学校の地蔵

曇空 鈍縒

第1話

 私は図書室が好きだ。


 暖房も効いていて暖かいから冬は居心地が良いし、ほとんど無人なので気兼ねなく友人と話すことができる。


 図書館で、私は友人とはストーブの前で会話をしたり、本棚の間を歩いたりする。


 私は読書家だが、友人はそこまで本を読まない。


 だが、他人と本を楽しむ方法は、内容を語り合うだけではない。


 経済学の本を見ては

「こんな本読んでいる人が、知識付けた気になって失敗するんだろうな」

 とか、受験の本を見ては

「こんな本読んでいる人が、勉強した気になって受験に失敗するんだろうな」

 とか、題名から想像できる読者層に、無意味な評価をつけて回る。


 それだけでも、割と楽しめる。


 見ず知らずの読者を批判する最低の人間と言われれば、それまでだが。


 きっと、こんな歪んだ性格だから友人が少ないのだろう。


 だが性格を治すのは至難の業だ。簡単にできる方法があるならぜひ教えて欲しい。


 私はスマホも持っておらず、性格もそこまで社交的ではない、いわゆる陰キャなので、友人はそこまで多くないが、話せる人がいるのはありがたい。


 おかげで、トイレで飯を食う孤独高校生の鏡のような生活はせずに済んでいる。


 友人とは一緒に昼飯を食って、図書館でくだらないおしゃべりに興じるぐらいしかしておらず、休日に映画を見たりはしないが、それでも十分に楽しい。


 クラスメートを見渡してみると、目の前に友達がいるというのに、スマホの画面を見ながらボソボソと会話している人たちがちらほらといる。


 彼らはSNS上で会話をしているのだろうか。それともゲームをしたり動画を見ながら会話をしているのだろうか?


 せっかく高校に来て周囲に人がいるのに、生の人間と面と向かって会話をする回数が少ないのは少し勿体無いような気がする。そう考えているのは、きっと私だけだろう。


 そう言う私も、今のところ友人は一人しかいない。


 100人の薄っぺらい友達などいらないが、3、4人ぐらい、富士山の上で一緒におにぎりを食べるような友人が欲しいものだ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る