第4話 え? 全然楽勝じゃなくなくない?
翌日、何事もなく一日が始まる。学校に登校して授業を受けていると、カードを通じて魔法的な力で脳に直接連絡が届いた。どうやらゴーレムが出現したらしい。取り敢えず授業を抜け出る理由がすぐに思い浮かばなかったので、トイレ名目で教室を抜け出した。
「こう言う時どうやったらいいか、昨日先輩に聞いておくべきだったよ~」
まず外に出た私は校舎裏でカードを使って魔法少女に変身。これで認識阻害で誰にも気付かれなくなった。余裕で校舎の外にも出られる。変身した衣装を見てみると、私のは赤を基調にした鮮やかなもの。赤って確か炎属性の才能だ。それって主人公じゃん!
衣装の色に自信が持てた私はフンスと鼻息を荒くした。
「今日から私の魔法少女生活のスタートだ! 頑張るぞ!」
学校を出た私は、まるむがどこにいるか頭の中で考える。すると、その思考をキャッチした衣装の感知機能が働き、私のイメージの中にデータを送ってくれた。どうやら近くの川の河川敷でゴーレムと戦ってるみたいだ。
「すごい、思っただけでイメージが浮かんだ。魔法みたい。あ、魔法か」
私はノリツッコミをしながら、イメージに合致する場所へと急ぐ。すると、そこでは本当にまるむとゴーレムが戦っていた。魔法少女衣装の感知能力の感度高っ!
「まるむ、お待たせ!」
「ミカ、気をつけて!」
どうやらまるむは苦戦しているようだ。得意の植物の枝攻撃が効いていないっぽい。この状況を把握した私は、すぐにステッキを振って加勢する。初めて使う魔法だ。うまく行きますように。
「マジマジファイヤー!」
呪文を唱え終わると同時に、ステッキの先で生成された魔法火炎がゴーレムに直撃する。威力は爆竹に毛が生えた程度だったものの、注意をそらす事には成功したようだ。私は予想通りの魔法が出せなかった事に首をひねる。
「なんで? あんなショボいはずじゃなかったのに。イメージが悪かったのかな?」
私は変身したと同時に物質化したステッキをよく観察する。すると、スイッチ的なものがオフになっているのを確認した。それを入れるとステッキが光り出す。さっき火力が弱かったのは、きっとこれが原因だったのだろう。
仕組みが分かったところで振り返ると、ゴーレムが私の正面に移動してきていた。どうやらさっきの攻撃で攻撃対象がまるむから変更されたらしい。私はすぐにステッキを構え、ゴーレムを威嚇する。
「あぁん? どうやら丸焦げになりたいようね? いいよ、勝負しようじゃない」
この挑発で何かのスイッチが入ったのか、ゴーレムは腕を真っ直ぐ私に向けて魔導ビームを発射した。
「え?」
まだ防御方法を知らない私は、自分に向かってくる魔導光に対して為す術がない。恐怖で足がすくんで動けないため、必死に腕で顔をガードした。こんな事になるんなら、魔法少女になんてなるんじゃなかったよー。
しゃがみこんで必死にまぶたを閉じてると、まるむからの声が聞こえてきた。
「バカッ!」
怒号でまぶたを上げると、ゴーレムの攻撃を突然地面から生えてきた巨木が受け止めていた。あれってまるむの植物魔法だ。どうやら私は助けられたみたい。良かったー。
ショックで動けなくて呆然と見ていると、ゴーレムの様子がおかしい。もしかして、攻撃を弾かれて混乱してる?
この突然生まれた隙を狙って、まるむが必殺魔法を叩き込んだ。
「ビッグスマッシャーッ!」
ベテランの彼女が放った魔法はゴーレムのボディの魔法結合を無力化し、一瞬で無に還す。魔法生命体の体が塵になって消えていくこの一連の流れを、私は呆然としながら見つめていた。
「流石先輩です……」
「危機一髪だったね。でも無事で良かった。あたしもいきなりこんな強敵が出てくると思わなくてさあ」
「全然楽勝じゃないのはちょっと騙された感がありますけど」
「いやいやいや、あんなのレアケースだよ。いつもはもっと雑魚いから。マジ楽勝だから」
必死に弁明する彼女を見ていたら可笑しくなってきて、私は思わずクスクスと笑う。それを見たまるむもつられて笑っていた。本当、とんでもない初仕事だったよ。
でも初めてにしてはちゃんと魔法も使えたし、私に才能がある事も分かった。これからどんどん腕を磨いていこう。折角乗りかかった船だもんね!
その後は本当に雑魚ばかりが出現し、私も順調に経験を積んでいく。攻撃魔法、防御魔法、補助魔法などを一通り身につけた頃には、ソロでもゴーレムを倒せるレベルに成長していた。
「ミカ、すごいね。私より慣れるのが早いよ」
「先輩の指導がいいからですよ~」
「そうかな~」
私の言葉で、まるむは照れくさそうに笑う。一緒に活動してみると、案外先輩はチョロかった。褒めると素直に受け取ってくれるし、どんな相談も嫌がらずに付き合ってくれる。まぁだから仲良くやれてるんだろうと思う。
割と趣味も合うし、休日には一緒に遊んだりもする。ゲームの腕は私の方が上だけどね。って、マウントをとっても仕方ないか。
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