健康診断でポロリ(男性視点・検査着ポロリ)
ジリリリリリリリリ!
けたたましく目覚し時計が鳴り響く。
俺は寝ぼけながら目覚しのボタンを押そうとし、何度か失敗しながらようやく鳴り響くベルを止めた。
寝起きは最悪だ。まだ水曜日だっていうのに、疲れで体がずっしりと重たい。
それでも俺は何とか体を起こすと、せっせと身支度を始める。
社会人も3年目になると、朝の準備は寝ぼけながらでもこなせるようになった。
歯を磨き、顔を洗い、髪を整えるとスーツに袖を通す。
朝ごはんはいつも食べない。食べる気も起きない。
起床からものの20分で準備を済ませた俺は、気の乗らないまま会社へと向かった。
「おはようございまーす。」
事務所に入ると一応挨拶をする。
ちらほら返してくれる人がいるが、みんな既に仕事に取り掛かっており、ほとんどが顔をあげない。
一体何時から来ているのだろうか。いつもどおりのブラックっぷりに苦笑する。
俺は自分のデスクに向かうと、椅子にどさっと座り込んだ。
「島田くん。昨日の報告書、まだ出してないでしょ。」
向かいの席に座る、同期の村上が声をかけてきた。
装飾のない眼鏡越しに見える目はまったく笑っていない。
にこりともしない彼女に、俺はだるそうに返事する。
「昨日は忙しかったんだ。今から作るよ。」
「忙しいのはみんなも一緒でしょ。言い訳しない。」
まったく可愛げのない女である。
村上は同期ではあるが、俺と違って仕事ができるし、まったく隙のない性格も相まってまるで先輩のようだった。
いつも口うるさく俺の仕事にちょっかいを出してくる。
「報告書終わったら、来週のプレゼン資料見せて。明後日課長に説明だから。」
「はいはい、わかってるって。」
カタカタとパソコンを打ちながら、村上が矢継ぎ早に言ってくる。
俺もパソコンを起動し、仕事に取りかかりはじめた。
「あ! それから。」
村上は急に大声をあげ、キーボードを打つ手を止めた。
俺も思わず顔をあげ、彼女の顔を見る。
「島田くん明日健康診断だから、今日は晩御飯食べちゃだめよ。」
「は? 健康診断?」
俺の反応に、彼女はふーっとため息をつく。
「毎年やってるでしょ。明日の10時からよ。」
「え、そうだっけ。」
俺は慌てて予定表を確認する。
確かに健康相談室名義で、明日の10時から予定が入っていた。
「まじかー。作業時間ねーじゃん。」
「余裕持って計画してないからよ。」
「うるせーな、お母さんかお前は。」
俺は限られた時間の配分を考える。今日も早く帰れそうにはない。
憂鬱な気持ちで作業を再開しようとし――、ふと気になって聞いてみる。
「ていうか、なんで俺の健康診断の日知ってんの?」
俺の言葉に彼女の動きがピタリと止まった。
「無駄口叩いてないで仕事して。」
ピシャリと言い放つ彼女の感情は読めない。
俺はこれ以上問い詰めるのをあきらめ、渋々仕事を再開するのだった。
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次の日。
俺は会社ではなく近くのクリニックに向かっていた。
仕事をしなくていいとあって、今日はなんだか足取りが軽い。
俺は受付を済ませると、検査着に着替えて待合室に向かった。
「島田くん。」
ふいに呼び止められ、俺は後ろを振り返る。
そこには長い髪をした女性が立っていた。
誰だろう。一瞬考えて、その顔立ちにピンとくる。
「お前、まさか村上か?」
「何よ、まさかって。」
村上は不服そうに口を尖らせる。
彼女は普段とは違い、眼鏡をかけていなかった。
会社ではまとめていた髪の毛も下ろしており、いつもよりも随分柔らかい印象を受ける。
あまり注目していなかったが、こうしてみると顔立ちも結構整っているのに気付いた。
「眼鏡はどうしたんだよ。」
「視力検査があるから、今日は裸眼なの。」
そう言うと、彼女は少し恥ずかしそうに俯いた。
会社では見せない表情に、俺は少しドキッとする。
「最初は採血からよね、あっちかしら。」
村上は俺の横を通り過ぎると、クリニックの奥のほうへ向かう。
俺は慌てて彼女の後を追いかけた。
「健康診断、一緒の日だったんだな。」
「そうよ。まさか会場まで一緒とは思わなかったけど。」
昨日のやりとりの真相に俺は合点がいく。
俺たちは待合室に到着すると、名前を呼ばれるのを待った。
「次は島田さん、村上さん。どうぞ。」
一緒に名前を呼ばれ、俺たちは顔を見合わせる。
どうやら診察グループも一緒らしく、俺たちは採血に視力検査、身長と体重の測定(村上に「見ないでよ。」と睨まれた。)、聴覚検査を終え、再び待合室に戻された。
次の検査までは少し空くらしい。
暇を持て余した俺たちは、他愛もないお喋りで時間をつぶしはじめた。
「本当嫌になっちゃうよね~うちの会社。」
「お、村上もそう思うことあるんだな。」
思えば、村上と仕事以外で話したことはあまりない。
飲み会にも来ないので、こうして愚痴を聞くのも新鮮である。
「当たり前でしょ。給料も低いし、こんなんじゃ結婚できないよ。」
結婚、という言葉に俺は村上の顔を見る。
いつもの席からは見えない横顔も、思いのほか整って見えた。
「結婚て、予定あるわけ?」
「ないない、彼氏すらできないもん。何もないまま25歳になっちゃった。」
村上は遠くを見つめながら、どこか寂しそうに言い放った。
確かに俺たちはいつも夜遅くまで仕事してるし、休みの日と言えば体力を回復させるので精一杯で、出会いなどない。
かく言う俺も彼女はおろか、女友達すらいない状況だ。
意外と等身大の悩みを抱える彼女に、俺はなんだか親近感が湧いてくるのだった。
「島田さん、村上さん、どうぞ。」
看護師さんに呼ばれ、俺たちは席を立つ。
「次は心電図です。男性の方はこちら、女性の方はあちらへ。」
案内された部屋で俺は上半身の検査着を脱いだ。
『まあ、さすがに心電図は別室だよな。』
裸の上半身に電極をつけられながら俺は自嘲する。
村上も今同じ格好でいると思うと、なんだか気恥ずかしい思いがした。
あいつ、胸はでかかったっけ?
「はい、終わりです。呼ばれるまで待合室にいてください。」
部屋を出ると、村上もちょうど出てきたところだった。
俺の目は自然と彼女の胸に吸い寄せられる。
ゆったりとした検査着では、胸の膨らみを測ることはできなかった。
「何見てるのよ。」
村上は怒ったように腰に手を当てる。
俺は慌てて目線をあげた。
「なんでもない。もうこれで終わりかな。」
「いや、まだバリウム検査やってないでしょ。」
「バリウム?」
俺はきょとんとする。
彼女は呆れたようにため息をついた。
「今年からバリウム検査があるって書いてあったでしょ。何も見てないのね。」
バリウム検査。名前は知っているが、一体どんな検査だろうか。
俺たちは待合室に戻ると、すぐに名前を呼ばれた。
「おふたりとも、バリウム検査ははじめて?」
看護師のおばさんに質問され、俺たちは頷く。
「そうですか。あまり気持ちの良い検査ではないけど、頑張ってくださいね。」
そういって看護師さんは紙コップを差し出した。
促されて飲み始めるが、なんだか味のない炭酸水のようだ。
「では男性はこちら、女性はあちらへ。」
再び俺たちは分かれると、それぞれの検査室に案内された。
検査室には大型の機械があり、そこに乗るように指示される。
「はい、じゃあこれを飲んで。手すりにしっかり掴まってください。」
2つ目の飲み物は味のないヨーグルトみたいだった。
手すりを掴むと、機械が動き出し、俺の体を回転させたり傾けたりし始めた。
『うわ、気持ちわる。』
気分の悪くなった俺は、恨めしい気持ちで機械の操作室を見る。
ガラス越しに先ほどの看護師さんが座っており、こちらの様子を伺っていた。
その後も体を逆さまにされたり、また回転させらたりして、ますます気分が悪くなっていく。
いつ終わるのだろう。そう思って再び操作室のほうを向いたとき、俺はあることに気が付いた。
座っている看護師さんの後ろに、もう1人看護師さんがいる。
彼女は後ろを向いており、その顔の向く先にはガラス窓、そしてその向こうに俺が乗っているのと同じ機械があった。
『丸見えじゃねーか、大丈夫かこれ。』
そう思ったとき、向こう側の機械が回転し、乗っている人の姿が見えた。
村上だ。
彼女も苦しそうにしていたが、こちらに気が付いてパチッと目が合う。
互いに辛い表情を見せつけあい、なんだか奇妙な気持ちになった。
すぐに機械が動いたので村上の姿は見えなくなったが、すぐに元の位置に戻り、再び向こう側が丸見えになる。
村上もまたこちら側に戻ってきたのだが、先ほどから少し変化があった。
彼女の身に着けている青い検査着。浴衣のように前を閉じ、ひもで結ぶタイプのものだが、それが少しはだけているのだ。
先ほどは見えなかった部分まで肌が露出し、微かに胸の谷間が見えている。
予想外の彼女の姿に俺は心臓がぎゅっと掴まれたように跳ね上がった。
先ほどは推し量れなかったが、村上の胸はそれなりの大きさがあるようだ。
またしても機械が動き出し村上の姿は見えなくなるが、ほどなくしてまた元の位置に戻る。
今度の彼女はさらに検査着がはだけ、大きめの乳房の大部分が露わになっていた。
見ると、ひもの結び目がほぼ解けてしまっている。
村上がキッとこちらを睨むのがわかったが、俺は彼女の胸から目が離せなかった。
良いところでまた機械が回転し、そしてまだ元に戻ろうとする。
次の彼女は一体どんな姿になっているだろうか。
邪な期待感に、俺は動悸がどくどくと早くなるのがわかった。
機械が動き、俺は三度村上のほうを向く。
少し遅れて、村上の機械がこちらに動き始めた。
すぐに苦しそうな彼女の顔が見え、体がくるりと回転してこちらを向く。
そのとき、回転の衝撃で検査着の結び目が完全に解け、彼女の乳房がぽろんとこぼれ落ちた。
『うお…!』
俺は村上のおっぱいを食い入るように見つめた。
検査着の前は完全にはだけ、彼女の乳房を隠すものは何もない。
谷間の深さから予想はしていたものの、村上のおっぱいは大きく、こぼれ落ちた反動でぷるぷると震えている。
乳房の大きさに比例してその先端も大きく、薄いベージュ色の乳輪や大きく隆起した乳首まで、はっきりと捉えることができた。
村上はあっ、と驚きの顔を浮かべると、慌てて右手で乳房を覆った。
が、すぐに手を離し、再び手すりを握りなおす。
今はまだ検査中なのだ。おそらく向こうの看護師さんに注意されたのだろう。
しかし、彼女にとってそれは酷な状況だった。
丸出しのおっぱいを俺に見られたまま、隠すこともできずに見せつけるしかない。
静止した乳房は美しい形を維持したまま鎮座しており、大きめの乳首もじっくりと観察することができる。
みるみる村上の顔が赤くなり、恨めしそうにこちらを見つめ始めた。
俺は悪いとは思いながらも、目の前にあるおっぱいに釘付けだった。
村上の整った顔立ちに、官能的なまでに豊かな乳房と乳首は、これまで見たどの女体よりも美しく見えた。
どのくらい経っただろうか。
機械が動き出し、村上の姿は見えなくなった。
そして機械が元の位置に戻っていくと、看護師さんが操作室から出てきた。
「検査は以上です。お疲れさまでした。」
「あ、はい…。」
俺は前屈みになりながら、足早に検査室を出る。
気持ち悪さと興奮で、頭の中がぐちゃぐちゃになっていた。
少し遅れて村上が出てきた。
まだ顔が真っ赤で、こちらを睨みつけている。
「ねえ、ちょっとは気を遣ってよ。」
よく見ると、目に涙が溜まっているのが見えた。
「すごく恥ずかしかったんだから。」
「ご、ごめん。」
いつになく弱る彼女に、俺はさすがに申し訳なくなってきた。
村上も女の子なのだ。同期の男子に裸を見られて恥ずかしくないわけがない。
「本当にごめん。あんまり綺麗だったから…。」
言った後に俺は失敗したと思った。
全くフォローになっていないどころか、下手をすればセクハラである。
しかし村上の反応は意外なものだった。
「もう…。島田くんだからいいけど。ちゃんと責任取ってよね。」
「せ、責任…!」
突然の物言いに、俺は口をパクパクさせた。
責任って、つまりそういうことだよな。急に何を言い出すんだ――。
「ぷっ!」
動揺する俺を見て村上が噴き出した。
「冗談に決まってるでしょ。でもさっきのこと、誰にも言わないでね。」
村上は真っ赤な顔のまま、にやにやと俺を眺めている。
からかわれているとわかった俺もふっと吹き出し、ふたりで笑い合った。
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次の日。
俺たちは変わらず向かい合って仕事をしていた。
昨日のことはお互い話さない。
周りからも特に何も言われないほど、いつもどおりに会話し、いつもどおりに仕事をしていた。
夜になり、少しずつ事務所の人も減っていく。
俺たちは昨日できなかった分の作業を片付けるため仕事を続け、ついに最後の2人になってしまった。
普段ならもう帰る時間だが、俺たちは無言で仕事を続ける。
日付が変わりそうになったころ、ようやく作業が完了した。
「あ~! やっと終わった!」
俺は背もたれに寄りかかり、腕をあげて伸びをする。
その様子を見て、村上も珍しく笑みをこぼしていた。
「お疲れさま。島田くんにしては、よく頑張ったんじゃない?」
「なんだよそれ、もっと素直に褒めてくれよ。」
「それはもうちょっと成長したらね。」
「はいはい、村上さんを見習いますよっと。」
村上はまだ作業が残っているのか、話しながらもキーボードを打ち続けていた。
そんな彼女の様子を、俺はじっと見つめる。
「なあ、それあとどれくらいで終わるの?」
「うーん、あとちょっとかな。」
目線をパソコンから離さないまま、村上が答えた。
俺は少し逡巡し――意を決して続けた。
「それ終わったら、飲みに行こうぜ。明日休みだしさ。」
その言葉に村上の動きがピタリと止まった。
動揺すると固まる癖があるようだ。
「――考えておく。」
村上は何とも言い難い答えを返す。だが、俺には彼女の心はわかっていた。
2人きりの事務所の中で、俺はささやかな幸せを感じるのだった。
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