魔法少女にさせられて
にゃべ♪
第1話 え? 魔法少女? 嘘でしょ?
瀬戸内海に面する中規模都市、舞鷹市。気候が温暖で大きな災害も起こらなくて治安の良いこの街が私は好き。何でも住んでみたい街日本一に選ばれたとか何とか。これはちょっと誇らしいよね。私はまだ中学生だけど、大人になってもこの街で暮らしていたいな。都会って危険だって言うし。
まぁ大学は都会で暮らしてみたいと思わなくはないけど。正直先の事は分からないかなぁ。結局そうなるよね。
そんなベストな地元なのだけど、最近妙な噂を聞くんだよね。変なロボットみたいなやつが出現しているんだって。そいつが現れると暴れまくるなんて話もある。でも実害があったとかニュースで報じられたりとかは今のところないから、都市伝説なんだうって事でみんなマトモには信じていない。私だってそうだよ。
この話にはおまけがあって、そのロボットみたいなやつが暴れると、それをぶっ壊す女の子が現れるんだって。どうやらその子は魔法少女みたいなの。アニメの見過ぎなんじゃないの? きっとロボットに話の尾ひれがついたんじゃないかと思う。
私は子供の頃に精霊が見えていたけど、ロボットなんて見た事がないし、その精霊も10歳になった頃にはもう見えなくなってた。アレはイマジナリーフレンドだったのかも知れないなあ。
その精霊は半透明で触れないの。見えるだけで会話も出来なかった。でも怖くはなかったよ。だから、不思議な事自体はあるんだろうなって思う。ロボットとか魔法少女は流石に眉にツバだけどさ。
ある日、私は潰れた本屋さんの跡の空き地で誰かが何かをしている気配を感じたんだ。何をしているのか気になってこっそり覗いてみたら、見ちゃったんだよね。
空中に浮かぶロボットと、それを壊そうとしている魔法少女を!
「嘘でしょ?!」
魔法少女は緑を基調としたフリフリの可愛い衣装を着ていて、手にはステッキを握っている。アレは確かに魔法少女だわ。噂は本当だったわ。彼女はロボットを見つめて、タイミングを見計らっているみたい。
ロボットの方は空中に浮かんでホバリングをしてた。こっちも攻撃を繰り出す隙を狙っていたのかな?
で、先に動いたのは魔法少女の方だった。
「マジカルウィィーップ!」
彼女が杖をかざすと、地面から植物の枝みたいなのがニュルルンと伸びてきて、一瞬でロボットに絡みついちゃった。その後は枝が更に何本も伸びてロボットを圧縮。ほんの数秒でロボットが爆発して、バトルは魔法少女が勝ったみたい。
私、感動して思わず拍手しちゃった。
「誰?」
音を立てないようにしていたのに、私彼女に見つかっちゃった。ズンズンズンと近付いてくる。ど、どうしよう。逃げようと思ったけど足が動かないよ。
ついに魔法少女は私の正面まで来た。至近距離まで来るとただのコスプレ少女だね。そんな彼女は私を品定めするみたいにじっくりと私を見つめる。
「あんた、最初から見てたの?」
「は、はい。すごかったです。街を守ってくれてマジ感謝」
私は何かお世辞的なものを言った方がいいのかなと、私は使い慣れない陽キャセリフを付け加える。ただし、これはあまり効果がなかったみたい。魔法少女は首をひねって納得行かないような感じだったから。
不安になった私はどうしていいか分からず、つい話しかけてしまった。
「え、えっと……」
「ちょっと待ってね」
彼女はスマホを取り出して誰かに連絡している。私、待ってないとダメなのかな? 特に用事がある訳じゃなけど、待たされるのは嫌かも。
私がソワソワしていると、目の前を猫が通り過ぎていく。白猫でとても賢そうだ。その猫は魔法少女のもとに真っすぐ歩いてった。彼女、猫を呼んでいたとか? まさかね。
「ミルミ!」
魔法少女は名前を呼びながら猫を抱き上げると、そのまま物陰に走っていった。え? マジで猫を携帯で呼んだの? もしかしてあの猫は魔法少女のお約束のマスコット的なやつだった?
そう言えば、あの猫、ちょっと精霊の雰囲気もあったような気がする。気のせいかなあ……。
置いてきぼりを食らった私が手持ち無沙汰をスマホのSNSで紛らわせていると、魔法少女が私に向かって歩いてきた。猫も歩調を合わせて一緒に歩いてきてる。
「あなたはあたしが戦っていたのが何だか分かる?」
「ロボット?」
「アレはね、ゴーレムって言うの。この世界を征服しようとしている魔導帝国アルマの尖兵なの。奴らは異世界に本拠地があって、ゲートを使ってこっちにやってくるんだ」
「はい?」
いきなり謎設定を一方的に語られ、私は目が点になる。世界征服? アルマ? ゴーレム? 異世界? ゲート? それってゲームか何かの話? 本当にそんな事が現実に起こっているって言うの?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます