四つ葉は足下に ―旅行編―

瑞樹(小原瑞樹)

1日目

 みんな、久しぶり! あたしのこと覚えてる? え、誰かって? 四葉よ、青柳四葉あおやぎよつば! 日常の中に幸せを見つける達人!

 実はあたし、なんと旅行に行くことになったのです! 行き先は和歌山。一人旅で、一泊二日で行くんだ。旅行ってそれだけでも十分楽しいけど、あたしは旅をもっと楽しくする方法を知ってる。せっかくだから、あなたもあたしと一緒に和歌山の旅に来てみない? 今までとは違った旅行の楽しみが見つかるはずだから。


 朝の8時。キャリーケース片手に家を出発。8時って出発時間としては遅めだけど、あたしはこれくらいがちょうどいい。あんまり早起きしようとすると前の日が辛いし、朝も時間に追われてバタバタする。8時だと平日よりちょっと遅く起きるくらいで、朝ご飯もゆっくり食べられるから気持ちが楽。電車もそんなに混んでないし、あたしはこの時間がベストかな。


 8時10分。最寄り駅に到着。ここから電車の旅が始まる。今乗るのは普通列車だけど、旅行に行くせいか窓からの景色も違って見える。なんてことない街並みを観察して、公園の緑が綺麗だな、あ、あそこに面白い建物がある、なんて発見できることもある。普段の景色が違って見える。これって旅行マジックかも。


 8時25分。東京駅で乗り換え。ここから新幹線で和歌山に向かう。新大阪まで約2時間半の長旅だ。車内のお供は当然小説。今日は普段読まない海外ミステリーを持ってきた。上下巻ある厚めの本で、普段はなかなか読めないんだけど、旅行だと時間がたっぷりあって一気読みできるからお勧め。出発5分後にはもう読書に熱中して、時間が経つの忘れちゃった。


 9時30分。目が疲れてきたので読書は一旦終了。代わりに鞄からiPodを取り出す。旅行は移動時間が長いので旅のお供はいくつか必要だ。あたしは読書以外に音楽も好きなのでいつも本とiPodを持ち歩いてる。今推しのK-POPの歌手がいて、その人の最新シングルをしっかりダウンロードしてきた。イヤホンをして再生するとあっという間に歌の世界に引き込まれる。気分が乗ってきて自然と身体でリズムを取りたくなる。あ、でも実際にはしないよ。隣の席の人に変に思われちゃうし。


 10時9分。音楽を堪能していると名古屋に着いた。新大阪まではあと1時間弱。このまま音楽を聴いてもいいけど、せっかくだしもうちょっと本を読もうっと。iPodを片づけて読書を再開。こうやって交互に時間つぶしをすると気分転換になるのでお勧めだ。


 11時。ようやく新大阪に到着。わぁ、関西だ! 知らない土地に行くとそれだけでテンションが上がる。でもあたしの目的地はもうちょっと先で、ここからくろしおという特急に乗る。この特急、パンダ列車っていう種類があるんだって! シートがパンダ模様らしくて、パンダ愛好家のあたしとしてはぜひとも乗りたかったけど、時間が合わなかったから断念した。次回はリベンジするぞ!


 くろしおに乗って和歌山まで1時間の旅。この辺りになると目的地に近づいているのがわかってそわそわしてくる。時刻は11時17分。そろそろお腹も空いてくる時間だ。ガイドブックを眺めつつ、何を食べようかなと考えていると時間があっと間に過ぎる。


 12時15分。長旅を経てようやく和歌山駅に到着。「和歌山へようこそ」と書かれたパンダの看板とこんにちは。さっそく観光に突入したいところだけど、まずは腹ごしらえ。和歌山のご当地グルメはたくさんあるけど最初のチョイスはラーメンだ。荷物を預け、美味しいとリサーチしていた駅近くにあるラーメン屋さんに向かう。お昼を過ぎてたからか店内は空いてた。メニューを見て散々迷った結果、チャーシュー麺をいただくことにする。トッピングとして味玉も注文。旅行だもん。ちょっとくらい贅沢してもいいよね?


 10分ほど待ったところでラーメンが運ばれてくる。お箸を手に、麺を一口……ん! 美味しい! 食感とかコシとか風味とか、普段家で食べてるのとは全然違う。スープも出汁が効いてて最高。交互に食べてたらあっという間に完食。お腹がふくれて心も満足。


 13時02分。お店を出てさっそく観光に繰り出す。旅行っていうと1つでも多く観光地を回らなきゃって思いがちだけど、あたしはそれはあまり好きじゃない。予定を詰め込むと時間に追われるし、行けない場所があると損した気分になる。だからあたしは旅行に行くときはこれ、っていう場所を1つか2つだけ決めて行くことにしている。せっかく来たからいろいろ行きたいって気持ちもわかるけど、それよりはゆとりを大事にしたいな。


 今日は和歌山の市内観光。目的地は和歌山城と和歌山マリーナシティだ。和歌山城の方が近いのでまずはバスでそっちに向かう。10分ぐらいで到着。バスを降りたら目の前にお城が見えた。うわぁ大きい。歴史はあんまり詳しくないけど、こんな立派な建物を作れるなんて昔の人はすごいなぁって思う。


 テンションが上がったまま中に入り、城内を散策しながら写真撮影。あたしは旅行の時はマイカメラを持ち歩くようにしている。その方がスマホの電池を気にしなくていいし、何より旅行気分になれてテンションが上がる。使うのはお気に入りのミラーレスカメラ。シャッター音が軽快で撮るだけで楽しくなっちゃう。


 一通りお城を観て回ると時刻は14時40分。そろそろ和歌山マリーナシティに行かなくっちゃ。バス停に戻り、バスに揺られること30分。目的地に到着した。ここにはポルトヨーロッパっていう遊園地と黒潮市場っていう市場がある。入場無料だから気軽に入れるのが嬉しい。


 まず向かうのはポルトヨーロッパ。あたしのお目当てはアトラクションじゃなくて建物の方だ。ポルトヨーロッパっていう名前だけあってヨーロッパ風の街並みが見られるらしい。ネットで写真見て絶対映える! ってことで期待しながらエリアに突入。古城っぽい建物とか石造りの階段とか、確かにヨーロッパ風で可愛い……んだけど意外とコンパクトで、30分くらいで出口に到着。あれ、もう終わり? ちょっと拍子抜け。でもまぁいいや。これも思い出ってことでご愛敬。


 15時48分。思ったより早く観光が終わったので一服できる場所を探す。近くをうろうろしてたら「くろさわ牧場のソフトクリーム」という看板を発見。牧場のソフトクリームなんて聞くだけで美味しそう! さっそく1つテイクアウトしていただく。ベンチに座って、そっと一口……うわぁ美味しい! 濃厚なバニラの風味が口の中でふわっと広がって溶けていく。ゆっくり味わいたいのに美味しいからどんどん食べちゃう。旅先スイーツと言えばソフトクリーム。見かけるとついつい買いたくなるよね。


 16時5分。ソフトクリームを堪能したところで今度は黒潮市場に行く。市場っていうだけあって新鮮なお魚がたくさん売ってるらしい。本当はここで海鮮グルメを食べたかったけど、時間が合わなかったので断念した。代わりに向かうのはお土産屋さん。それらしきお店があったので入ると……おお、すごい! ラーメンとか梅干しとか、和歌山のご当地グルメがこれでもかってくらい並んでる。みかんや梅のお菓子も満載。あれもこれも欲しくなって、ついつい買い物かごがいっぱいになっちゃう。でもお土産を買うのって楽しい。あの子は何が好きかな、これなら喜んでくれるかな、相手の喜ぶことを考えてると、自分まで幸せになれるからいいよね。


 16時48分。重くなった荷物を持ってバスに乗り、いざホテルへ。友達との旅行だったら旅館に泊まることもあるけど、一人旅の時は大抵ビジネスホテルに泊まる。でもそれにもこだわりがあって、できるだけチェーン店じゃないホテルを選ぶようにしてる。その方が旅行感あるしね。後は駅近で、朝ご飯が美味しかったらなおよし。値段はちょっとくらい高くてもオーケー。旅行先の時間は特別。ちょっとでも快適に過ごしたいしね。


 17時32分。ホテルに到着。チェックインしてお部屋へ。ビジネスホテルだから広いお部屋じゃないけど、ポッドとかアメニティとか必要なものは揃ってる。部屋の写真を撮ったところでベッドにダイブ。ふっかふっかのベッドが気持ちよくて子どもみたいにトランポリンしたくなる。ホテルのベッドってやっぱり最高。


 ベッドに寝転びながら今日撮った写真を見て、ちょっとうとうとしてるとあっという間に18時になる。そろそろお腹も空いてきたし、晩ご飯を食べに行こうかな。夕食付きのプランじゃないから、レストランを探すべくホテルを出て街に繰り出す。昼間は先にお店をリサーチしたけど、夜は時間があるのであえて適当にぶらぶらしてみる。こうやって知らない街を探索するのも楽しい。紀陽銀行、きのくに信用金庫。そんな名前を見るだけであぁ旅行に来たんだなって気分になる。


 18時33分。駅の周りをぶらぶらしてたら海鮮のお店を見つけたのでそこに入る。メニューを見ると色とりどりの海鮮の写真が並んでる。えび、まぐろ、ほたて……あああ美味しそう! 散々迷った末に海鮮丼を注文した。見てるだけでお腹が空いてきて、料理が出てくるのが待ち遠しい。


 15分くらいして海鮮丼が到着。しっかり写真を撮ったところでいただきます。さて、お味は……あぁやっぱり美味しい! ぷるっぷるの海の幸がご飯といい感じに絡まってお箸がいくらでも進む。旅行の楽しみは何といっても食。食べてる時が一番幸せ。


 19時22分。海鮮丼を堪能したところでホテルに戻る。後はお風呂入って寝るだけ? いやいやまだまだお楽しみは続く。あたしがするのはローカル番組を観ることだ。その土地でしか観られない番組を観るのも特別感があって面白い。


 適当にチャンネルを変えてると「わかやまキラリ☆ええもん見つけ旅」という番組を見つけた。地元のテレビ局がやってる番組みたいで、穴場のスポットや人気のグルメを紹介してるらしい。最初は何の気なしに観てたんだけど、意外と面白くて途中から夢中になってた。へえ、こんなとこあるんだ! 行ってみたい! そんなことを考えてるとあっという間に時間が過ぎる。有名な観光地じゃなくても魅力はたくさん。その土地のことを知れば旅行がもっと楽しくなる。


 20時。番組が終わったところでお風呂の準備をする。このホテルに大浴場はなくて、入るのは部屋のユニットバスだ。ユニットバスだとシャワーで済ませちゃう友達も多いんだけど、あたしは断然バスタブ派だ。家より広いバスタブで脚を伸ばせるのは気持ちいいし、何よりあったまって疲れが取れる。入浴のお供はもちろん入浴剤。今日は新作のラベンダーの香りを持ってきた。いい香りに包まれたバスタイムは最高。心も体もぽかぽかする。


 20時50分。お風呂から上がってスキンケアのお時間。あたし、旅行に行く時はちょっとお高めのスキンケア用品を持っていくんだ。高い化粧水とか乳液って値段の割に容量が小さいやつが多いんだけど、旅行ならかさばらなくてちょうどいい。たまの贅沢だって思ったら値段だって気にならないからお勧め。


 21時03分。お肌にたっぷり潤いを与え、髪を乾かしたところで持ってきたスピーカーをiPodとつなぐ。流すのはK-POPじゃなくてバラード。お風呂から上がった後にこうやって部屋に音楽を流すのがあたしのマイブームだ。荷物にはなるけど、好きな音楽に包まれてると何もないよりずっといい気分になれる。音楽は旅行の必携品。


 21時32分。いい感じにリラックスできたところでBGMを止めて日記を書く。あたし、普段から日記をつけてるんだけど、旅行の時も絶対持ってくる。そこに今日あったことを細かく書き込んでいくんだ。何時に家を出て、どこに行って、何を食べてとか、全部。そうやって細かく記録することで思い出をそのまま残しておける。面倒だとは思わない。その分読み返した時の楽しみが増えるしね。


 22時10分。日記を書いていると意外と時間がかかった。そろそろ寝よう。旅行って言うとつい遅くまで起きてたくなるけど、明日は明日で予定がある。明日を精一杯楽しめるよう、体力を回復しておかないとね。


 電気を消してベッドに入る。明日は7時起きなので朝はゆっくりだ。慣れない場所で寝れるか心配だったけど、疲れてたのか、それともリラックスしたせいか、ベッドに入るとすぐに寝ちゃった。あたしの旅行は明日も続く。それまで一旦おやすみなさい。

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