第11話 一閃
カズキくん、リューヤくんの二人と巨大怪獣との戦闘が始まった。
自分より遥かな小さな存在である彼らに対し警戒したような視線で睨みつける怪獣を見据えながら、カズキくんはゆっくりと腰の剣を抜き放つ。
夕日にキラリと輝くその片刃の剣は、わたしの剣ほどではないだろうけどなかなかの業物のようで、それだけで切れ味が良さそうなのが分かる。
「さて、やるか」
そう言って不敵に笑うと、彼は両手を剣の柄に添えるとそのまま天高く掲げ、目を閉じる。
すると、彼の身体が淡く発光し始め、その光が徐々に強くなっていく!
あれがさっき二人が話してたあの技なのだろうか?
怪獣は傍から見ていてもハッキリとわかるほどのエネルギーを発するカズキくんを脅威とみなしたのか口を開き先ほどの光線を放つ体勢に入る。
ドゴッ! しかし、その顎に下方から放たれた強烈なアッパーが直撃し怪獣は大きく仰け反った! 今のパンチを放ったのはもちろんリューヤくんだ。
「邪魔はさせねぇよ?」
不敵な笑みを浮かべつつそう呟くリューヤくんの姿はとても頼もしく見えた。
それにしても最初に彼が怪獣を蹴り飛ばしたときにも思った事だけど、一体どんな鍛え方をすればあんな芸当が出来るのだろう……?
「
唐突に、聞こえてきた声にわたしはハッとして自分のすぐ横に立っている人物の方を見た。
そこには、いつの間にかわたしの隣に立っていて、リューヤくんと怪獣の戦いに視線を注いでいる少年の姿があった。
金髪碧眼、カズキくんとは対を成すような全身を白を基調としたコーデで纏めた衣装をまとう美少年だ。
年はまたしてもわたしと同年代、つまりカズキくんやリューヤくん、アリッサさんと同じ15歳のように見えるけど、その落ち着いた雰囲気はまるで老成した大人のようでもあった。
その少年は、わたしが驚きのあまり硬直していることなどお構いなしに言葉を続ける。
「術には二種類あることを知ってるだろ?
「え、ええ……」
いきなり問われ、わたしは思わずそう答えてしまった。
勇者として術の勉強もしているので、術についてはそれなりに知識はありそのような分類があることも知っていた。
外向術、内向術という名称はそのまま術によって生じた『力』の向かう方向を表している。
平たい言い方をすれば、他人に掛けるのが外向術、自分に掛けるのが内向術ということになるだろう。
さっきアリッサさんが使った炎の攻撃は典型的な外向術、そして普段わたしたちが意識せずに使っている魔力強化を始めとする自己強化系の術なんかが内向術だ。
障壁系の術みたいなややこしい例もあるけど、基本的にはそういう分類分けになっているのだ。
ちなみにどちらの方が習得が難しいのかと言えば、当然外向術の方だ。
自分の拳をググっと握りしめて力を込めることと、エネルギーを外に放出すること、どっちの方が難しいかを考えれば自ずと答えは出るだろう。
「リューヤはねぇ、外向術が苦手な代わりに内向術に関してはかなりの適性があるんだよ」
な、なるほど……つまりあれは魔力強化の凄い版みたいなものって事なのね。
それにしたってあれだけの力を発揮できるとは……理屈は理解できるけど、驚きを禁じ得ない……。
「もちろん、魔力抜きでも鍛えてあるからこそああいうことが平気で出来るんだけどね」
彼の言葉にわたしは再び戦闘に目を向ける。リューヤくんは怪獣の周囲を飛び跳ねながら、時折拳や蹴りを繰り出して着実にダメージを与えている。
対する怪獣は、リューヤくんのスピードに翻弄されて攻撃を当てることが出来ないでいた。
あれが内向術によって実現できているものだとわかっても、“一体どんな鍛え方してんのよ!”というわたしの感想は変わらなかった。
ビリビリビリ!! その時、わたしは体中に電気が走るかのような感覚と共に凄まじいエネルギーの鳴動を感じ取りそちらに視線を向けた。
「外向術と内向術は基本的に両立不可能だ、どっちかを高めていけばもう片方が落ちるからね……。だけど、世の中にはそういう常識を覆す奴もいる」
少年の言葉を聞きながらわたしはそのエネルギーの発生源――カズキくんを呆然と見つめていた。
「あいつを倒すにはこれぐらいか……。リューヤ、離れろ! 今からデカいの行くぜ!」
彼の言葉に怪獣と戦っていたリューヤくんが即座に飛び退き、距離を取る。
それを確認すると同時に、カズキくんは掲げていた剣を勢いよく振り下ろした!
「
剣から放たれたエネルギーが巨大な刃となり、怪獣に向かって飛んでいく! ザンッ!! 光が怪獣の身体を通り抜ける瞬間、確かにわたしは肉を切り裂く音を聴いた気がした。
ズ……ズ……ズズズ……
怪獣の右半身と左半身がゆっくりとずれていく……。
断末魔の悲鳴すら上げさせることもなく、カズキくんの繰り出した一撃は怪獣を頭から尻尾まで両断していた……――。
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