第17話 地下水路

 地下水路をルクと私が乗る装甲車が走っている。


 既に水路は、すべて水に満たされていて流れも速い。

 水中の中の為に、視界は数十メートルほどで前方はあまり見えない。


「インディ、どれぐらいで川底に出れそうだ?」


『施設の情報からですと、あと20分ほど走行すれば川底に出れると思われます』


 外に出たら、何をしようか?

 初期の目的である私のエネルギー問題は、衛星を使った充電が可能になった時点で解決した。


 ルクの願いでも叶えようか?


「ルク、私の呪いは解けたんだが、君の願いはなんだい?」


 少し顔の表情を硬くした後に、言った。


「デシュタール帝国に復讐をしたいです」


 エテロ王国での虐殺があったから復讐に囚われるだろうと思ったがその通りだった。

 この世界は、もとより治安が悪そうだ。単純に私が単騎で乗り込んで復讐すると帝国が崩壊して治安がもっと悪くなる気がする。


 デシュタール帝国と戦争している国に亡命して、一緒にデシュタールを打倒するべきか?


 これは、難題だな。元一般人の私には、なにをどうすればよいか全くわからない。


「ノボルは、手伝ってくれるのですか?」


「手伝うつもりだが、あまり犠牲者はだしたくない。ルクは、帝国が滅びてほしいのか?」


「はい、恨みしかありません」


「だが、それはデシュタール帝国がきみのエテロ王国にやった事をなんら変わらないとおもうのだが?」


「では、どうすれば良いのですか? 私の愛した家族は戻ってきません」


「インディ、あまり人が死なないで解決できる方法ってあるか?」


『昇が眠っている間に観察した情報と過去の歴史を分析すると、現在の世界では宗教的な崇拝による支配が安定すると考えられます。デシュタール帝国を滅ぼすのではなくて乗っ取る事が犠牲が一番少ない解決方法だと予想します』


 乗っ取りか……私が皇帝になるという方法か?


「インディに聞くが、どうやって可能になる?」


『昇と私は現在の科学力では不可能な奇跡を再現できます。これを利用してデシュタール帝国の支配者をあなたの信者にすれば良いと考えられます』


 皇帝ではなく、陰で皇帝を支配する教皇みたいな感じか...…


「ルク、デシュタール帝国を私が乗っ取れば復讐完了にはならないか?エテロ王国も再興するとしたらどうだろう?」


「そんな事が可能なのですか? もしもそれが可能であればノボルと共に戦います」


「いや、戦うのではなくて騙す感じかな」


「騙す……フフフ……それも良いかもしれません。わかりましたノボルについていきます。はっきり言って、たった2人で何を大きな事を言ってるのだろうと可笑しくなってしまいました。けれど、ノボルが言ったことは本当の事になりそうな気がします。復讐よりもノボルと一緒にいるだけでも良くなってきました」


 ルクが、出会ってから初めて笑い出した。笑い顔をみたら胸が締め付けられて守りたい気持ちにさせられる。仮想の感情なのだろうか? ロボットになってしまった私は、何処までが本当の感情かわからなくなってしまった。

 ただの復讐よりも、何かが残る復讐ではない解決方法も良いと感じた。


 水路の先に明かりが見えてきた。


 明かりが大きくなり水路と同じ大きさになった時に、無事に外の川底へ装甲車が到着した。


用語説明


皇帝

デシュタール帝国においては、帝国内の多くの王族と貴族をまとめている事実上の支配者である。広大な大きさのデシュタール帝国は、すべてを中央が管理するのではなく、4個の自治権が存在する地域に分割して各地域に王様が存在するので、王様は複数人存在する。


教皇

宗教の最高指導者の称号である。昇は、新興宗教を作り出して教皇になろうと画策する。

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