第2話

 学校の先生は、なぜそんなに活字が好きなのだろうか?


 先生というのは、必ずと言っていいほど「新聞を読みなさい」「本を読みなさい」「ネットの情報はほとんど間違っています」と言っている。


 全員とは言わないが、活字至上主義者が少なくないのは確かだ。


 だから私は毎朝、新聞の朝刊を頭から最後まで読み、学校に遅刻して行っている。文句はあるまい。いや。先生にしてみれば文句しかないだろう。


 もちろん本も、勉強時間を削ってまで読み漁っている。成績は低迷中だ。


 このように活字至上主義者を皮肉るようなことばかり繰り返している私だが、実は個人の考えとしては先生以上の活字至上主義者だ。


 インターネットなんて、人を馬鹿にするために作られたんじゃないかとすら思っている。


 だが、こうも活字を推奨されると、なんか活字に対してケチをつけたくなってくる自分がいるのも確かだ。


 例えば、新聞社の誤報で人生を奪われた人とか、危険な現場で取材を続けたために無関係の公務員を巻き込んで死んだ記者たちとか、そういう話にも耳を傾けたくなる。


 そんな活字関係者の不祥事を調べる内に、私はこう思うようになってきた。


 ネットで情報を発信している人も、新聞やテレビで情報を発信している人も、本質的には同じだと。


 つまり、ネットで誤報を流すのと同じようにマスメディアも誤報を流すし、ネットユーザーが危険な現場で映像を撮るように、テレビも危険な現場でカメラを回す。


 いい絵が撮りたい。多くの人に知ってもらいたい。自分たちの思想を発信したい。両者の思考に大きな違いはないだろう。


 プロの野次馬か、ただの野次馬か。


 両者の本質は全く同じだ。


 ネット批判というのは、ほとんどの場合、それを行う人たちにも、そのまま突き刺さっていると思う。


 そんな教師によるネット批判を聞きながしつつ、私は今日も、教員の地獄のような苦労など知りもしないで、少しずつためた課題の山から顔を背けている。


 ちゃんと3年で卒業できるといいのだが。





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