて回った。特に理由もなく。
「空は、晴れてるの。たぶん。光の中で私がいるの」
向こうの世界の人が例えば、夜や星が好きで、雨が好きで、そんな厨二病で。それでも私は光の中にいたい。
時と共に霧が晴れていく。柔らかい光が落とされる。
「ほら。私は晴れ女なの」
綺麗な笑顔を浮かべた。それは本当に綺麗な、、、
コチリと止まった。描かれぬその先が来るまでずっと。綺麗な綺麗な笑顔のまま、永遠とも言え
私も 堕なの。 @danano
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