第8話二日目の夜は……

「ケイゴくんおはよう!」


「先生、ですよ。」


「いいじゃん、そんな小さいこと。」


ミラはふとケイゴを見る。

(またあの子と話してる。私は話せないのに…。家でも会えるのに、学校で喋れないのが寂しいなんて、贅沢だよね…。ケイゴは昨日怒ってたけどさぁ、私だって…。)



***



「華峯さん。」


食堂に向かおうとしていたら、急に呼び止められた。


「今からお昼なら、一緒に行かない?私も外部生なの。」



***



「昨日帰りに話掛けたかったんだけどさぁ、気づいたら居なかったから。」


「昨日は用事があって急いで帰ったから。話掛けてくれてありがとう!嬉しい!」


彼女は尚子ちゃん。


「ナオでいいよ。」


「私もミラでいいよ!さっき、外部生って言ってたよね?そう呼ぶんだね。」


「そう。持ち上がりの人達を内部生、高校からの人を外部生って呼ぶんだよ。」


何故かナオは桜華学園のことに詳しくて、どんな学校かどんな先生がいるかとか、色々教えてくれた。


「ねぇ、ケイゴくんの彼女はお弁当作ってくれないの?」


また一軍女子達がまとわりついている。


「彼女じゃないし、彼女だとしても負担掛けたく無いですからね。」


「私だったら彼氏にお弁当作ってあげたいけどなぁー。あっ!私が作ってあげようか!?」


「いりません。お弁当作るより勉強してくださいね。」


「私がお弁当作ってるんだよ。だから一人増えるくらい、なんてことないよ。」


「遠慮しておきます。」


「うーじゃぁ、私のお弁当分けてあげる!それなら作る量も変わらないし。」


「分けてもらってしまったら、足りなくなりますよ。」


学食を食べながらポーカーフェイスを崩さない。


「あー。人気だねー亜月先生。一軍女子にロックオンされて。かわいいもんねー。お似合いだなぁー。マキはね、欲しいと思った男は必ず手に入れるのよ。それだけのものもあるしね。」


「そうなんだ。」


「亜月先生は簡単にゲットされちゃうかなぁー!」


「……。」



***



ケイゴは部屋でレポートをしている。すると扉がコンコンコンとノックされる。


「どうかしましたか?お嬢?」


ミラを招き入れる。


「………ねぇ、脱いでくれる?」


ミラは独り言のように呟いた。


「うん?」


「だから、脱いでくれる?」


今度はしっかりケイゴの目を見て言う。


(またこの人は…。たまにあるんだよなぁー。訳のわからん行動が。)


「お嬢が望むなら、何なりと。」


優しく笑って服を脱ぐケイゴ。その様子をボーッと見つめるミラ。上半身を脱いだところで、ミラがベッドに引っ張る。


ケイゴはされるがまま。


「ねぇ、ここ(ベッド)に寝てくれる?」


ミラは始終何を考えてるか分からない顔をしている。ミラがゆっくりケイゴの方に体を向けながら隣に寝転ぶ。小さく何かを呟いて悲しい顔をする。


ケイゴもミラの方に体を向ける。無性に愛おしい。ミラは目を瞑ってケイゴの胸に頭をくっつける。するとケイゴは穏やかに笑って、ミラを包んだ。


しばらく穏やかな時間が流れる。フッとミラは我に返る。


(ハッ!昨日に続いてまたやってしまった!)


「え、ぇぇぇっとー。ケイゴ、私そろそろ部屋に戻ろうかなぁーなんて。」


「…ねぇミラ、貴方は俺を弄んだんだよ。俺を裸にしてぇ、煽って。離す訳ないでしょ?」


妖艶な微笑みをしてミラを見る。


「このまま、イケナイコト、しちゃう?」


ミラは真っ赤になる。


「し、しません!」


「俺は貴方のものだよ。そして、貴方も俺のものだよ。」


「何!急に!」


「さっき言ってたよね。寝転んだときに小さな声で。ケイゴは私のなのにって。」


「………。」


ミラは更に紅くなり、顔をケイゴの胸に埋めた。ケイゴは愛おしそうにミラの頭を撫でる。


(レポートは明日でいいか。)

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