私の世界は半異世界
西田河
色覚異常者の日常
最初に気が付いたのは私が4歳の頃だと聞いている。
私が描いていたのは両親の似顔絵。輪郭はひしゃげ、目と鼻を丸だけで表現した幼稚でよくある普通の絵。ある一点を除いては…
「ねえ、さっちゃん。なんで髪の毛を緑で描いているの?」
「…え、くろでかいてるよ?」
「…じゃ、じゃあ、今手に持ってるクレヨンは何色かな?」
「くろ! くろのクレヨン!」
元気よく発した言葉とは裏腹に、小さな手に握りしめられた緑色のクレヨンは私の見ている世界が普通ではないことを示していた。
色覚異常。それは正常な人とは異なる色の見え方をしており、日常生活においても多少の不便を感じることがある。よくある症状としては、肉の焼き加減が分からないことや信号機の黄色と赤の区別がつかないことが挙げられる。個人的にツムツムなどの一瞬の判断が必要なパズルゲームでは、同系色のツムがあると個々の判断がつかなくなるため苦手である。
しかし、色覚異常者が不幸であるかと言われると、それは全く違うと思う。特に私のように先天的に生まれ持っていた人は、最初に見た世界がコレであったため、私たちの中ではコレが普通であり、そこに幸も不幸もない。
…ただ、ちょーっと羨ましくは思う。好きなアニメや旅行などで見る美しい景色が、もっと色鮮やかに、もっと繊細に見えているとしたら、それはとても幸せなことなのかもしれない。私は見たことないので分からないが…。
最近ではゲームの設定で色の見えやすさを調整できたり、色覚補助メガネが発売されるなど、色覚異常者に対して優しい世界になりつつある。私は色覚異常者に配慮してほしいなどと思ったことはないが、善意でそれらのモノを作ってくれるのは、素直に嬉しい。
色覚異常は男性の5%、女性の0.2%が保有していると言われており、人口的には圧倒的マイノリティである。
しかし、私は全ての人が多少のマイノリティを抱えて生きていると思っている。大人も子供も美女もイケメンも、全員である。それ故にマイノリティは種類が多く、全てに配慮した世界を作るのは時間的にも金銭的にも難しい。
だから、自分の中のマイノリティが嫌いな人は、それを欠点ではなく特徴である思った方がいい。それで、もし誰かが配慮してくれたらラッキーぐらいに考えていた方が気持ちも楽になるだろうし、何より自分を好きになれると思う。
以上、ただの色覚異常者でした。この世界が少しでも優しい世界になることを祈っています。
私の世界は半異世界 西田河 @niaidagawa
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